子供の頃、いわゆる小学校低学年に一人で外出する機会は友達の家か小学校の校庭ぐらいだったんじゃないか。後はワンコを連れて近所の散歩か。もう一つだけ良く通った所があった。うちから少し離れた双葉市場を超え171を渡った札場筋商店街にあった千種書店。市場はニューフタバと名前を変えて阪急高架下に移転後まだ営業を続けているが、書店は阪急苦楽園口に移転した後2019年に廃業されたと聞く。
昭和の30年代、双葉市場に活気があった頃はサービスで市場内に設置されたガレージから無料送迎バスを市内運行させる程盛況だったが、移転後からウン十年も経った今となってはもう市場として機能していない・・・双葉時代から続いているのは八百屋だけじゃないだろうか?ただし店舗は若返り、愛犬麻子の通う(実際はトレーナーさんに来てもらっているが)“いぬのようちえん”もこの商店街にある。
市場の衰退に反し、書店は店を大きくして頑張っておられた。171沿い・・・と言っても昭和30年代、当時の171はかろうじて車がすれ違えるほどの細い道だった・・・の書店があった双葉筋商店街は阪神西宮からは少し離れており、いわゆる駅から離れた街の本屋、苦楽園口に近い場所を選ばれ、つい最近まで営業してこられたのはご主人の慧眼と言ってもいいだろう。
この双葉筋にあった小さな本屋、千種書店で小ジャリの筆者が楽しみだったのがちょっと立ち読みして気に入った本は買って良かった事だった。さして裕福な家でもなかったが、ツケ買いという生意気なことを許してくれたのは、立ち読みにオカンが付き合いたくなかったんだろうな(笑)。ご主人にこれ御願いしますと言って持ち帰っていた。
漫画は禁止だったが当時の小学校図書室は品ぞろえが貧弱だったので、面白いと感じた本を持ち帰れたのは本当に有難かった。こっちも子供心に遠慮?があったのか、無暗に買い求めることはしなかった。また今程には新刊本は多くなかったのも幸いしていたと思う。これだけ新刊本だらけだと何を買うかが悩みの種となる。
その内に本屋さん受難時代が到来し、埼玉に住みだした頃はアパートの近所にあった本屋も駅から離れた所から次々と無くなっていった。Amazonがこれに拍車をかけたのは間違いない。こっちも悪いんだよなぁ。故郷に帰ってきてからこの書店で買ったのって恐らく数回だったと思う。閉める前にお礼を言いたかったな。