ファンタスティック・カップル 第11話(16)
自宅に電話を入れて通じなかったユギョンはチョルスの事務所を訪ねた。チョルスの車は止まっている。
車を前にしてユギョンは立ち止まる。
アメリカに行かない話をチョルスに切り出すかどうかでもう一度気持ちを整理する。
部屋にハタキをかけながらアンナもチョルスのことを考えていた。
ユギョンがチョルスのもとを訪ねているのは想像がつく。アンナは苛立っていた。しかし、口をついて出るのは気持ちと裏腹な言葉だ。
「チャン・チョルスが花束女とどうなろうが私とは関係ないわ。関係なんかない。関係ない、関係ない、関係なんかない…!」
ハタキをかけるリズムで同じ言葉を繰り返す。
最後はドアを蹴った。
「では、あさって工事にうかがいます」
チョルスは仕事を発注してくれた仲間の業者を丁重に応接した。
商談の後は釣りの話になった。
「今日は必ず釣りに出てこいよ。でなきゃ除名だ」
「ええ。必ず行きますよ」
「それじゃ」
業者は帰って行った。
ハタキをかけているうち、電話機が目に止まったアンナは、ハタキをそのへんに投げ捨てた。受話器を取り上げ事務所の電話番号を押した。
チョルスはすぐに出た。
「チャン・チョルス。早く帰ってきて」
「ダメだ。約束がある」
アンナは顔をしかめた。
「もう連絡とったんだ…花束女もすばやいわね」
受話器を耳に当てなおす。
「洗濯機直してよ。洗濯ができない」
「洗濯なんていいよ。放っておけ」
「洗濯機より約束の方が大事なの?」
「当たり前だろ。洗濯機の方が重要だというのか?」
「いいわ。あんたの洗濯機だから壊してやるわ」
アンナは叩きつけるように受話器を置いた。
「洗濯機にまで文句か…壊したら許さないからな」
チョルスはぶつぶつ言いながら事務所の外に出た。
すると目の前にユギョンが立っている。
「ユギョン、どうしたんだ?」
「…あなたに話があるの」
アンナは自分の寝床で横になり、ユギョンの言葉を思い出している。
「私はアメリカには行かないわ。彼に会って言いたかったの」
アンナは身を起こした。
「あれをチャン・チョルスが聞いたら、花束女のところに戻ってしまうわ」
アンナは舌打ちした。立ち上がった。こうしてはいられない。
玄関から急いで飛び出していった。
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