ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆ 秋田県立金足農業高校  「全力で負けた敗者はだれより強くなれるんだと思う。」(いとうみく)

 「おれ、もう投げられない」

 試合後、二塁手の菅原天空君がインタビューで明らかにした吉田投手の言葉である。
 一人で投げ続けた金足農の吉田投手が、五回、大阪桐蔭の猛攻を受けた時に、吉田投手のもとへ駆けよった菅原選手に言った言葉だという。

 「あんな弱気な輝星は初めてだった」と菅原君が言った。
 そして彼は、この回を終えた時、主将の佐々木大夢君と二人で、監督に投手交代を願い出た。

 吉田投手の身体は、もうとっくに限界を越えていたにちがいないのだ。
 4回からは、脚が上がらなかったいう。
 当たり前だろう!
 連投800球以上を投げ続けたのである。


 テレビで観戦している素人の私でさえ、試合開始早々の投球内容と彼の表情を見て、これは吉田投手を投げさせ続けるべきではないと感じた。
 とにかく、表情が今までとは、明らかにちがった。
 それでも、彼は桐蔭主軸の打線では、気迫の投球で頑張っていた。

 しかし、このまま吉田投手を使い続けたら、彼の将来はないかも知れないと危惧した。
 しつこく言うが、素人の私でさえ、そう感じたのである。


 
 「おれ、もう投げられない」と、言葉にせざる得ない状況の吉田投手の心の裡を思うと、あまりにも辛くて、胸が苦しくて、切なくて、涙がでてしまう。


 菅原君と主将の佐々木君の進言がなければ、監督はいったい、どういう判断をしたのだろう。

 本来、それは選手からの進言によるものではなく、或いは、投手を「おれ、もう投げられない」と言うまで、追い込んでしまう前に、なにか打つ手はなかったのだろうか。

 金足農業高校の試合は、甲子園を今までそんなに見なかった人たちまでも惹きつけ、いわゆるフィバー状態になっていたし、ほんとうに、考えられないような奇跡のような試合の連続であり、吉田投手の力強さ、爽やかさ、利発さ、フェァプレーも、感動だった。
 だから、多くの人たちを夢中にさせたことは、本当に理解できるし、私もそのなかの一人である。



 しかも、吉田投手のあとマウンドに上がったリリーフピッチャー打川君が、これまた素晴らしい投手だったのだ。

 なぜ、今日は、彼を先発にしなかったのか。
 なぜ、このような力のある投手を地方大会から温存し、吉田君ひとりが投げ続けたのか。
 
 

 監督は、ここまで勝つとは想定していなかったでしょうか。
 


 私は、桐蔭に負けたことが悔しくて、このように書くのではない。
 選手の一生は、甲子園で終わるのではなく、むしろここから長い時間が始まるのだと思うのだ。
 だから、選手のことを一番に考えてほしいのである。


 松坂大輔の延長試合後、再試合まで延長戦回が18回から15回に短縮された。
 そして今年からは、タイブレークも導入された。
 投手一人の連投という高校も少なくなり継投をするようになった。
 準決勝前に1日、開けることにもなった。

 このように、少しずつ、改善はされてきている。

 しかし、桑田真澄が散々言い続けているが、大人が闘うWBCでの球数制限のルールは、いまだ高校野球にはない。


 松坂の時のように、今回の吉田君の連投、投球数から議論が起きて、球数制限のルールが来年から、導入されるといいなと思う。

 
 

 
 
 ヤフーニュースを読むと、金農の3年生9人は、偶然、中学3年の秋に同じ硬式チームで出会い、菅原君のおとうさんがコーチをしている高校に、「みんなでカナノウに行かない?」と声を掛け合ったというのだ。
 そして吉田君のお父さんと、菅原君のお父さんは金農OBで同級生だったというのだ。

 菅原君は、この時「このメンバーなら甲子園へ行ける」と、思ったそうだ。

 
 吉田君は五回で降板し、ライトに回った。試合後に泣き出した吉田君を、菅原君は「輝星が投げてくれたからここまで来られた。胸を張れ」と言ったのだという。
 

 私は、心揺さぶられ、涙を流し、本当に沢山の感動を、金農の試合から頂いた。
 本当に素晴らしかった。


 閉会式の空に、虹が。
 画像はヤフーニュースから拝借。


 月末から始まるU18の日本代表選手に吉田君が選ばれている。
 まずは、身体が、しっかりと復調することを望むばかりだ。

 児童文学作家の、いとうみくさんが、ツイッターに書いていたことば。
 「全力で負けた敗者はだれより強くなれるんだと思う。」




 <追記>
 試合終了の整列後、桐蔭の選手たちが吉田投手にハグしていて、これ、よかったね。
 私は、桐蔭や横浜などの私立高校の野球部の他県からの選手スカウトについて、あれやこれや、言うのは好きじゃない。
 みんな、それぞれがその状況で、頑張っているんだし、野球が大好きなことには、変わらないんだから。









 









 

 

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