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韓国ドラマ「病院船」から(連載97)
「病院船」第9話➡三角関係のはじまり⑦
★★★
デッキに上がってきたヒョンはウンジェがジェゴルと一緒にいるのを見て立ち止まる。
「次は先生の番だ」
ジェゴルはウンジェの手を取り、自分の頭に持っていく。頭を撫でさせる。
「”お疲れキム先生。おかげで患者を救えたわ”とやるのをね」
缶ビールを二本持ってたちつくしているヒョンのそばに誰かが立った。黙ってビールを一本抜き取る。
ヨンウンだった。
「先を越された?」
「…」
「意外とお似合いね、あの2人」
ヒョンはヨンウンを睨みつける。
そのまま戻っていった。
★★★
自分の手でジェゴルの髪を撫で撫でさせられたウンジェは、目が合うとジェゴルから目をそらした。彼に余計な感情を持たれるのが嫌だった。
「実際、救ったろ。見ただろ?」
「そうね、確かに。この目で見たことを否定はしないけど、まだ認めたわけではない」
ジェゴルは顔をしかめる。
「ただ、考えてみるわ。非科学的なものをウソと決めていいものかどうかを…」
ジェゴルは笑みを浮かべた。
「そうか、それでやる気が出てきた。俺がいずれ、科学的にも立証してみせるさ」
ウンジェは期待度をこめて笑う。
そんなウンジェを見てジェゴルは真顔になった。
「かわいい」
ウンジェの顔から笑いが消える。
ジェゴルは畳みかける。
「笑うとより美人だ」
ウンジェは冷めた表情を残し、そそくさ船室に戻っていった。
病院船は港に帰着した。
港では救急車が待機していた。そこにパク・スボンがストレッシャーごと運び込まれた。
「カン先生が直々に?」
出迎えたのはカン・ドンジュンだった。
「院長の特命でね。さあ、気をつけて」
ジェゴルが訊ねた。
「父さんが?」
「ああ。患者とどういう関係だ?」
ジェゴルは嬉しさを覗かせ、救急車のドアに向かう。
カン・ドンジュンがジェゴルの背中に向けて言う。
「院長が気遣うなんてよほどだろ。どういう関係だ?」
ジェゴルはドアを開けて言った。
「父が何て答えるか俺も知りたい」
爺やを見てジェゴルは続けた。
「よろしく頼みます」
「お前の態度次第だ」
カン・ドンジュンはジェゴルの肩を叩いた。
ジェゴルは爺やに声をかけた。
「仕事を終えたら病院に行くよ」
「じゃあ、、ソン先生ご苦労様」
パク・ドンジュンは後ろから乗り込んだ。ウンジェは下りてドアを閉めた。
救急車を見送る2人の表情は晴れやかだった。
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病院船に戻り始めた時、ジェゴルの携帯が鳴った。
「何だって? ああ…」
携帯を切ってジェゴルはウンジェを見る。
「大変だ」
「何なの?」
「パク・スボンさんに何か問題が?」
「いや、そうじゃなくて…ああ~」
なぜか、ジェゴルはため息をつく。
ジェゴルは急いでウンジェの部屋に駆け付けた。
「どうしたの? ご飯がほしいの?」
ジェゴルたちを見て、ハン・ヒスクは暢気な問いかけをしてくる。
ジェゴルは呆れた。ウンジェに説明した。
「母は大げさなところがあるんだ。ともかく片付けさせる」
ジェゴルは母親のところに駆け寄った。
「やめてくれ。何してるんだよ。プライバシーの侵害だ」
「落ち着きなさい。そう神経質だと病気になるわよ。医者には睡眠が必要なの」
ジェゴルは天を仰ぐ。
「母さん!」
ハン・ヒスクはウンジェを見て訊ねる。
「迷惑?」
ジェゴルはウンジェの顔色を窺い、大きな声になった。
「当然だろ。親切の押し売りは迷惑だ」
「いいえ」とウンジェ。「ありがとうございます」
ジェゴルは目をパチクリさせる。
「でしょ?」ハン・ヒスクは息子を見て言う。「よかった」
「…」
「ソン先生のために、ぜんぶ私が手作りしたの。どいて」
ハン・ヒスクはウンジェのそばに行き腕を取った。
「横になってみて」
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ウンジェは言われた通りベッドに歩み寄る。座ってベッドの感触を確かめる。そこには母親の優しさと温もりがこもっている。
ハン・ヒスクはウンジェの横に腰をおろした。
「お母さんを思い出したのね」
「…」
「私もその表情を知ってる」
「…」
「私も鏡で―毎日見てるから…抱きしめてもいい?」
ウンジェは顔を上げた。
「私も―子を亡くした母だから…抱きしめたいの」
ウンジェの顔に追慕の悲しみが広がる。
ハン・ヒスクはウンジェをそっと抱きしめた。
ウンジェはハン・ヒスクの腕の中で母親の思い出に浸った。
2人の間にジェゴルの入り込む余地はなかった。