「アンナの大好きなケーキだ♪」
ビリーはケーキをぶらさげチョルスの家に向かっている。
自分の腹は痛まない。チョルスは喜び、アンナは自分のところに戻ってくる。一石二鳥…いや、自分の分を入れると”三鳥”だ。
濡れ手に粟の有望作戦で彼はいつにも増して上機嫌だった。
「チャン・チョルスは金で買収し、アンナは心で捕らえる。すべてが僕のためにある作戦だ。やるぞ」
ビリーはリハーサルを始める。
(これは感謝の気持ちです…)
足を止めて口にした言葉を吟味する。首をかしげる。
「違うな」
迫力がイマイチだ。
「もっと男らしくいった方がいいな」
ビリーは拳を握った。
(一緒に食べよう…)
首を振る。
「いやいや、これもダメだ。僕の気持ちです、でいこう…」
アンナは苛立って車を走らせている。
チョルスに首ったけの自分にアンナは嫌気が差していた。呪文のように言い聞かせた。
「チョルスを心から追い払わなくちゃあ・・・あいつのことを考えないようにしなくちゃあ!」
彼女は車にまで当り散らす。
「もう…このボロ車、もっとスピード出ないの!」
浮き浮き気分で歩いているビリーに向かってアンナの車が急スピードでカーブを曲がってきた。
道の真ん中を歩いていたビリーはびっくりして横に飛んだ。そのはずみで道路下の畑に転落した。
ハンドルを切ってビリーをよけたアンナの車は、ドラム缶と積み上げたコンパネにぶつかって止まった。
アンナはハンドルに伏せた顔を上げた。前方をよく見ていなくて、一瞬のことだったからどんな事態が発生したか自分でもわからない。
ビリーは痛そうな顔で畑から起き上がった。道路の方に歩み寄った。
車からおりたアンナは混乱した表情でビリーを見た。
アンナと目が合ったビリーはカエルのように跳ねて道路に上がった。アンナのそばに走り寄った。
アンナは訊ねた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です」
ビリーはキリッとした顔で答えた。
「ケガはないですか?」
「いいえ、車を見てなかった僕がいけなかったんです」
すると納得したようにアンナは頷いた。
「そのようですね」
ビリーは拍子抜けしたが、それがアンナだと思って話を合わせた。
「ええ、すべて僕のせいです」
「これからは気をつけて」
ほっとしつつ車に戻ろうとして、アンナははっとした。気付かなかった。車はドラム缶に突っ込んでるではないか。
「へこんじゃってる。チャン・チョルスに怒られるわ。どうしよう!」
ビリーがそばに走り寄ってきた。ぶつかった車のフロントを見た。
「あれまあ、僕のせいで車が…ご心配なく、僕が弁償します」
助かったとばかりにアンナは応じた。
「そう…それならお願いするわ」
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