ベッドに寝かされた婆さんはひたすら寝て居て、呼びかけにも反応しない。軽く手を揺すってみたがこれもだめ。本来、この日はこの病院から、緩和ケア病院に転院はずだった。前日から体調が悪化した為、主治医がキャンセルしてくれていた。『恐らく、もう最期でしょう。移動はさせない方が良いのでウチでお見送りさせてもらいます』と言って頂く。
主治医と一緒に治療してくれている若いDrがわざわざ来てくれて心臓マッサージなどはしない方針と説明してくれた。在職時、会社で救急法を学んだが、心臓マッサージは体重をかけ体がへこむほど押せと教わった。『肋骨が折れる場合がありますが、構いません。生きていれば骨折は直ります』
末期の婆さんにその治療は、虐待と感じていたのでその場で同意し、出来ればチューブの挿入も止めて欲しいと伝える。荒い息はしていたが、手を動かすことがあり、以前87歳の恩師を見取った時より元気そうだった。「今夜は持ちそうですよね?」『恐らく後2~3日ですが、大丈夫そうですね』
4人部屋から個室に移ったので、話しかけるのは周りに気を遣わないで済む。また来るからなと言い残し、ウチに戻る。が、その日の22時過ぎ、病院より電話がかかる『容態が急変し、脈が止まっています』妹と二人、大急ぎで駆け付けた。婆さんに取り付けられたモニターの線はほぼフラット。米TVドラマ、グレイズ=アナトミーで何度も見たシーンに重なる。
『22:37PM、亡くなられました』とDrの宣告があった。これもドラマと一緒なんだ。遺体を朝まで置いて貰おうとしたのだが、今は出来ないと言われる。葬儀社は総て24時間体制で引き取ってくれるそうだ。リストはあるが公立病院なので斡旋は出来ない。取り敢えず一度家に戻り葬儀社を探すという事にさせてもらった。
家で元勤務先の互助会に頼ろうかと思ったが、高校時代の友人が使った西宮北口の葬儀社を思い出した。千葉在住の〇川が『今、お袋の葬儀で西北に居る』と数年前に連絡してきたことがあった。慌てて駆け付けるとお袋さんの棺が置かれた部屋の中で一人ビールを飲んでいる。こじんまりとしていて、こんな送り方も悪くないなと当時思った。
出来ればコヤツに感想を聞きたかったのだが、今月の3日にお袋さんの元へ行ってしまった。もうチョット長生きしてくれよ。早速、その葬儀社に頼むが、最短30分で来てくれると言われる。慌てて、病院に戻ると看護師さんが婆さんの体を清め、パジャマを着替えさせてくれていた。
専用車両で婆さんの横に座り、西宮北口に向かう。僕の運転中、鈍臭いドライバーに罵詈雑言を浴びせるのが気に食わない婆さんだったが、大人しい運転手さんで良かったじゃないか。案内された部屋は、奇しくもかの友人が使っていた部屋だった。
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