韓国ドラマ「30だけど17です」(連載81)
「30だけど17です」第9話(戸惑いと心地よさ)⑦
☆主なキャスト&登場人物
○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★
チン・ヒョンはカン代表を見た。
「どうしよう。時間が足りませんよ」
運営サイドのスタッフはヒスを見た。
「カン代表の責任では? 中止の損害はどれだけだと思います?」
ヒスは髪に手をやった。悲痛な顔で前方を見た。
「ここを使用しないようにします」
運営スタッフが切り出した。
ウジンは首をかしげた。
「ほぼ中央の位置だからそれは無理でしょう」
ヒスは頭を抱えた。
「困ったわね」
ウジンやチン・ヒョン、ソリもうな垂れた。
「どうしたらいいの…」
何かないかと思案で目をつぶったソリの耳にバイオリンの音色が滑り込んでくる。
練習? それとも公演のリハーサルかしら…、自分もあの事故がなければ交響楽の一員として―。
はっと思い当たるものがある。ソリは目を開けた。
「待ってください。あれでいけるかも…」
ソリは外へ飛び出していった。ソリが飛び込んだのは交響楽の人たちの集まったホールだった。
ホールの前方に進み出てソリは呼びかけた。
「松ヤニを貸していただけませんか?」
数分後、ソリは松ヤニを手に抱えて戻ってきた。
★★★
滑る床にそれらを投げ出し、一つをつかんで一心に塗り始めた。
「皆さんも一緒に塗ってください。早く!」
「こんな時に何やろうと言うんです?」
「いいから塗ろう」
ウジンらはソリを信じて松ヤニを握った。力を入れて床に押し付けた。押し付けながら塗りだした。ぶつぶつ言ってた人も一緒になって塗った。
みんなで何度も何度もこするように塗った。
ソリのアイデアは見事に功を奏した。
ヒスらはほっとして会場を後にした。
「ソリさんのおかげで急場をしのげたわ」
ヒスはウジンに笑顔を向けた。
ウジンは足を止めた。時計を見て言った。
「演奏会に行くんじゃないの?」
ヒスはびっくりした。
「いけない。開演時間が迫ってる」
ウジンはソリを見た。ソリは松ヤニで手を汚していた。よく見ると人差し指は血も滲んでいる。
「急ごう」
ヒスはみんなを急かす。その時、ソリの汚れた手に気付いた。
「ソリさん、松ヤニが付いてるね。早く洗わないと」
ソリは答えた。
「時間ないし、向こうに着いてから洗います」
ウジンは黙って先に立って歩き出す。ヒスやソリも後に続いた。
公演会場の前は係員だけが立っていた。ヒスたちに向けて言った。
「間もなく開演です。お急ぎください」
「はい」
「申し訳ないですが、ひとり増えた分は離れた席になります」
「では私が」
ソリが案内の封書に手を伸ばす。
「こっちにください」
ウジンが横から手を伸ばした。
「僕がその席に座ります」
係員が手にした封書を握った。
会場内はリン・キムの奏でるバイオリンの音色だけが響き渡った。
ソリはバイオリンの素晴らしい音色にバイオリンの勉強に夢中だった頃の自分を思い出した。
― 本当に私にくれるの?
― そうよ。大事に使ってね。
― このバイオリンで私がママの夢を叶えてあげる。
― そうね。それで夢を叶えてくれたらママも本望よ。
ソリの目から涙が溢れだした。
― 世界的な演奏家になって―きれいなドレス着て独奏会を開くからね。
その夢を自分は叶えられなかった。あそこに立つ夢を自分は実現させられなかった。
涙は後から後から湧き出て頬を伝い、顎から下に流れ落ちた。
ウジンは斜め後ろの席から涙にむせぶソリの姿を見た。この時にソリの言ってた言葉を思い起こした。
― 私もベルリンに行く予定でした。
カン代表が言ってた言葉も…。
― 留学するはずだった逸材よ。
ウジンはあらためて涙にむせぶソリを見た。
ソリたちの前に公演を終えたリン・キムが姿を見せた。
「素敵でしたわ」
リン・キムにヒスは言った。
「仕事に気を取られ、花束も持たずにすみません」
「とんでもない」リン・キムは笑顔で答えた。「来てくださっただけで十分です。ありがとう」
ソリたちにも笑顔を向ける。
「もしや」
ソリにリン・キムは気づいた。
「彼女が例の…」
「そうです」ヒスは頷いた。「監督が求めていた人です」
「わあ〜」
リン・キムは感激の声を発した。
「ずっと会いたいと思ってたの」
ソリは頭を下げた。
「聴かせていただきました。すばらしい演奏でした」
ヒスが言った。
「彼女もバイオリン経験者なんですよ」
ソリは照れくさそうにする。
「どうりで―話の通じる相手だと思ったわ」
リン・キムは右手を差し出した。
「これからもよろしくね」
ソリは差し出した両手を慌てて引っ込める。恐縮して言う。
「手が汚いので握手は次の機会に。手が命の演奏家に失礼ですから」
「今回の音楽祭を一緒にやれて心強いわ」
ソリは笑顔を返す。
「そうだ。まだ名前を聞いてないわね。お名前は?」
ソリは顔を上げた。高校生の頃のように胸を張って答える。
「私はウ・ソリです」
これを聞いてリン・キムの表情は変わった。
このひと言でリン・キムは目の前に立つ彼女が”あのウ・ソリ”なのを直感した。
ずっと昔、恩師が皆に紹介した”あのウ・ソリ”だと―。
― 選抜大会で私が選んだ子だ。第2バイオリニストとして参加するから―協力してほしい。
― ウ・ソリです。よろしくお願いします。
控室に戻ったリン・キムは鏡の中に昔のウ・ソリを思い浮かべていた。人差し指の爪を親指に立てるクセもぶり返しながら。
無邪気な挨拶もあの時と同じだった―と。
「いったい何故、あのウ・ソリが私の前に…?」
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