ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◇『グリム童話 ミリー ー天使にであった女の子のお話ー』 ヴィルヘルム・グリム原作 モーリス・センダック絵  ラルフ・マンハイム 英語訳 神宮輝男邦訳 ほるぷ出版

1816年、ヴィルヘルム・グリムが、母を亡くしたミリーという少女に宛てた手紙のあとに、綴られていた物語だという。
ヴィルヘルム・グリムのオリジナルだと思われる。
そしてこの物語はなんと150年も経ってから、発見されたのだった。

やがて世間に知れてから後、1988年に『ミリー』が出版される。
モーリス・センダックが5年がかりで描いた絵本だという。

絵本の冒頭には、ヴィルヘルム・グリムがミリーへ宛てた手紙も翻訳されている。



物語は悲しい。
戦争が母と娘の住む村まで迫り、母は娘を森へ避難させる。
三日経ったら戻ってくるように伝えて。
森で少女は聖ヨセフに出会い、三日間を聖ヨゼフの元で過ごす。
しかし、娘が三日間だと思ったのは時間は実は30年が経ち、待ち続けた母と娘は、その夜、語り明かして眠りにつく。

翌朝、村人たちに、母と娘の亡骸が発見される。
亡骸のそばには聖ヨセフのバラの花がいっぱい咲いていたという。

センダックの理解による解釈は、戦争の悪に対し、母と子の無垢な愛と善を対比させ、永遠の生としての死を語っているのだという。

ヨーロッパの物語には、天使によって誘われる幼児の死というシチュエーションが多いが、それはこのセンダックの『ミリー』への理解と解釈と同一の概念だと思う。

かわいそうとか悲しいいう感情を抱くのは、日本人の死生観、宗教観のゆえにちがいない。


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