日々新化、ランニングする整形外科医

#ランニング #整形外科
マラソン3時間切りを目指す整形外科医の日常から想うことを中心に発信していきます。

なぜ痛むのか?

2023-06-09 17:32:53 | 整形外科

今日は大雨☔️です。走りません😭

 

先日手術適応についてのお話で痛みのことについて少し触れました。皆さんが困る事は当然痛みです。『この痛みだけなんとかしてくれ』と言われる事もあります。それだけ痛みって皆さん避けたい感覚なのだと思います。

 

もちろん痛みを減らす事は大切です。ペインクリニック医の立場から考えると痛みを減らす事を考え、それを第一にすると思います。整形外科医の立場からするとなぜ痛むのか、痛みの原因を考え、それを除く事を考えるのではないかと思います。だから、『この痛みだけなんとかしてくれ』と言われても内心『痛みの出ている原因はすぐには取り除けないし、それが難しいのですよ』って思ってしまう自分がいます。痛い方からしたら切羽詰まっているのでもちろんそう言いたくなるのは分かるつもりですが。

 

整形外科医だから痛みの原因を考えると言いましたが、どう身体が崩れているかを考えていると言う方が正解なのかもしれません。どのように身体が崩れている事が痛みの原因になっているかという見方です。痛みについて改めて勉強してみようと本を読んでみました。

 

痛みの考えかた 麻酔科出身の先生なので整形外科医とは見方が違います。自分の苦手な所を分かりやすく解説されていたのでより痛みに対する理解が深まりました。なぜ痛むかの前になぜ痛みを感じるのか?という疑問。どう崩れているかを先に考えてしまう自分からはない考え方でした。

 

生命の目的とは・・・。寿命を全うし、個体と種族の維持を図ること。だから身体が傷つかないように痛みという感覚がある。痛みの目的は傷を浅くしたり、安静を促進して創傷治癒を早める。と書かれていて、当たり前かもしれませんが改めてなるほどと思いました。痛みが快感となって痛い事をやり続けたらその個体・種族は長生きできませんから、種族の進化のためにも痛みという感覚が必要なのですね。

 

外から切りつけられたり、叩かれたり、刺されたりどうしようもない外力を受けた場合は仕方ないので、それを避けるために痛みを感じるべきですが、ギックリ腰に代表されるように大した事してないのに痛くなる事があるのはなぜなのか?ここに関しては整形外科の出番になります。

 

種族維持の為に生きているのに個体レベルで痛い事を自ら起こしてしまうのか?

動きは元々身に付いているものでなく個体レベルで身につけていくもの。ただこれが正しい骨格運動という目線で難しいのです。だいたいなんらかのエラーを起こしてしまいます。これがすぐに痛みになってしまったら何も動けないので多少ずれて動いていても痛みにならないのですが小さなエラーも積み重なると大きくなって、もう辞めてという信号を出すのが痛みとして感じるのです。ちょっと簡単に言い過ぎかもしれませんが私のイメージはこんな感じです。

 

少しでも痛みの理解が深まってくれれば幸いです😊

 


整形外科医の手術適応とは?

2023-06-07 23:15:47 | 整形外科

画像は朝走り出す前のお天気の雰囲気なので本文とは関係ありません。

今日は手術適応についてお話ししてみます。整形外科医として病院で仕事をしていて患者さんと手術の話をしなくてはいけない時があります。

 

一般的には患者さんの方から手術してくださいと言うことは少ないです(整形外科の場合0ではないのですが・・・)。整形外科の診療で問題になる訴えはやはり痛みが一番です。当たり前ですが皆さん何とか痛みをどうにか解消したくて病院にきます。ただし手術はしたくないという人がほとんどです。当然術後の痛みもありますが、本当に今の痛みが手術で良くなるか分からない、一定期間仕事を休まなくてはいけない、家の人の面倒見る人がいなくなる、などの問題がありますので当然手術以外の方法で良くなるのであればそちらを望む方の方が多いと思います。

 

整形外科医になって手術適応というのはずっとこれでいいのかと考え続けています。その人の背景は大きく影響するので本当に手術をした方が良いと思っても積極的に勧めることは難しいです。患者さんも手術して手術前の予想通りの事しか起きなかったという人はほとんどいないのではないでしょうか?もちろんやってみてもっと早くやれば良かったという方もいますし、予想外の症状が出て大変な想いをする方もいると思います。

