かさいまりは、絵も文も描く絵本作家だった。
(もう、まったく、過去形で記してしまいます!!)
それが、いつのまにか、作家だけの仕事が随分と増えて、作絵かさいまりの絵本にお目にかかれなくなって久しい。
(もう、まったく、絵は描く気がないのか!と記してしまいます!!)
ということは、さておき、
今回、上梓したこの作品は、リアリズムの手法で描かれている。
しかも、今までとは違って小学生高学年の男子が主人公だ。
元来、かさいまりは、男の子を(動物であっても)好んで描いてきており、この点については、なんら疑問はない。
夏休み中に転校したばかりの男の子が、なれない土地で、徐々に人間関係を作っていく話である。
転校してきた町は、風景描写から、もしかして小樽かなと思う。
かさいさんは、学生時代を小樽で過ごしているはずだ。
主人公の少年がぶらりと入った駄菓子屋さんに、偏屈そうな爺さまが店番をしている。
少年とは、殆ど会話がない。
会話は、殆どないが、偏屈そう爺さまに拒否されていないという雰囲気が、漂っている。
会話がなくても、互いに通じ合うものがあるのだということが、かさいまりの文章から、感じ取れる。
かさいまりは、人の心の微妙なところを描くのが巧い作家だと思う。
そして、なによりも、巧いなぁと思うの「死」の描き方である。
人として、かさいまりの死生観というものの受け止める器が、きっと豊なんだろうと思う。
ネタバレになるので、あまり内容を詳細に紹介できないが、昨今の児童文学の傾向として、これでもかと描かれる子どものイジメとか、貧困問題を扱う作品が、そのテーマだけで、評価されたり、あるいは重版を重ねたりしているが、私は、『きくち駄菓子屋』の主人公の少年のように、心に悩みを抱えていても、人のあたたかさを感じ、染み入る作品を、今を生きる子どもたちには薦めたい。
児童文学は、こうでなくっちゃ!と思わせられる作品。
こちらは、おばあちゃんの死と向かいあう絵本。
絵は、よしながこうたく。(教育画劇)
この絵本に描かれる「死」は、かさいまりだからこそ、描ける世界観である。
小さな読者に是非、読んでもらいたい一冊だが、なによりも大人(両親や祖父母かな)とともに、読んでもらいたい絵本である。
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