中学ではいつもパン注だった
クラスで机を並べてお弁当を食べる同級生たちをよそに
僕は1人で屋上へと繋がる階段の踊り場でパンをかじり
食べ終わると休憩時間内はずっと横たわって床の冷たさを肌で感じた
廊下を走る上履きの音
ふざけあう女子の甲高い声色
5分前のチャイムで起きて
ダラダラと教室に向かうのが僕の日課だった
でもそんな日々の中にも唯一の楽しみがあった
階段を最後まで降りて
廊下へと出る
するといつも1人で歩く2個上の先輩とすれ違った
出会ったばかりの頃に廊下に出た瞬間にお互いがぶつかり、謝りあったのをキッカケに挨拶をするようになった
僕にとってその人は憧れで
長い髪
小さな唇
か細い手に
長い睫毛
どこかミステリアスな顔立ち
まさに理想が服を着て歩いていた
中学生ともなればだいたいの男子はゲームやスポーツそして女子に興味シンシンだ
小さな頃から遊んでいた友達でさえも
男女を意識して
膨らみ始める女性の体に興味がない男子なんて居ない
お互い名前も知らないけど顔見知り
「あ、おはよー
「あ、おはよーございまーす
「また寝とったん?
「あぁ、まぁ…
なんてたわいのない会話だけを毎度済ませるだけでも
相手が理想そのままの女子なら
僕にとっては最上級のイベント事だ
そんな楽しみをニヤつきながら想像して階段を降りると
「!!
僕は階段を踏み外して頭を打った
「いったー!
すれ違う場所とは少し違うもう少し奥の方から聞こえる僕の声に彼女が気付いた
「だ、大丈夫?
駆け寄る彼女
「だ、大丈夫です…^_^
「気をつけなさいよ^_^
彼女は僕に手を差し出す
初めて触る女子の体のパーツ
どんな強さで握っていいのかも分からない
思考回路がパンク寸前の中
僕は彼女の手を取った…
一瞬意識が飛んだ気がした
でも
飛んだような意識の中
僕の脳裏に映像が浮かぶ
力強く腕を引いた僕
すると彼女はよろけて逆に僕の方へ傾いた
慌てて立ち上がった僕と彼女は
結果的に抱き合う形になって
頬を赤らめた
…なんだろう
今の…
上の空の僕をよそに
僕の目の前には差し出された手があった
僕は手を掴んだ
すると彼女はよろけて僕の方へ傾いた
授業が始まり静まった空間の中
誰も居ない廊下で僕と彼女は抱き合った
…結果的に
「あ、ごめん
うつむいて顔を赤らめる彼女
僕もすかさず
「あ、すいません
僕も顔が火照った
「じゃ、またね^_^
彼女が立ち去った後もしばらく思考回路停止だ
トボトボ歩く廊下
さっきまで目の前にあった か弱い体の感覚と
髪の匂いがまだ新しい
僕は始まっている授業に遅れて参加し
廊下に立たされた
立ちすくむ廊下で
さっきのことで頭がいっぱいだった
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