※宇宙戦隊キュウレンジャーのファンフィクションです。
個人的妄想と捏造で構成されております。
公式関係各所とは全くの無関係です。
でも、もし、万が一、公式がこんな作品作ってくれたら狂喜乱舞します的な夢作品。Vシネでよろしく勇気。
「俺が考えた最強のガンダム」略して俺ガン、ならぬ俺ツルギです。
この作品の前提。
・Episode of 鳳ツルギの派生作品です、先にそちらをお読みください(blogの作品カテゴリーに入れてあるハズです)
・キュウレンジャーの時代から350年くらい過去
・ツルギはこの時点で240歳くらい(本人にも正確な歳は不明)
・宇宙連邦成立前、即ちドン・アルマゲ発生前
・ホウオウソルジャーとして覚醒前
アイツに初めて会ったのは、俺がまだオリオン座から宇宙連合軍に派遣されたメンバーの一人として赴いた時だった。"派遣"とは体のいい言葉で、実質は徴兵と言えるほどの強制力を持つもの。連合側についているオリオン座星系は昔から戦いと戦士を重んじる国風だったからそれほど違和感もなかったのだが。宇宙は何十もの星系が存在し、その中でも無数の国家が乱立して、それらがやれ連合派だ、革命派だとそれぞれの主張に分かれて対立していた。国家同士の争いを戦争と呼ぶならば、これはたぶんそうなのだろう。まことにくだらない内容ではあるが。そしてこのくだらない争いは俺の生まれるずっと前、百年以上も続いているのだから、宇宙の歴史から戦争のない時を探す方が難しかった。
その対立の始まった原因を作った当人であり、納める当人でもある人物、それが鳳ツルギと言う男だった。百年以上前にいきなり現れて、宇宙連邦を作ろう等と言い出したのだ。最初は誰もが夢物語だとバカにし、取り合わなかったが、気の長い説得と、多少の武力により少しずつ賛同者を増やし、遂には議員制度による形ばかりの連合政府を作り上げた。この時点で連合に属する星系国家は全宇宙の約半分、残り半分はそれに反対の立場を取り、お互いに勢力を伸ばすために戦争を続けている。
オリオン座でも屈指の戦士として連合軍に加わった俺は、始めて見る鳳ツルギと言う男に驚かされるばかりだった。チキュウ出身のヒューマノイドタイプの男は、映像と違って実物は俺よりも一回り小さく感じる。背は高くてもひょろっちくてとても強そうには見えなかった。何より自分よりも遥かに歳上なのだと思えず、見た目だけなら同年代のようだった。サラサラの黒髪を鬱陶しそうにかきあげ、大きな双眸をこちらにひたりと向けてくる。この頃の俺はまだ二十代半ば、髭も生やしておらず、ツルギにとっては小生意気な若造にしか見えなかっただろう。それなのに、満面の笑みと興味津々と言った表情で俺に歩みより、馴れ馴れしく肩を叩く。
「お前がオリオン座でも最強と謳われる戦士か、名前は?」
「オライオンだ」
「名前も強そうだな、いいぞいいぞ、面白くなってきた」
確かチキュウ人の年齢を遥かに越えた二百歳以上だったはずのその男は、むしろ子どものように無邪気な笑顔で笑っていた。仮にも上官であるため、どう接していいか戸惑っていると、
「堅苦しく考えなくていいぞ、俺様の部隊は家族みたいなもんだ。気楽にやってくれ」
軍隊で気楽にやれと言われても、と、共に来た仲間たちと顔を見合わせて戸惑うばかりだった。
それから、アイツとの付き合いは何十年にもなるなんて、この時の俺はまだ想像すらしていなかった。
「不死身将軍」「常勝の剣」、彼の異名は数多くあるが、とりわけその二つが最近最も多く呼ばれるものだった。ほどなくして戦場に出たオライオンは、ツルギの戦い方5その物に驚かされることになる。その戦いぶりは苛烈であり理知的、緻密であり無謀、相反する要素を持ち合わせていた。それはひとえに鳳ツルギと言う人物が抱えた矛盾に起因しているかもしれない。冷徹な軍略家としては緻密で理知的な作戦を立てるのだが、本人が「死なない」事を最大限に活かして無茶をするからだった。