医師側から見てみると手術した方が良いと言えるのは一般的に教科書や文献、ガイドラインなどから当てはまるものを勧めるところから勉強していきます。もちろん私もそうしてきました。ですが、実際の現場ではそれがあてにならないことが多々あります。同じような変形をしていても年齢や活動度によって一方は手術を勧めるが、一方は手術を勧めないなどということもあります。医師によって手術適応の基準値も変わってきます。ですから何もかも医師にお任せでなく自分自身で決めようとする意志は必要になってきます。手術なんて誰だって本当はやりたくないです。一生に一度の決断でもあるわけです。だからこそ御自身の意志が必要なのです。ずれている骨折などで待てないので絶対やらないといけないこともありますが、相当にこちらが手術をした方が良いと思っていても絶対でない以上、なぜした方が良いのかをお話しした上で理解してもらって手術を勧め、決定してもらうというのが理想です。その上で実際はこちらがどの程度積極的に話すかで手術した方が良いと感じるか、そうでないかもありますので実際には医師によって手術適応が少しずつ変わります。私自身も以前と勧め方、話し方が変わってきていると思いますし、私自身の背景や整形外科手術技術一般も変わるので今後もおそらく少しずつ変わるのではないかと思っています。

 

さらに整形外科医の手術適応として難しい問題があります。手術の目的と痛みを取ることに関してですがイコールではないのです。手術の目的は大雑把に言うとズレを戻す、変形を和らげる、切れた腱や靭帯を縫い付ける、圧迫された神経を解除するなどです。これらの事は骨格的に崩れたことに対して一部を変えることで相当量の正しい方向への変化が得られる場合であるとも言えます。

しかしすごいO脚で歩いていたり、腰が曲がっていたりなど変形していても必ずしも痛がっていない方がいることは皆さんも見かけると思います。おそらくここには変化量と変化速度の問題があります。急激に変形したものは破壊の衝撃に耐えきれないので、痛みに関する物質の量が多く出るため脳に信号が多く伝わり、痛みとして感じます。また人の身体には痛み刺激が繰り返されると、それを痛みとして感じないように抑制する機構が働くため少ない変化量では痛みは感じないですが身体にはダメージが蓄積されていきます。

 

整形外科医は骨格的崩れを手術によって改善することで痛みを減らすことを考えます。しかし、手術による骨格的崩れの改善と痛みの改善がイコールではないという問題があり、さらに手術というのはメスを入れる作業になるので損傷するものがあります。ですから患者さんは手術に対しての骨格的改善がどうなるか分からない、損傷されるものによってどういう症状が出るか分からないの問題から術後の感覚的イメージができないのです。

 

ですが骨格的崩れが痛みに繋がる最初の要素であるのだとすると、それを改善すること、その手法があることで手術前から何らかの痛みの改善が感じられれば自分にとっての良い方向性が分かりやすいですし、術後目指すことも少しは分かるのではないかと思います。患者さんの感じている痛みを改善することと術後の骨格が変わることに対しての繋がりが分かる手法があれば良い訳です。もちろんそれがあってもまだまだ難しさはあるのですが。

 

そんな訳で自分の中での手術適応も徐々に変化してきています。手術適応と言っても1か0かみたいな話ではないと思っています。その方の人生を考えて、手術した方が良い人生を送れることをイメージしてより正しく手術適応を伝えられるようにしていきたいですね。

 


足裏のしびれ

2023-06-06 18:12:46 | 整形外科

本日のお昼時。

2週間位前から足裏がしびれる。ウォーキングしているとしびれ強くなる。50歳台男性の知り合いからの相談。

 

動きを見てみると、以前より極端に悪くなっている訳ではないが以前からの膝下の動きの硬さがあり。ふくらはぎの奥が硬くなってそうな印象。なんでそんなに踏みしめる歩き方になってしまうかですが、股関節はクルクル回るのですが膝関節は曲がったり伸びたりと屈曲伸展が主となる動きになります。股関節の動きが少なくなって膝関節がねじ込まれて伸びなくなったまま歩いているので膝下は無意識に力んでしまっています。その結果ふくらはぎの奥がカチカチにとは思ったのですが・・・。

 

そこで股関節の動きの硬さを取って、膝下の固まった筋肉(ヒラメ筋)をほぐして、股関節の回る動きにあったタイミングで膝の伸びることをできるための運動を指導。しびれは軽くなってしっかり足裏がつく感触が得られるようになったと・・・。

