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韓国ドラマ「病院船」から(連載163)
「病院船」第15話➡脅威にさらされた手術⑧
★★★
サブは詰め寄ったヒョンに銃を向けた。立ち止まったところを足蹴にした。ヒョンは後ろに吹っ飛んだ。
サブは倒れこんだヒョンの前に立った。
「こいつ、生意気なヤツだ。調子に乗るなよ」
銃を握ったまま足蹴を続けようとするサブにウンジェは悲鳴を上げた。サブは蹴るのをやめて振り向く。
「やめてください。薬は私が用意するから。彼に手を出さないで」
ウンジェは自分のバッグのところに走り寄った。急いで薬や医療具を詰め込みだした。
「誰かいるか!」
サブは叫ぶ。
「いたらこいつを縛れ」
その時、無線が鳴った。
「どうした?」
「兄貴、大変です」
配下のことばだけでなく、外の異変は無線機を通じても伝わってきた。
外では海洋警察の巡視艇が煌々と明かりを照らして病院船に接近してくる。
まばゆいサーチライトを浴び、配下たちは両手を上げて無抵抗の意を伝えるしかなかった。。
★★★
筋書きが狂ってサブリーダーは動揺する。
「動くなよ」
ウンジェらに銃を向けたまま、サブは手術室のドアを閉める。2人を人質にとって脱出を図るしかない。
しかし外の連中は捕まった様子だ。自分ひとりここで立てこもってどうする…?
サブは苛立ちでドアを蹴る。逃げ道はないか別のドア向こうを窺う。
隙あり、と見てヒョンはサブの尻を蹴る。ドア向こうに追いやりドアを閉める。ロックする。ウンジェのそばに走り寄る。
サブは立ち上がった。ドアを叩いた。
「この野郎!」
銃が火を噴く。ヒョンらは別の部屋に飛び込む。
サブは割れたドアの間からロックを外す。ヒョンらをガラス窓で確認し、入口に手をかけようとしたら、消火剤を吹き付けながらヒョンが飛び出してくる。
消化ジェットを浴びせられてサブは後方にのけぞった。そのまま倒れこんだ。サブが倒れて怯んでいる間にヒョンはウンジェの手を取った。逃げ出した。
夢中で起き上がったサブは2人に向けて銃を放った。銃が撃たれる寸前、ヒョンはウンジェを自分の身体の前に入れた。
銃が鳴った瞬間、時間は止まった。ヒョンはウンジェを、ウンジェはヒョンを見た。そのまま時間は止まった。
しばしの静寂の後、時間の流れは戻ってくる。
その時、ヒョンは身体で生温かなものが脈動するのを覚えた。
サブの前には機動隊が踏み込んできた。抵抗する暇もなく捕縛された。
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ヒョンは撃たれた部位を見下ろした。右の脇腹あたりだ。放心状態で立っていたが、そのままウンジェの身体にもたれこんだ。
ウンジェはヒョンを抱き留めた。
ヘリコプターはヒョンを乗せて飛んだ。
ウンジェが出血部を押さえて付き添い、ヒョンに声をかけ続けた。
「先生…聞こえる? 起きて…目を開けるのよ」
ヒョンはかすかに目を開く。
ウンジェは頷く。
「そうよ。それでいい…」
ヒョンの手を握る。
「この手を放さないで。意識を保つの…どこにも行かないで…そばにいて―いいわね?」
ヒョンも頷く。
しかし、意識は微弱だった。その目はまた閉じてしまう。
ウンジェはヒョンの身体を揺さぶる。
「だめ、目を開けて。しっかりして! 気をしっかり持って。行っちゃだめよ。戻ってきて」
病院に到着するまで、ウンジェはずっとヒョンのそばで声をかけ続けた。
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病院船のスタッフは長時間の拘束から解放され、それぞれが帰路についた。
事務長は下船する者たちに労りの声をかけた。
「ゴウンさん、大丈夫?」
いつも元気なゴウンも今は返事する気力もないようだった。事務長はため息をついた。
みんなを見送ると事務長は船長のいる操舵室にやってきた。
「ここで何をしてる?」
船長は事務長を振り返る。
「故障がないか確かめてるんだ」
「今日はいろいろあった。明日にしたら?」
「そうはいかない。回航しないと」
「大変な目に遭ったんだし、もう帰ろうよ」
「だからこそ残るんだ」
「船長」
「船長と呼ぶな。申し訳ない気分になる」
「どうして?」
「船長なのに、イスに縛られて何もできずにいたんだ。船員たちを守れなかった自分が」
「そんなことない。みんなを救っただろ。船長がAISを切ったから海洋警察が来たんだ。だからもう帰ろう」
事務長は船長の腕をつかんだ。
「分かった、分かった。分かったからみんなを連れて先に帰ってくれ。俺もすぐ帰るから」
「…」
「やらなきゃいけないことがあるんだ」
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眠れないで水を飲もうとキッチンに出て来たスギョンの携帯が鳴った。
「こんな時間に誰かしら…」
「病院船」第15話➡脅威にさらされた手術⑧
★★★
サブは詰め寄ったヒョンに銃を向けた。立ち止まったところを足蹴にした。ヒョンは後ろに吹っ飛んだ。
サブは倒れこんだヒョンの前に立った。
「こいつ、生意気なヤツだ。調子に乗るなよ」
銃を握ったまま足蹴を続けようとするサブにウンジェは悲鳴を上げた。サブは蹴るのをやめて振り向く。
「やめてください。薬は私が用意するから。彼に手を出さないで」
ウンジェは自分のバッグのところに走り寄った。急いで薬や医療具を詰め込みだした。
「誰かいるか!」
サブは叫ぶ。
「いたらこいつを縛れ」
その時、無線が鳴った。
「どうした?」
「兄貴、大変です」
配下のことばだけでなく、外の異変は無線機を通じても伝わってきた。
外では海洋警察の巡視艇が煌々と明かりを照らして病院船に接近してくる。
まばゆいサーチライトを浴び、配下たちは両手を上げて無抵抗の意を伝えるしかなかった。。
★★★
筋書きが狂ってサブリーダーは動揺する。
「動くなよ」
ウンジェらに銃を向けたまま、サブは手術室のドアを閉める。2人を人質にとって脱出を図るしかない。
しかし外の連中は捕まった様子だ。自分ひとりここで立てこもってどうする…?