初めて共に戦った時、前線指揮官とは言え先陣切って敵に斬り込んでいく姿は常勝の剣の名に相応しい強さだったが、その背中を追いかけながらオライオンはある種の危うさも感じていた。彼は指揮官でありながら作戦参謀も自らこなす頭脳派であり、そのくせ前線のどの兵士よりも強かった。死なない身体、不老不死、そんなものは実際に目にするまでは半信半疑であったが、死を恐れない、怪我を厭わない、それだけで戦う姿勢が全く違うのを戦士であるオライオンは本能的に理解した。常人であれば無茶、無謀、と呼べるその戦い方はまるで自ら死に急いでいるようにも見え、合流してからの初戦でもあり配属はもう少し後方であったが、いつの間にか自らツルギの横に並び立ちその能力で彼を助けていた。手から発せられた巨大なエネルギーシールド、それがオライオン自身だけでなくツルギをも敵の凶刃から守った。
「話に聞いていたが、実際はそれ以上にスゴいな」
「隊長は無防備すぎます。あれではいくら不死身将軍とは言え、その後の戦闘に支障がでます」
「俺様は死なないからアレでいいんだ、それよりお前の能力についてもっと教えてくれ」
子どものように目を輝かせ、オライオンを質問責めにし、最後には「こいつは伝説級にスゴいぜ!」と大はしゃぎだった。
それ以来ツルギの側には常にオライオンの姿があり、彼を守る「鉄壁の盾」と呼ばれるようになるのにさほど時間はかからなかった。
ツルギの無茶な戦い方に呆れつつも、ある種の合理性があるのだと理解できた頃、その日の戦闘は乱戦になり、作戦も何もあったものでもなく、ただひたすらに目の前の敵を倒す事のみに奔走させられていた。相変わらずツルギは鬼神の如く敵を蹴散らし、このまま行けば力で押しきれそうな戦況であった。
ツルギの目の前に出てきたのは、一回り小さなヒューマノイドタイプの相手、通常なら彼を止めることすら敵わないであろうに、その顔の幼さにツルギの剣が一瞬止まる。その隙を突いて相手の鋭い剣がツルギの上腕に食い込むのが見えた。
「ツルギ!!」
オライオンが走りながら見たのは、相手の剣の動きと共に吹っ飛ぶツルギの左腕、同時に相手の喉に深々と突き刺さるツルギの剣。相手は絶命したが他の敵の攻撃を盾で弾き返し、駆け寄った。
「大丈夫か?!」
「見ての通りだ……」
「とりあえず止血を」
長くて白いローブを脱ぎ、ツルギの肩から腕の切り口を覆うように被せ、さらに引き裂いた袖できつく腕を縛り上げた。脂汗を滲ませながらも悲鳴ひとつあげずに、ツルギはオライオンに任せていた。
「よし、立てるか?」
「………それよりも、腕を………探してきてくれ……」
「はぁ?何言って……」
「無いよりは、マシなんだ、頼む……」
辺りを見回すと遥か前方に深緋色と鮮血の混じりあった物体が見えた。乱戦の足元を蹴り飛ばされ、転がり、砂まみれだ。完全に切り落とされたそれが元に戻るとは到底思えなかった。言い終えて、ツルギの身体から力が抜け、前のめりに倒れるのを支える。周りにいた仲間に後方の医療班の元へ連れて行くように指示して、自分はツルギの左腕を探しに乱戦に飛び込んで行った。
前線の医療テントなどただの布の仕切りでしかない。その中から、呪詛のようなうめき声と叫びとが聞こえ続けてくる。再生痛には痛み止めも効かない、受けた時と同じ痛みを治るまで受け続けるのはどれ程のものだろうか。常人での神経であれば殺してくれと懇願するかもしれない。それすらも許されない身体とは、呪いにも近いのではないだろうか。それを彼は今まで何度も繰り返してきては、戦いに恐れるどころか平然と身を晒す。