 

ところで膝関節ってこんな構造しています。大腿骨がほぼ1方向にしか丸みを帯びていないので屈曲伸展が得意の関節です。股関節がきちんと回ってから足がつければ膝が伸びるのですが股関節が回っていないまま膝をついてしまっているのでわずかに起きる膝の回旋が起きないので伸びる方向に進めなくなります。そのため重心が乗るたびに膝下が力んでしまっていました。膝がきちんと伸びるって大切ですね。

 

ここで難しいのがそれだけでしびれまで出るのかということ。そしてなぜ今回急にしびれの症状が出てきたのかということ。

これについては分かりません。これだけで足りている可能性ももちろんあるのですが。自分の中で思った疑問。痛みでなくしびれ・・・。しびれってなんで起きるのかまで分からないと本当の意味で解決ではありません。動きからいろいろなことが分かるようになってはきましたが、分からないこともたくさんあります。だからまだまだ足りないのですね。

 

この方からコーヒー頂きました。今の自分にできることをしましたがコーヒー1本の価値以上なのか未満なのか?

きちんとした結果が分からなければ未満と言って良いのかもしれません。今の自分としてはいずれにしても注意深く経過を診るしかないです。本当の診察ではないですが、できることとできないことの境が難しいと感じた出来事でした。


股関節って何?

2023-06-05 20:37:03 | 整形外科

ところで股関節と言うと皆さんどんなイメージでしょうか?脚の付け根なんてイメージでしょうか?何となく一般的に言われているイメージと整形外科医が感じる股関節のイメージって実は違うと思っています。

整形外科医が股関節という場合・・・。

そもそも関節とは骨と骨を繋ぐところにできるものであるので股関節の場合、骨盤の受け皿側(臼蓋と言います)と大腿骨の頭(大腿骨頭と言います)の繋ぎ目のことを言います。その繋ぎ目は袋でおおわれており(関節包と言います)、その袋と内部構造を含めたところが純粋な股関節と思っています。ですから股関節が痛いと言っても本当の意味で股関節が痛くなくて言っている場合もあるのです。股関節周囲筋肉や骨や近くの関節が原因の痛みや、股関節周辺の感覚を支配する神経の痛みだったりすることもあります。ですから一般の方が股関節が痛いと言っても、逆に本当に股関節なのかとも考えています。本当の股関節痛とは関節包も含めた股関節内部構造が何らか損傷を受けていて痛みが出ているものになります。もちろん純粋な股関節内部構造に問題がない、一般的に言われる股関節痛もどういった病態かと考えて治療にあたるのですが、ややこしくなるので今回は整形外科医が考える解剖学的な股関節だけについてお話しします。

 

股関節がどうなっているか?

まず大腿骨の頭、大腿骨頭に注目します。これが右左どちらの大腿骨頭かわかりますか?ぱっと見て分かる人はなかなかです。左です。なかなか面白い形していますよね。なんでこんな斜めに突き出しているの?なんであんなところが出っ張っているの?と考えないではいられません。なんて私みたいなこと言う人はあまりいないでしょうね(笑)。とにかく大腿骨頭は丸いです。球形をしています。

骨盤側の臼蓋も球を覆える受け皿の構造をしています。大腿骨頭をしっかり覆うように被さっている形をしています。臼蓋ほど骨性に覆いがしっかりしている関節はないです。

 

構造的に球形をしているものがスムースに動けるのが股関節の無駄のない動きと言えるのではないでしょうか?寝たまま脚を持ち上げるみないな動きは股関節にとってはストレスがかかっているのかもしれませんね。一般的に曲げたり伸ばしたりという動きよりは受け皿の中心でクルクル回る動きの方がストレスは少ないと言えます。

 

そんな訳で走っていると股関節の動きは右左で交互にクルクル回っていた方が良いのではないかと感じています。前回のハーフマラソンで左股関節外旋した動きを考えていましたが、結果右の内旋も同時進行で改善しないとできていないのです。その時の骨盤の動きも考えると本当にややこしいです。しかもそれが走るという速い動きの中でやらないといけないので当然走りながら全部考えて走るなんてできないのです。もしできたとしても動きのスピードについていけないので間に合っていません。だからやっぱり無理なのです。

 

股関節の動きに対するイメージの違い、そこからやろうと思っていることと意識することの違いがあるということが少しはお伝え出来ましたでしょうか?それではまた👋