雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載167)

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    韓国ドラマ「病院船」から(連載167)




「病院船」第16話➡退院祝い②




★★★


 ヒョンは点滴用具を手に廊下に出た。外の景色が見える場所へやってきた。体力は戻ってきて気分は爽快だった。まもなく病院船にも戻っていけるだろう。
 気がかりなのはウンジェが自分の前に姿を見せないことだけだった。
 ヒョンは携帯を取り出して電話を入れた。
「先生こんにちは。クァク・ヒョンです」
「あら、もう電話ができるほどに? 重症だったのでは?」
「いいえ、大丈夫です。よくなりました」
「よかったですね」
「その後、父の様子はどうですか?」
「ご心配なく、とある方がお世話してくださってます」
「”とある方”?」




 ウンジェはクァク・ソンを車いすに乗せて近くの浜辺に出た。
 現在のクァク・ソンは、心に一点の曇りもなかった。遠くまで視野の働く晴天だった。
「ほら、あそこに灯台が見える」




 病院の医師はウンジェとクァク・ソンの関係について説明した。


― とても仲がよくて、まるで父と娘のようです。…




 ヒョンは電話を切った。その二人が”誰と誰”であるかがぼんやり見えて来る。ほっぺと目に柔らかな笑みが浮いた。


★★★


 麻薬一味に荒らされ修復途上の病院船にウンジェは戻ってきた。
 みんなは病院船に顔を出し、帰った後だ。
 手術室に入った。手術台の感触を確かめる。
 一味のサブから逃れようと走った廊下を振り返る。自分を庇って被弾したヒョンの姿が昨日の出来事のように戻って来る。


―大丈夫? ケガしてない?
―…。
―君はケガしてない?


 目覚めた後もヒョンは一番に自分の身体を気遣ってくれた。手術前よりも、彼の思いやりを痛いほどに感じた瞬間だった。


 ふと見るとヒョンの使っていた聴診器が目の前にある。ウンジェはそれを手にし、両手で握りしめた。
 
  
 スギョンはヒョンの病室に通い、付きっきりの日々だった。看護師が世話をする時も付きっきりだった。
 スギョンの携帯が鳴った。
「誰?」とヒョン。
「えっ、ああ…、ジヨンよ」
「大丈夫だと伝えて」
「わかったわ」
 スギョンは席を外した。
 厳しい表情で電話に出た。
「あの…ヨンウンです」
「用件は?」
「今から、お会いできますか?」
 スギョンは苦い顔になった。
「この前は逃げたのに、今更どうしたの?」 
「…すみません」
「…どこに行けばいい?」




 スギョンは約束した場所に出向いた。
 ヨンウンは席を立ってスギョンを出迎えた。
 通りに面した病院そばの店だった。ライトを照らした車が走っている。
 ヨンウンは丁寧な口調で挨拶する。
「お元気でしたか?」
「呆れた人ね」とスギョン。「息子が重傷なのに元気なわけない」
「いえ、そういう意味では…」
「分かってる。座って」
 スギョンは腰をおろした。
「早く座って」
 ヨンウンが座ると切り出す。
「話してみなさい」
「えっ?」
「話があるんでしょ」
「ヒョンさんは…だいぶ、よくなりましたか?」
 スギョンは頷く。
「回復してるわ」
「よかったです」
 間をおいてヨンウンは切り出した」
「近いうちにニューヨークに行きます。もう、韓国へは戻らないつもりです」
「…」
「だからヒョンさんに…」
「”去る理由を話すな”と?」
「そうしていただけますか?」
 スギョンは黙って飲み物を口にする。カップをテーブルに戻す。
「分かった。そうするわ」
「…」
「あなたを追い詰めても仕方ない。数日の間にやつれたわね。ちゃんと食べてるの」
「…」
「恋なんかに必死にならないで」
「…」
「すごく、辛いでしょ。…一度、壊れた愛は元通りにならないものよ」
「…」
「私の夫も息子も、優しくて他人の過ちに寛容だけど、我慢の限界を超えると相手に冷たくなる」
「…」
「なぜ、待てなかったの? あの子は仕事や父親の世話で余裕がないのに…」
 ヨンウンの顔から次第に自責の表情が浮かび上がる。
 スギョンは続けた。
「追い詰めなければ。今でもあの子の心を…つなぎ留められていた」
 ヨンウンはスギョンの前で、ヒョンと別れる悲しみの嗚咽をもらした。




 ヒョンの母親に会った後、ヨンウンは病院船へやってきた。
 船室でウンジェと顔を合わせる。
「本当にここにいましたね」
「…」
「ジェゴル先生から教えていただいた。ソン先生はここだろうと」
「何の用ですか?」
「話は聞きました。ヒョンさんの手術を行ったと」
 ウンジェは頷く。
「羨ましいわ。ソン先生はヒョンさんのために出来ることが多い」
「こんな手助けは二度としたくないわ」
 ヨンウンは手にしてきた物を差し出した。
「感謝の贈り物です」
 ウンジェは黙って贈り物を受け取る。絵画なのは想像できた。
 ヨンウンは顔を上げた。すがすがしい表情になった。
「先生は私に…呆れるかもしれませんが、彼の無事より嬉しかったことがあります」
「…」
「ソン先生が最後まで秘密を守ってくれたこと…おかげで、私がプライドを守れたこと…それを喜ぶなんて…呆れるでしょ?」
「いいえ」ウンジェはきっぱり答えた。「その気持ちは理解できます」
「ありがとう」
「…」
「ヒョンさんをお願いします」
 ヨンウンは手を差し出した。
 ウンジェは快くヨンウンの握手を受けた。
 握手を終えるとヨンウンは爽やかな笑みを残して背を返した。

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