人工膝関節置換術という手術を知っていますか?その中で内側だけの人工膝関節置換術を希望されて受診した方がいます。絵で描くと見出しの写真のような手術になります。比較的私はこの手術を行うことが多いのですが、この方は熱心に自分で調べてきたようです。ただし年齢が50歳代と手術するには一般的に若い方です。以前の病院の先生とも十分にお話しされて自分なりに手術しかないと思い、その思いが強くなりすぎていました。
手術希望を全面的に否定するわけではありませんが・・・、手術なんてしたくないというのが一般的に多い考え方だと思います。以前に膝の痛みのために下腿の骨の向きを変える骨切り術の手術をしています。その他の手術もしており、手術に対する毛嫌いが少ないのも手術希望の気持ちを後押ししてしまっているのかもしれません。骨切り術をして膝の痛みは減ったのですが下腿から足への痛みとしびれが徐々にひどくなっているとのことでした。
左はO脚の内側の変形が起こりやすい状態、右はほぼ正常ですが膝だけでみると分かりにくいですよね。
全体を見ればO脚、X脚の極端なものはこうなります。
見出し画像でも示した内側の人工膝関節置換術はあくまですり減った内側部分を人工物に交換する手術ですので原則はO脚の方に適応になります。しかしこの方基本的な形態はX脚でした。内側も変形はあるのですが、X脚となると考え方を変えなければなりません。絶対的に内側の手術がダメという状況でもないのですがそもそもの痛みの出ている所の問題に対して考えないといけません。
御自身でもきちんと調べてくる位ですから治療に対しては一生懸命であることは間違いありません。どうしても手術して欲しい話になるのを少し待ってもらうように何とか説得して、X脚に良い体操を指導します。下腿が痛いのはX脚だからこそなのだと思います。痛みが強くて立位では難しいので座位でできることから。そもそも力の入れ方が逆なのでそれを逆転させた入れ方を教えます。
その後歩いてみたら・・・。「びっこ引かないで歩けた」と嬉しさと驚きの顔。手術しても良いですが、まずこれが良かったのであればもう少しこちらで頑張ってみてはどうでしょうとお話ししたら頑張りますと。一生懸命頑張っている人であるのだと思います。ですがボタンの掛け違いで頑張る方向を間違ってしまったのかもしれません。
今後手術するかしないかは分かりませんが、いずれにしても良い方向に頑張れるように導けると良いです。もちろん本人の頑張りは必要ですが・・・。