簡単な裂傷がすぐに治るのは知っていた。自分なら数日はかかるであろう怪我を、翌日には跡形もなくキレイな肌を見せられた事がある。だが今回はそんなものではない、腕が切り取られたのだ。ツルギは痛みにのたうち回り、傷が治るのを待っていた。普通の人間なら取れた腕が再びくっつくなどあり得ない。ところが数日後には元通りの腕があり、あまつさえ以前と変わりなく動かせるようになっているのだ。オライオンは本当の意味での「死なない」と言うのを初めて理解した。
医療テントから姿を表したツルギは、やつれて疲れ果ててはいたが、身体は元通りになっていた。フラフラと覚束ない足取りに、その肩を支えてやり、個人テントへと連れていく。痛みから解放され、ようやく眠れるのだと言うその顔は、数日点滴のみで身体を維持し、眠れてもいないのでくまも、顔のやつれ具合も見てて痛々しい。
「ありがとうな」
「いや………俺は……」
「腕を見つけてきてくれて助かった。失くなっていたら更に何日もかかるところだった」
「…………そうか」
「あるものを繋げるだけなのと、無いものを作り出すのでは全く違う」
「痛みは、なくならないんだな……」
「ああ、これは、不老不死の代償なのか、それとも生きている証なのか………、その両方かもな」
夢物語のような話。不老不死なんて単に偶然で、ツルギもチキュウ出身ではあっても他の星系の似たような長命な人種なのではないか、そう考えていた。この光景を見るまでは。
黙ったまま歩き続けるオライオンに、ツルギは寂しそうに言った。
「…………恐い、か?」
「…………。」
「化け物みたいだろ、別に気にしてないぞ」
オライオンはうまく言葉が見付からなかった。今ツルギに対する感情で最も近いのは同情、哀れみ、と言った真逆のもので、だがそのどちらとも違うのもわかっている。親密になるにつれて彼の不死身さに恐れて、離れて行く者も多かったのだろう。その言葉には諦めと寂しさと、色々な思いが詰まっているのだと察せられる。そして自ら突き放すように仕向けて。
だからオライオンが口にしたのは全く別の言葉だった。
「いくら死ななくても、指揮官が倒れたら誰が指示を出すんだ。無茶をするな、考えて動け」
「………そうだな、すまん」
「目立つお前を抱えて逃げるのは結構大変なんだぞ、今度からは盾の後ろに堂々と隠れてろ」
ポカンと間抜けな顔でツルギはオライオンを見た。オライオンはツルギを恐れることもなかったが、不死身さをあてにもしていなかった。実際先日の戦線の立て直しは指揮官不在で失敗したし、事後処理も全てオライオンをはじめ他の者たちに回ってきて、実務はともかく事務処理的なことは全て丸投げして残してある。目覚めたツルギに押し付けるために。
「それから、大量の事務処理と上への報告がそのままにしてあるから、覚悟しておけ」
病み上がりの身体にはデスクワークがちょうどいいだろ、とオライオンはニヤリと笑って見せた。それはツルギを一人の人間として扱ってくれている証しでもあり、指揮官として認めてくれているのでもあり、それが嬉しくなってツルギはくつくつと喉を鳴らして笑った。他人と共に笑い合えるのは、久々だった。
死ななくても、痛みは感じる。
死ななくても、心は痛む。
ツルギの尊大な言動の裏に、とても繊細な心の持ち主なのだと気付いた。孤独で、他者を寄せ付けないくせに、誰よりも人が好きな男。
この時から、二人は唯一無二の戦友になった。
続く
長くなりそうなので一旦切ります。
オライオンとツルギの出会いの頃を書いてみたくなりました。