どれくらいぶりか分からないけど涙した
感動してポロっと出ることはあっても
とめどなく出たのは久しぶりだった
それは
2019年になったばかりの正月休み中
明後日から仕事だっていう日の夜に
体調がおかしくなり始めて
翌日高熱にうなされ
新年会の欠席を余儀なくされた
その日の夕方僕は妻に連れられ病院で診察を受けた
インフルエンザだった
今日この日より
僕は隔離生活が始まることになる
病院で吸入した薬が効いて
2日後には熱も下がり
食欲も回復した
平日の昼間はとても静かで
とくにすることもなく
外出できるはずもなく
僕は溜まった録画番組を古いものから順に見た
夕方には息子が帰宅する音が聞こえる
晩御飯は下の階から運ばれてきて
食べ終わるとまた適当な時間に配膳係のように回収される
リビングにいる息子の後頭部だけを見つめていると
感染防止だとすぐに扉を閉められ
僕が触った物には全てアルコール除菌がして歩かれた
息子に移ると大変なので妻も必死になってくれたんだろう
今になって思えば当然の処置だったと思う
給食センターで働く妻は調理師の経験が長く
衛生面は徹底されていた
でも僕は日に日にストレスが溜まっていた
僕が感じるストレスはただひとつ
息子と会話も出来ず
当たり前に交わしていた朝と夜の挨拶さえも出来ない
声も聞けない
いってきますのハグも出来ない
息子のためだと耐えていたものの
あまりに徹底された管理下に嫌気がさしていた
あと2日で出勤できる日がくるその夜のことだ
毎日こまめに変えるマスクをいれるビニール袋の口が少し緩く結ばれていたことで口論になった
僕は息子に会えなくなって5日目
あまりにもイライラが募っていたのだろう
でもリビングにお茶を取りに降りたときに
まだ寝てなかった息子と遭遇した
息子は僕に
「久しぶり!
と、笑ってきた
「やっとあと2日で治るよ。
「お父さんに全然会ってなくて、夜寝る前にドア越しにおやすみって、朝起きたらドア越しにおはようって言ってたの気がついてた?
と聞かれ
「気づいてなかった。寝てたからかな。
と、濁した。
二階に上がって、自分が隔離された部屋に戻り
コタツに足を入れテレビのリモコンを取った
すると僕は自分の涙が止まらないことに気がついた
声を出して泣きたいほどだった
夜と朝にドア越しに息子が来てくれていたこと
言われてみれば
ふとドアの向こうに誰かがいる気がした日があった
いつも息子が入ってくる時間だったから
そのせいで錯覚してると思っていた
自分がどれだけ息子に会いたかったか
それが
息子も同じ気持ちでいてくれたことに涙が出た
たった1日たりとも
息子をハグしない日がないことが幸せだ
僕が久しぶりに涙を流したエピソードは
ほんとにこれだけ
ドラマで感動して泣くことはあっても
涙が止まらないのは
ほんとに久しぶりだった
たったこれだけのことだけど
当たり前の幸せを思い知った一週間でした
あゆ美は私と同じでアヴリルが好きだった
そして私と同じで家庭が穏やかではなかった
私が話しかけるとあゆ美は警戒することもなく
笑顔で
「なあに?
と答えた
「友達にならない?
