先日【お役立ち情報やお知りになりたい情報はございませんか??】とお伝えさせていただきましたところ早速ご質問をいただきました。
ありがとうございます!
お役立ち情報やお知りになりたい情報はございませんか?? - 建築士だからわかる〇〇教えます
ご質問第一号は【階段と梯子】について、です。
なかなか興味深い質問です。
>階段と梯子の「建築法上」の定義の違いは有るのでしょうか。
>例えば「キャシャなボロ階段」と「豪華なハシゴ」、「取り外しが可能な階段」と「固定式のハシゴ」・・・等々、何方とも言える場合が有ると思います。
>既存の吹き抜けに「昇降段(ハシゴか階段かは判断できない)」を取り付けて「階段室」の増築と判断される境目を教えて下さい。
まず建築基準法上では住宅の階段に関する決まり事は以下のようなものがあります。
・階段幅・踊り場巾:75㎝以上
・けあげ:23㎝以下
・踏 面:15㎝以上
・踊り場設置:高さ4m以内
しかし梯子に関しては住宅においての規定はありません。
ただし階段にしましても梯子にしましても避難上とても大切な経路ではあります。
【階段と梯子の「建築基準法上」の定義の違いは固定階段の規定はあり、梯子はない】と言えそうです。
加えましてとても重要なことがあります。
ご質問に【既存の吹き抜けに、取り付けて「階段室」の増築と判断される境目】
とありますね。
ここですが、
◇二階建ての住宅の一階の吹き抜けに階段ないし梯子を設けて、既存の階段以外にもうひとつ二階に行く手段を確保したいと考えておられる場合
→これはご質問者様からの質問に対して的を射ていないように思いますが、容積率が基準法ギリギリのために階段室の増築と判断されては困るということも考えられましたので敢えて明記しました。上記の場合は、階段にしましても梯子にしましても固定でつくってしまえば厳密には投影面積分(真上から太陽光があたった場合に真下にできる影の面積とお考え下さい)は増築面積となると思われます。しかし可動梯子(取り外しができる梯子)の場合は、増築面積には含まれません。
◆二階建ての住宅の二階の吹き抜け上部にロフトを設けて、ロフトに行くための階段ないし梯子を設けようと考えておられる場合
→この場合は課題点が階段の増築というよりももう少し大きな視点が必要となります。
まず二階の上部にロフトを設ける場合、ロフトの天井高さが1.4m以上にしてしまいますと【階】とみなされてしまいますので三階建てになってしまいます。建築基準法上で木造三階建ての基準に合致させなければならなくなりますことから、構造の見直し(水平剛性の確保)や防火・耐火(地域にもよりますが準耐火建築物)の検討も必要となります。
→ロフトの天井高さが1.4m以下の場合は階としては算入されませんがここにも課題点があります。
ロフトの面積等が二階の床面積のどのくらいの大きさになるか?という点です。
二階の床面積の1/7以下? 1/7以上~1/2以下? 1/2以上?
たぶんご質問に「既存の吹き抜けに」とありますことから1/7以下程度と思われます。1/7以下であれば、現状のまま容積率に算入されませんので構造耐力計算上の加算も必要ありません(私が設計する際は敢えて安全側をみて参入して計算しますが)。1/7以上1/2以下の場合は構造計算上ロフトの面積を算入して検討する必要があります。
そして二階の床面積の1/2以上のロフトは基本的につくってはいけません。たぶん「既存の吹き抜けに」とありますことから1/2以上となることはない思います。
それともう一つ。お住まいの都道府県、市町村等の特定行政庁によりましてはロフトへの昇り降りに関しまして建築基準法「施行令」で制限が定められている場合があります。
例えば「固定式のものは設置しないこと」ですとか「階段の面積をロフトの面積に算入すること」などが条例で定められている場合があります。
ですので、特定行政庁により、まず固定階段が設置できない場合も想定されます。また固定式の場合はロフト面積に算入して1/7以下であるかの確認が必要になる場合もあるということです。
【結論を申せば】ロフトの天井高さが1.4m以下であり、二階の床面積の1/7以下であれば、容積率や構造計算上の加算は必要ない。
ただし特定行政庁の条例等の規定によりそもそも固定階段が可能・不可能の規定がある地域もある。また階段にしましても梯子にしましても面積に参入する必要がある地域もある、ということです。
ご質問にあります「増築と判断される境目」という点からしますと可動式であれば、階段にしましても梯子にしましても面積に算入はされないと思いますが、昇り降りのしやすさ、安全性も含め検討が必要と思います。
と申しますのも梯子は昇り降りのしやすさなどを考えますと非常に課題の多い装置と私個人的には思っております。ロフトを物置部屋として利用するために可動梯子などを設置したお家は梯子の昇り降りが大変なため結局ロフト自体を使わなくなった、というお話もお聞きします。荷物をもったまま、梯子を昇り降りすることは危険を伴います。その点は十分お気をつけください。
もう一つ、可動式の梯子や階段という場合、これは知人の建築家が八王子のお家で実際に計画した案件で恐縮ですが、一階の吹き抜けに昔の古民家にあるような箱階段を家具として設置し、昇り降りができるようにしたお家もございます。通常の二階への階段は別途ありますがリビングの一部吹き抜けに箱階段のようないざというときは移動ができる家具としての階段を設けて、子どもたちが二階と一階をぐるっと回れる仕組みです。
特定行政庁から固定式の階段ではないかとご指導があった場合は、あくまで吹き抜けに階段状の家具が置いてあるだけ、家具なので可動式でどこにでも動かせます、と言い張ることもできようかと思います。しかしそのような場合は本来は事前に特定行政庁と協議をした上で進められることをおすすめします。また可動式の家具としての階段の場合は昇り降りの際の安全性は確保されなければならないことは言うまでもありません。昇り降りの際に箱階段が動いてしまい転落等で怪我をしてしまいましては大変なことになります。その点は十分にお気をつけください。
的を射た回答になっておりますかどうかわかりませんが、少しでもお役に立てましたら幸いです。
ぜひみなさんもお役立ち情報やお知りになりたい情報がございましたらお気軽にご質問ください。
建築士に気軽に質問できるチャンスでもあると思います(笑)
ひと・すまい・くらし一級建築士事務所