ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『江戸のガーデニング』 青木宏一郎 著 平凡社

 

 東京の路地を探索していると、とにかく軒下に鉢植えの植物が所狭しと並べられ、更に階段状の台に鉢植えを並べている家もある。
 この風景は、北海道というか、札幌では見られない光景だ。
 人口密度の高い東京で暮らす人々の、それでも植物を愛する心理ゆえかと思いもしたが、なんとなく気に掛かっていたら、このような興味深い本を発見!(これが本屋さんのいいところ。アマゾンではこうはいかない!!)

 なんと、軒下の鉢植えは、江戸時代からあったのだ。
 鉢植え園芸は、江戸の侍の内職だったのだという。
 なるほど! と合点がいった。
 江戸の侍は、週、三日ぐらい出勤するだけでよく、あとは、家でブラブラしていたらしい。それで、考えついたのがこの内職。(地方なら、土地を耕して農業を副業にできただろうけどね。江戸府内じゃ、ちょっとムリだったんでしょうね。)

 その侍の内職のお陰で、長屋住まいの軒下に鉢を置いて四季の折々に植物を楽しむことを、江戸の市井の人は知り、どんどん流行り、どんどんか普及し、どんどん改良されていったのだった。
 やがてそれは、内職の侍たちによって、いわゆる芸術の一領域を築き上げられたのである。

      この、とことん、追求する姿勢がすごい。

 更に、絶句もん! 一本の台木に接ぎ木して百種類の菊の花が咲いている。 
 これ、先日、TVのドキュメンタリーで見たけれど、現代の菊専門の園芸職人さんが、そっくりそのまま、造っていました。

 アサガオ、とても美しいです!! 

 江戸城内でも、しっかりと園芸植物としてツバキを育てているのだ。 

 フランス、イタリア、スペイン、イギリスなどなど、いろいろな王宮に数々有名な庭園があるし、平安、室町時代にも、世界に冠たるガーデニング術を発展させてきた日本だが、この異彩を放っている江戸時代の鉢植えという、ここに到達した園芸ガーデニングは、なんとも興味深い。
 この徹底した改良主義、そして極小化、その上、美的な完成度を極限まで追求するセンス。
 これら、すべてが、日本の技術開発に継承されていると思いませんか。

 ところで、私のふとした疑問に、ちゃんと応えてくれる研究者がいて、こういう本があるってことにが、なんとも、嬉しい。
 文化って、こうでなくてはね。

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