という問いにも
「いいよ〜
って笑顔で答えてくれた
私はあゆ美といろんな話をした
好きなタレントの話
男子生徒の話
やはりガールズトークには恋バナや
流行りのファッションの話が大半を占めた
私はあゆ美と休日も遊ぶようになった
あゆ美はまだ将来のことは見据えてなくて
一件離れたツレたちと同じように
夢のない自分と違う人種に思えたが
あゆ美の場合は大学やらに進みたくても
お母さんにかける負担を考え
負担をかけずにできる将来の夢を探していたからだ
私は人当たりのいいあゆ美には
人と接する仕事が良いのではないかと思った
私と同じ美容師のような手先の技術を要する仕事ではなく
癒しを求める人相手のリフレクソロジー的な
そんな話もあゆ美にしてみたことがある
あゆ美は微笑みながら
「大人になっても一緒に働いて、結婚して子供が出来て、一緒にお散歩して、そんな普通の幸せの中にお互いが一緒に居られるといいね
って笑ってくれた
私はより夢の構想が膨らんだ
あゆ美と美容業界でやっていきたい
2人で会社にして
2人で喜びや満足感を分かち合いたい
こんな夢物語を一緒に描ける相手と出会えるとは思ってなかった
私はすごく嬉しかった
放課後もいつもあゆ美の髪で結い方やアレンジの仕方を練習し
夏休みなんかには脱色やカラーなんかも練習させてくれた
一緒にお風呂に入ったり
一緒に夜更かしして
一緒にオールしたり
私の高校生活はあゆ美と一緒だった
ある日の夕方
いつもつるんでた仲間たちから連絡があり私はしぶしぶ待ち合わせ場所に向かった
私が着いた時には数人がたむろし、中には無免許でバイクに乗った見慣れない顔のやつもいた
私を見るなりそいつは周りのツレに耳打ちした
最近顔を見せない腹いせか何かで陰口を叩かれているんだと思ったが
適当な愛想笑いでその場は過ごした
つまらない集会を適当にやり過ごし
私は1人 先に帰宅すると告げてその場を後にした
帰り道
いつも通る道の街灯の明かりが消えかけていた
点滅する街灯しかない暗い道は女1人で歩くには少し怖かったが
回り道もめんどくさいので私はそのまま進んだ
ブツブツ独り言を言いながら歩いた
急に後ろに気配を感じたので足早に歩いた
コツコツコツコツ
私の足音だけが暗い道に響いた
目の前に明るい街灯が見え大通りまであと少しだった
すると確かに私以外の足音が聞こえる
私の足音に合わせて歩いてくる
振り返ることも出来ず
私は小走りで大通りを目指した
すると後ろの足音はどんどん早くなり、どんどん近づいてくる
あと20mくらいで大通りまで出れるところで私は後ろから羽交い締めにされた
必死に抵抗するものの
羽交い締めにする力はとても強く
私より体の大きい男だとすぐに分かった
力ではとてもかなわなくて
口を押さえつけられ大声で助けを呼ぶことも出来なかった
必死に抵抗するなか
後ろからたまたま通る車が来た
助けてもらえると必死に抵抗したが
その車は私のすぐ横に止まり
後部のスライドドアが開いた
そして私は車に連れ込まれた
後ろから蹴られて前かがみになった私を後ろから覆いかぶさるように押さえつけられた
車はそのまますごいスピードでどこかへ向かった
運転席から聞こえる笑い声
私を後ろから押さえつける力が強くて息もしづらかった
車の床しか見えない薄暗い車内で私は怖くて声も出せなかった
携帯もスカートのポケットの中でとても取り出せるような体制ではなかった
そして私は廃工場の倉庫で下された
タオルでキツく目隠しをされ
倉庫の奥の方に連れていかれた
私は突き飛ばされ地面に転がり
必死に立ち上がろうとしたが足がすくんで力が入らなかった
後ろでカチャカチャ音がする
私はそれがベルトを緩める音だと分かった
そして私は両手両足を押さえつけられながら
全ての着衣を脱がされた
私は必死にもがいたが押さえつける力にとても敵うはずもなく
私はそいつにレイプされた
痛みと恐怖で体はこわばり
だんだん抵抗することも出来なくなった
抵抗できない私にそいつらは
「だんだん良くなって、感じてきてんじゃねえの
だの
「抵抗しねえからもっと欲しがってんじゃねえの
だの
笑い声が聞こえる中
私は数人にまわされた
