しかしぼーずの不純な動機から出てくる夢は何かというと『バンドの前面に立ち、演奏する』これでは具体的な大きな目標にはならない。Harpとホラは出来るだけ大きく吹くのがコツである。達成が見え見えの目標(その割りには達成困難に見せるテクニックが必要であるが・・)なんざ会社だけでたくさんだ。
そこで『50歳になるまでにJirokichiで客を前にして吹く』という大ボラを吹くことにした。Jirokichiを知らない人に説明すると、東京は高円寺にあるライブハウスの老舗であり、Blues愛好家のメッカといえる店である。ギャラをもらって吹くのは無理としても、Jirokichiには飛び入りセッションDayがある。それならあと数年、必死で練習すればなんとかなると思ったのだ。
ある日の事、レッスンに出かけた途中で師匠から電話・・・ま、まさか。『あ、○○か?(ぼーずの本名)悪いけど今日行かれへん』そう、そのまさかのキャンセルであった。そのまま帰るのもなんなので飯を食ってからライブに出かけることにした。
その日Jirokichiでは服田洋一郎さんと入道さんのDuoがあり、前々からレッスン後に予定していたのだった。ライブはいつものように淡々と進んでいたが、前半の終了間際に入道さんのHarpが突然壊れてしまった。
レッスンに行くついでだったのでパックには8本のHarpが詰まっている。とっさに僕のを使いませんかと申し出たが、何とかなるので大丈夫という事だった。その曲が終わり、休憩に入った。控え室に戻る時に入道さんから『あんたも吹くんや』と聞かれたような気がするがあまり記憶に自信は無い。
すぐに後半が始まり、そうこうするうちライブは最高潮のまま終盤を迎えた。すると入道さんはHarpを吹きながら客席を廻り出し、観客の耳元で吹き出した。そして、ぼーずの横に来るとHarpをハンカチで拭きだし・・??。『はい、続きはあんた。』と手渡され・・・ち、ちょっと待って下さい。周りは渋いBluesファンばかり、ちょっとぼーずにはきつすぎまっせ。
ところが観客のノリは『吹け、吹け』・・こうなれば吹くしかない。膝はガクガク頭フラフラのままワンコーラス終了。何をどう吹いたかぜんぜん覚えていない。すると服ちゃんが『もう一ッ回行こか』、そのときになってやっと自分の音が聞こえてきた。どうにかお決まりのベンドも吹け、無事終了。
取り敢えず観客の皆さんからは同情??の暖かい拍手をもらい、大感激で席に付く。拍手も嬉しかったが、隣のカップルが『ええッ?ホントにいきなり言われたんですか?やらせじゃ無かったんだ。』と言ってくれたのが妙に嬉しかったのを覚えている。
こうして40代後半に立てた50歳節目の目標は50になる前、うやむやのうちに達成されてしまった。
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