雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第3話①

2019-01-11 20:59:21

韓国ドラマ「青い海の伝説」第3話①
Korean Drama "Legend of the Blue Sea" Episode 3 ①

第2話⑯…

　ボスは配下に「撃て」と促す。
　女はそれを察知した。ジュンジェの手を掴んで海に飛び込んだ。
　飛び込んだ後、ジュンジェの身体は海流に流された。息が出来ない。泳げない。女の姿は見えない。海水にもまれながらジュンジェの意識は弱まっていった。わずかに残った意識と目で女が泳いでくるのをとらえた。女が間近に来た時、ジュンジェは女が人魚だったのに気付いた。
　ほとんど気を失う直前、ジュンジェは女の顔が近づくのを感じた。
次の瞬間、女の唇が口に触れた。女のキスを受けながらジュンジェの意識は消えた。　

★★★

　夜になった。タムリョンはたくさんの風灯を飛ばした後、舟で沖に出た。
　人魚に会うためだった。会いたい時は風灯を飛ばしてください、と言って人魚は海に戻っていった。
　人魚は約束どおりやってきた。
　タムリョンは海面に顔を出した人魚に訊ねた。
「そなたの名は？」
「セファと申します」
「…幼い頃に妹を亡くしたが、妹の名もセファだった。明るく」
「”明るく輝く子”という意味でしょう？」
　セファは言った。
「…」
「その名をくださった方がいました。お話しましょうか」
「…」

　―　20年前の夏…親戚の家に遊びにきた1人の少年がいました。

　ある日、近くに住む少年らが浜辺で彼に訊ねました。
「あそこまで泳げるか？」
「もちろんだ」
「ほんとか？　なら、泳いでみろ」
「わかったよ」
　そう言って彼は波打ち際へ向かって駆け出し、海の中に入って行きました。
「内陸からやってきたんだ。泳げるもんか」
　少年らは意地の悪い笑みを浮かべて海に入っていく彼を眺めていました。
　啖呵を切った以上、やるしかないと泳ぎ出しましたが、すぐにおぼれてしまったのです。
　水の中で苦しんでいる彼を見つけ、助けてあげたのはまだ子供の頃の私でした。
　助けてあげたその少年が私に訊ねました。
「そなたの名は？」
　名前のない私が答えられないでいると彼は切り出しました。
「ないなら私が名付けてやる」
「…」
「セファにしよう。”明るく輝く子”という意味だ」
　その日は時間を忘れて遊びました。
　楽しい夏が終わり内陸の家に戻ったあとも、少年は事あるごとに海辺の親戚宅へ戻ろうとして親を困らせました。
「お願いです。私をあの家に行かせてください」
　ダダをこねる息子に父親はとうとう息子の願いを叶えてやりました。
「わかった。その代わり、ここに戻ったら勉学に励むと約束しなさい。できるか？」
　ダダをこねてころげまわっていた息子はさっと起き上がり、正座になりました。父親の目を見てきっぱり答えたのです。
「はい、お父様。戻ってきたら勉学にまい進いたします」

　親戚の家に戻ってきた少年は、人魚に陸地の食べ物を与え、楽しい遊びを教え、美しいものを見せてあげました。
　2人はそんな風に歳月を重ねていったのです。

　しかしある日、少年は人魚に切り出しました。
「半月後、私は妻を娶ることになった」
　黙っていると少年はセファを見た。
「祝言を挙げるんだ」
「祝言って？」
「ああ、それは…女と一緒に暮らすことになるのだ」
「…」
「その女とだけ愛を分かち合って」
「…そしたら、ここへはもう来ないの？」
　少年は答えに窮した。

「分からない…」
　少年の言葉にセファは黙り込んだ。
　時間は流れ、日差しは海面に沿ってきだす。
　少年はもどかしい思いで訊ねた。
「寝る時は海に戻るしかないのか？　陸では生きられないのか？」
「大人になれば生きられるって聞いたことがある」
「…」
「陸に上がれば足が生えるとも…」
　セファは目を落とした。
「でも、今は無理なの」　
　少年はセファに言った。
「私はお前と離れたくない。むりやり妻を娶らされるけど、お前以外の女と暮らすのは嫌なんだ」
「でもどうすればいい？…私たちは住む世界が違うのよ」
　少年が何も言えずにいると、セファはさっと海に飛び込んだ。海へ帰って行った。
　少年のそばには彼女の流した涙でできた真珠がひとつ残っていた。