先日、札幌、藻岩山麓のブックカフェ塁さんで、森越智子さんの講演会があった。
雨の日の夕暮れだったが、会場のブックカフェは、席が全部、埋まるほどの盛況だった。
演題は、森越さんの著書『生きる 劉連仁の物語』から平和を考えるというものだった。
劉連仁氏は、先の戦争で中国大陸から強制連行され、北海道の石狩沼田の昭和炭鉱で労役を課せられていた人である。
彼は、過酷なその炭鉱から脱走をしたのだが、終戦を知らず、北海道の山野を13年間彷徨し続けた。
北海道の冬は凍死するほどに厳しい。
強制連行は拉致である。
その数は、中国からだけで4万人余。
著者の森越は言う。
4万人という数字には、4万人それぞれの物語があるのだと。
そして、知識は、知識でくつがえされることもあるが、感情に響いたものは、決して忘れない、だから物語を語ることが大事なのだと。
まったく同感である。
個別の物語に注視せずして、なにがあろうか。
森越の講演は、とても興味深い内容だった。
この著作の取材を通して、日本政府が中国からの強制連行を認めるに至った経緯もまた、サイドストーリーとして、かなりドラマティックな内容だった。
いずれ彼女が物するだろうから、残念だがそのサイドストーリーの詳細は紹介できない。
それを楽しみに待つとしよう。
『生きる 劉連仁の物語』は、昨年の中学生の夏休みの読書感想文の課題図書になった本である。
その感想文で、なんにも賞をもらわなかった感想文を森越が紹介した。
13歳の少年の感想文だったが、ちょっと涙ぐんでしまった。
何のてらいもなく、技巧もなく、ストレートに理解し、素朴に書かれた感想文だった。
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