サブは苛立ちでドアを蹴る。逃げ道はないか別のドア向こうを窺う。
隙あり、と見てヒョンはサブの尻を蹴る。ドア向こうに追いやりドアを閉める。ロックする。ウンジェのそばに走り寄る。
サブは立ち上がった。ドアを叩いた。
「この野郎!」
銃が火を噴く。ヒョンらは別の部屋に飛び込む。
サブは割れたドアの間からロックを外す。ヒョンらをガラス窓で確認し、入口に手をかけようとしたら、消火剤を吹き付けながらヒョンが飛び出してくる。
消化ジェットを浴びせられてサブは後方にのけぞった。そのまま倒れこんだ。サブが倒れて怯んでいる間にヒョンはウンジェの手を取った。逃げ出した。
夢中で起き上がったサブは2人に向けて銃を放った。銃が撃たれる寸前、ヒョンはウンジェを自分の身体の前に入れた。
銃が鳴った瞬間、時間は止まった。ヒョンはウンジェを、ウンジェはヒョンを見た。そのまま時間は止まった。
しばしの静寂の後、時間の流れは戻ってくる。
その時、ヒョンは身体で生温かなものが脈動するのを覚えた。
サブの前には機動隊が踏み込んできた。抵抗する暇もなく捕縛された。
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ヒョンは撃たれた部位を見下ろした。右の脇腹あたりだ。放心状態で立っていたが、そのままウンジェの身体にもたれこんだ。
ウンジェはヒョンを抱き留めた。
ヘリコプターはヒョンを乗せて飛んだ。
ウンジェが出血部を押さえて付き添い、ヒョンに声をかけ続けた。
「先生…聞こえる? 起きて…目を開けるのよ」
ヒョンはかすかに目を開く。
ウンジェは頷く。
「そうよ。それでいい…」
ヒョンの手を握る。
「この手を放さないで。意識を保つの…どこにも行かないで…そばにいて―いいわね?」
ヒョンも頷く。
しかし、意識は微弱だった。その目はまた閉じてしまう。
ウンジェはヒョンの身体を揺さぶる。
「だめ、目を開けて。しっかりして! 気をしっかり持って。行っちゃだめよ。戻ってきて」
病院に到着するまで、ウンジェはずっとヒョンのそばで声をかけ続けた。
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病院船のスタッフは長時間の拘束から解放され、それぞれが帰路についた。
事務長は下船する者たちに労りの声をかけた。
「ゴウンさん、大丈夫?」
いつも元気なゴウンも今は返事する気力もないようだった。事務長はため息をついた。
みんなを見送ると事務長は船長のいる操舵室にやってきた。
「ここで何をしてる?」
船長は事務長を振り返る。
「故障がないか確かめてるんだ」
「今日はいろいろあった。明日にしたら?」
「そうはいかない。回航しないと」
「大変な目に遭ったんだし、もう帰ろうよ」
「だからこそ残るんだ」
「船長」
「船長と呼ぶな。申し訳ない気分になる」
「どうして?」
「船長なのに、イスに縛られて何もできずにいたんだ。船員たちを守れなかった自分が」
「そんなことない。みんなを救っただろ。船長がAISを切ったから海洋警察が来たんだ。だからもう帰ろう」
事務長は船長の腕をつかんだ。
「分かった、分かった。分かったからみんなを連れて先に帰ってくれ。俺もすぐ帰るから」
「…」
「やらなきゃいけないことがあるんだ」
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眠れないで水を飲もうとキッチンに出て来たスギョンの携帯が鳴った。
「こんな時間に誰かしら…」
スギョンは電話に出た。
「クァク先生のお母さまですか?」
「そうですが、どなた?」
「私は病院船船長のパン・ソンウと言います」
笑みがこぼれる。
「ああ、いつぞやはどうも―ご用件は?」
「実は病院船で事件がおきまして、クァク先生が負傷して病院に搬送されました」
「えっ!」
スギョンの手からグラスが滑り落ちた。
「クァク先生のお母さまですか?」
「そうですが、どなた?」
「私は病院船船長のパン・ソンウと言います」
笑みがこぼれる。
「ああ、いつぞやはどうも―ご用件は?」
「実は病院船で事件がおきまして、クァク先生が負傷して病院に搬送されました」
「えっ!」
スギョンの手からグラスが滑り落ちた。