やり終わるとそいつらは携帯で誰かと話し始めた
「おもしれーことしてっからお前らも来いよ
「やり放題の女、拉致ったから
まだ恐怖が続くんだと思った
私は抵抗もできないまま寝そべり
自分の股間が精液まみれになっていることも分かった
膣から精液が出てくるのも分かった
何も見えない視界の中
恐怖だけを感じた
どれくらいの時間が経ったのかもわからなかった
すると近くでパトカーのサイレンが聞こえた
パトカーのサイレンがは近くで止まり
隣の部屋がざわつき始めた
一斉に窓から逃げ出すそいつらの姿が浮かんだ
私は起き上がり
投げ捨てられた着衣を抱きしめ泣いた
後から来たそいつらのツレが騒ぎながら来たために
近所から通報があったようだ
警察が暗い部屋の中
ライトで私を見つけてくれたのは
私が8人にレイプされ終わってからだった
私は桜が好きだ
春先から咲き始めて
寒いとまた開くのをためらう
まだかまだかと満開を待ち望まれ
待望の大輪を咲かせると
人々はそれを
季節の始めと歌い
そして皆が集まるキッカケともなる
屋台が立ち並び
夜にライトアップされた桜や
散りゆく花びらにでさえ
皆が注目する
年を追うごとに頭が下がる枝垂れ桜や
少し先走るソメイヨシノや
春の訪れを皆に伝える
そんな桜が好きで
私はそんな桜の文字が入らない自分の名前がとても嫌いだった
幼い頃から髪を結ってもらうのが好きで
後ろに座って髪を結う母にとても憧れた
気がつくと私は
そんな仕事があることに気がついた
年頃になると周りはみんなオシャレに没頭した
髪を染めてみたくて
夏休みに入るとすぐさまブリーチした
脱色すると赤みが残る私の髪がとても嫌で
何度も何度もハイブリーチを繰り返しては
痛んだ髪を伸ばしながら
何度も何度もヘアカタログに目を通した
アヴリルラヴィーンみたいな
サラサラロングヘアーでパンキッシュな感じに憧れればまた
耳にピアスや
ドクロのリング
椎名林檎みたいに
艶女に見えて
でも中身はロックな女に憧れれば
ひたすらカラオケ
幸福論やら積木遊びやら
歌い尽くしては
財布を空にした
できる友達なんかはたいがいヤンキーで
授業をふけては
近くのたまり場でしゃがんでダベる
お決まりのパターンだ
特に何が気に入らないわけでもないのに
敷かれたレールが嫌だの
反発する自分に酔いしれている
そんな時だった
周りの友達とも上手く付き合えなくなった
夢を持たない周りが幼稚に見えて
少しずつ距離をおいては
近寄ってみたり
ふと たまにはと
つまらない授業を受けていると
視界に入ったものに反応してしまった
アヴリルのステッカーを貼った筆箱があった
しかも最新アルバムの初回限定盤に入ってたステッカー
私は休憩時間になると
その子が席を離れる前にすぐさま駆け寄った
これが私とあゆ美の出会いだ
僕の愛してやまない息子は
勉強が好きで
サッカーに夢中で
将来の夢はサッカー選手だ
1人で留守番すると
慣れないからか
すぐキッズ携帯から電話がくる
いつも笑っていて
怒ることは珍しい
僕の愛してやまない妻は
うたた寝ばかりで
不器用で
キャパシティも小さく
基本的にいっぱいいっぱいで
すぐに怒る
寝顔も全然可愛くない
食べてばかりで
すぐ太る
でも
ときおり優しい
僕の愛してやまない職場の仲間は
いつもくだらない話で笑い合う
時に支え合い
時になすり付け合う
でも
大切な仲間だ
僕の愛してやまないものは
いつも僕の近くにある
ふとベットに入り
静かに寝息を立てたり
大きく深呼吸していたり
布団を蹴って寝返ってみたり
この寝顔にどうしてこうも癒されるものか
ギュッと抱きしめ
あったかいな〜って思ったら
暑苦しいみたいで寝ながら嫌がられる
授乳中の寝顔も
部活に一生懸命な小学生の寝顔も
今も変わらず
同じ顔で寝息を立てる
こんなに可愛い天使は
どの家庭にとっても
天使なはずで
変えの効かない宝物
そう…つくづく思う
愛してるって
こういう気持ちだ
幸せって
こんな身近にあるもんだ
仕事のストレスで出したため息も
目を閉じると聞こえる彼の寝息で
幸せな空間へと一変する
でもね
寝返りで蹴られる力も
日に日に増すばかりだ