雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載164)

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  韓国ドラマ「病院船」から(連載164)



「病院船」第15話➡脅威にさらされた手術⑨




★★★


 病院船のスタッフは長時間の拘束から解放され、それぞれが帰路についた。
 事務長は下船する者たちに労りの声をかけた。
「ゴウンさん、大丈夫?」
 いつも元気なゴウンも今は返事する気力もないようだった。事務長はため息をついた。
 みんなを見送ると事務長は船長のいる操舵室にやってきた。
「ここで何をしてる?」
 船長は事務長を振り返る。
「故障がないか確かめてるんだ」
「今日はいろいろあった。明日にしたら?」
「そうはいかない。回航しないと」
「大変な目に遭ったんだし、もう帰ろうよ」
「だからこそ残るんだ」
「船長」
「船長と呼ぶな。申し訳ない気分になる」
「どうして?」
「船長なのに、イスに縛られて何もできずにいたんだ。船員たちを守れなかった自分が」
「そんなことない。みんなを救っただろ。船長がAISを切ったから海洋警察が来たんだ。だからもう帰ろう」
 事務長は船長の腕をつかんだ。
「分かった、分かった。分かったからみんなを連れて先に帰ってくれ。俺もすぐ帰るから」
「…」
「やらなきゃいけないことがあるんだ」




 眠れないで水を飲もうとキッチンに出て来たスギョンの携帯が鳴った。


「こんな時間に誰かしら」
「クァク先生のお母さまですか?」
「そうですが、どなた?」
「私は病院船船長のパン・ソンウと言います」
 笑みがこぼれる。
「ああ、いつぞやはどうも―ご用件は?」
「実は病院船で事件がおきまして、クァク先生が負傷して病院に搬送されました」
「えっ!」
 スギョンの手からグラスが滑り落ちた。


★★★


 夜中、ヨンウンが車を車を走らせている時、ラジオは病院船のニュースを流した。


―、昨夜、病院船の巨済505号が、麻薬密輸犯に襲撃されました。この事件で内科医が銃弾を受け、重体に陥っています。


 ヨンウンは車を急がせた。


 
 夜が白みだした頃、ヒョンを乗せた救急ヘリは巨済病院に到着した。
 出迎えたカン・ドンジュンはストレッチャーを引きながら訊ねた。
「容体は? ソン先生は大丈夫か?」
「どちらへ?」とウンジェ。「手術室へ運びますか?」
「いや、集中治療室へ」
 集中治療室に着く。
「右脇腹に銃創」とウンジェ。「下行結腸に腎臓、下大静脈も裂けてるかもしれない」
「キム先生は手術中、オ先生は週末でいない」
「そんな」とウンジェはドンジュンを見た。「それじゃ…」
「今、クァク先生を手術できる外科医がいない」とドンジュン。
 ウンジェはヒョンを見た。
「君がやるか?」とドンジュン。「執刀できるなら手術室へ運ぶ」
 ヒョンを見ながらはウンジェは考える。命がけの手術をこなしてここへやってきた自分が、今またヒョンと手術で向き合う余力が残っているのかどうか…? 
「いくら何でも難しいよな…ソン先生も事件の被害者なんだから」
「…」
「やむを得ない。とにかく容体を安定させて、転院先を探そう」
 ドンジュンは背を返し、転院先の手配に向かおうとする。
「いいえ」とウンジェ。
 振り返ったドンジュンに答えた。
「やります」
「ソン先生…」
「手術…私がやります」
「やれるか?」
 やらなきゃ! ウンジェは気力を漲らせた。クァク・ソン先生は戦場で運ばれて来る患者から、一度も逃げようとしなかった。
 ウンジェの決意を見てドンジュンは指示を出す。
「麻酔科に連絡を。手術室に移すぞ」


 シャワーを浴びてヒョンの手術を準備しながら、ウンジェはヒョンとの色々の出来事を思い出した。彼は常に自分の理解者だった。
 ”君を支えたい”と言ってくれた彼を拒んだ自分についても思いをめぐらした。愛する気持ちがプライドを呼び起こし”彼に負担を与えたくない”感情に変化しているのは自分でも分かっていた。それをどうしたらいいのか…。


―ありがとう。辛い時に僕を思い出してくれて。


 ウンジェの目には涙が滲んできた。
 自分はこんなにも彼を愛していたのか…。


―これだけは覚えておいて。壁ではなく扉かもしれない。だからいつでも開けて出てきて。僕は扉の前で待っているから。
 
 ウンジェは目をつぶった。目を開け、きりっと姿勢を正した。


 助けなきゃ、何としても彼を助けなきゃ―。すべてはそれからだ。


 手術室に入ったウンジェはヒョンから目を背けなかった。
 患者であるヒョンを通してすべての壁が取り払われていくのを感じた。
 数秒後、ウンジェは自分のポジションに立った。
 冷静な外科医の表情に戻りメスを握った



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