韓国ドラマ「イケメン(美男)ですね」第5話(4)
Korean drama "You're Beautiful" Episode 5 (4)
フニの運転でミニョは寮への帰路についた。
長い間、自分が探していた母はとっくの昔に亡くなっていた。
涙は遠い時の中に引っ張り込まれ、乾いてしまった。
ミニョは漠然とした物思いに沈んだ。
今、彼女の心に去来しているのは母を失った悲しみではなかった。死を見ることも触れることもならなかった時間や記憶の喪失感だった。
フニはためらいつつ話しかけた。
「それでも・・・伯母さんが見つかってよかったじゃないですか」
「はい」
ミニョは笑みを返した。
「マ室長のおかげです。ありがとう」
「私は何もしてません。君がミナムとして頑張ってくれたから、ここまでやってこれたんです」
フニは話を変えた。
「今日のステージもほんとによかった。初めてとは思えないくらいによかったです。これからもずっと」
ミニョは口をはさんだ。
「もう・・・辞めなければ」
「えっ?」
「テギョンさんとの約束ですから」
「ああ、それ・・・彼と約束したんですか? そうですか? ああ・・・」
とはいえ、寮を去りがたい思いも彼女の心には萌していた。
暗い思いを引きずりミニョは寮に帰り着いた。
彼女は気持ちを整理しようとドアをあけテラスに出てきた。
するといきなりクラッカーが弾けた。ジェルミのはしゃいだ声がした。
「それでは、ミナム初舞台成功の祝賀パーティーを始めます」
後ろのシヌも拍手する。
「祝賀パーティー?」
突然の事態にミニョは目を丸くする。
ジェルミは説明を始めた。
「お祝いに大勢の人が来てくれたんだけど、まずは国民的歌手キム・ゴンモさんです」
ジェルミは彼の石膏像の前に立った。テギョンもそこにいて、ミニョを心配そうに見ている。
「多忙につき、先にお帰りになりました。次はチョン・ソンホさんです」
等身パネルの後ろに立ち、声真似で言った。
「ミナム、今日も最高だった」
ミニョは吹き出した。
「ありがとうございました。最後にノ・ホンチョルさん」
ジェルミはシヌを相手に金髪と髭のコメディアン、ノ・ホンチョルのパフォーマンスを始める。
「兄貴、兄貴、このまま突っ走るぞ――っ!」
ミニョはジェルミの慰めに感謝を表した。
「ジェルミ、ありがとう」
横で見ているテギョンは、「ジェルミ、なかなかやるな」の表情。
ジェルミは言った。
「ずっと待っていたんだぞ。早く座れよ」
シヌもミニョのそばに歩み寄った。
「何も食べてないだろ。座りな」
「シヌ兄貴、ありがとう」
ミニョはテーブルに座ったままのテギョンを見た。
テギョンは黙ったまま複雑そうな表情を返す。
ジェルミやシヌの仲間扱いの様子から、もはや、出て行けとは言えないし、自分もそこに便乗したい気分がないと言えば嘘になる。
ミニョはテギョンの正面に座った。
「テギョン兄貴も止めはしなかったんだ」
「テギョンさん、ありがとうございます」
テギョンは渋い表情で言った。
「お前のために待ちくたびれたよ」
「お互いつらい時には一人にできないから」とジェルミ。
「当然さ。みんな気持ちは一緒だ」
「心配りをいただいてありがたいです。気持ちが動揺し、皆さんにすっかり迷惑をかけてしまいました。すみませんでした」
「コ・ミナム」
テギョンはミニョを見た。
「今日はよくやった。いいステージだった」
「ありがとうございます」
自分が伝えたかったことを先に言われ、バーべキュのクシカツを扱っていたシヌは複雑な気分だ。
場を盛り上げるためジェルミは一人でハイになっている。
「俺の”裸足のギボン”見ただろ?」
バラエティーの話にテギョンはしかめっつらで首を振る。
テギョンを相手にせず、ジェルミはミニョに向かって話を続ける。同じ男でもこいつは俺の話を真剣に聞いてくれる奴と分かってきたようだ。
「その中で俺は母親と食事しているギボンの真似をした。それはこうよ。”これも入れる、これとこれも入れて”」
ジェルミの必死の熱演に、シヌはミニョに苦笑いを向けた。
誰も感心しないので、ジェルミは落胆した。
「面白くない? バラエティー番組では大うけだったのになあ・・・」
「やめろ」シヌが言った。「もう見飽きたよ」
「見飽きた? ああーあ、それはひどいよ。辛かった新人の頃にやったことだよ。このネタでテレビに出まくって、俺は兄貴たちを食べさせたんだ」
テギョンとシヌはシラーっと、ミニョはかしこまってジェルミの話を聞いている。
「”糟糠の妻”よりありがたい芸をもう忘れたというの?」
「そんな苦労話があったとは知らなかったな」
テギョンの言葉にジェルミは呆れた。
「ああ、あまりにひどい。ひどすぎるよ。バラエティーなんてできないと出ていったのはどこの誰だ?」
「そのくらいにしろ」シヌが言った。「テギョンも最初は頑張ってたじゃないか」
それを聞いてミニョは驚いた。プライド高いテギョンがそんなことしたとは信じられない。
「では、兄貴もジェルミみたいにテレビに出て・・・そんな芸を披露したんですか?」
言下に否定もできず、テギョンはそっぽを向く。
「コ・ミナム、見たいか?」
ジェルミが訊ねた。
ミニョが喜んで身を乗り出しかけると、テギョンは言った。
「もう残ってるはずもないさ」
「落ち込んだ時に見ようと俺が取ってあるよ」
ジェルミは首を振って嬉しそうに立ち上がった。舎弟分のミニョを促し、手を取った。
「コ・ミナム、行くぞ。早く早く」
渋い顔で二人を見送ったテギョンは、咳払いをひとつしてから言った。
「ふざけた奴だ。残ってるはずがあるもんか」
「いや、あるよ」シヌが言った。「俺もたまに見るんだ」
この話を聞いてテギョンはうろたえた。
あわてて二人の後を追った。
(続く)
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