説教でたどるパウロの生涯

 「使徒行伝」などの説教を通して、パウロの生涯を学び、信仰生活の道しるべとします。

パウロの伝道説教(1)

2025-01-27 10:33:00 | パウロの生涯に学ぶ
パウロの生涯(09)

パウロの伝道説教(1)
ピシディアのアンティオキアにて

パウロたち一行は、ペルゲから小アジア内陸にあるピシディアのアンティオキアに着きました。


(新改訳2017の巻末地図より)


ここで安息日になったので、ユダヤ教の会堂に入りました。
すると会堂司に頼まれて、パウロが説教することになりました。



説教の構成

説教は3つに分けられます。
16節から25節までは、出エジプトからダビデまでの歴史。
26節から37節までは、ダビデからイエスにつないで、イエスの生涯をたどる。
38節から41節までは、結論と勧告です。

しかし、第1部ではモーセからダビデまでの歴史。そしてダビデから第2部のダビデの子(子孫)であるイエスにつなぎ、イエスの十字架と復活までを語り、最後に第3部で説教の結論を語るというように、
自然に、とてもうまくつなげています。
まさにパウロの面目躍如とも言うべき、非常に整った説教です。


説教はユダヤ人なら誰でも知っているユダヤ人の歴史から始めます。
これによって聴衆は安心して説教に耳を傾けるようになります。
良い説教の実例でもあります。

しかし、それだけではありません。
神様の救済(救い)の歴史として語っています。


神による救済史

まず神様はイスラエルの民を選び、エジプトでの奴隷状態から解放してくださり、荒野で訓練し、約束の地に入れてくださいました。

そして約束の地において、
ヨシュアの時代、士師の時代、最初の王サウルの時代を経てダビデ王に至ります。 

この歴史から、
ユダヤ人の祖先は、頑なで、神様の御心や御計画を理解しようとせず、不平不満を言ったり、さらに偶像に頼ったりして、神様に背き、罪を犯してばかりいました。

しかし、そんなユダヤ人たちを神様は決して見捨てず、愛と忍耐をもって、彼らを守り、導き続けてくださいました。

会堂にいた人たちは、そのことはよく知っていました。


「神は約束にしたがって、このダビデの子孫から、イスラエルに救い主イエスを送ってくださいました。」(使徒の働き 13章 23節)

そして神様は、約束どおりに、神様はダビデの子孫から救い主イエス・キリストをお与えになりました。

イスラエルの民が神様に背き続けても、それでも神様は救い主メシアを送るという約束を守ってくださいました。


そしてそのような心にさせておいて、
自然にイエス・キリストによる救い(十字架と復活)に誘導しています。

このような神様の救済の歴史がとてもうまく語られています。
これがパウロの説教のすごいところです。


パウロは離散して異邦人の地、小アジアに住んでいるユダヤ人たちに、神様の愛と忍耐の歴史をもう一度思い出させようとしたのです。

不真実な人間に対して、あくまでも真実であろうとなさる神様の愛に、聴衆の心を向けさせようとしています。



私たちへの救済史

私たちも、時には、旧約時代の人たちと同じように、頑なで、神様の御心や御計画を理解しようとせず、不平不満を言って神様に罪を犯していたことはなかったでしょうか。

でも神様はそんな罪深い私たちをも愛してくださり、イエス様のもとに絶えず導こうとしておられるのです。

「アブラハムの子孫である兄弟たち、ならびに、あなたがたのうちの神を恐れる方々。この救いのことばは、私たちに送られたのです。」
 (使徒の働き 13章 26節)

パウロがここで言っているように、
救いのことばは、今説教を聴いている、聖書を読んでいる現代日本の私たちのためなのです。私たちに送られている神様からのメッセージなのです。



キリストの復活

説教の第2部で、パウロは、神様の救いの約束は、イエス様の十字架と復活で完全に実現した(成就した)ことを伝えていますが、
さらに復活が信じられないユダヤ人たちに、イエス様の復活も(旧約)聖書に預言されていたことなんだということを伝えています。


1つは33節。
「神はイエスをよみがえらせ、彼らの子孫である私たちにその約束を成就してくださいました。
詩篇の第二篇に、『あなたはわたしの子。わたしが今日、あなたを生んだ』と書かれているとおりです。」(使徒の働き 13章 33節)

これは詩篇第2篇7節のみことばです。 

もう一つは、34〜35節です。
「そして、神がイエスを死者の中からよみがえらせて、もはや朽ちて滅びることがない方とされたことについては、こう言っておられました。
『わたしはダビデへの確かで真実な約束を、あなたがたに与える。』」
 (使徒13章34節)

 この中の二重カギ括弧の部分は、
イザヤ書55:3の引用です。

また、
「ですから、ほかの箇所でもこう言っておられます。『あなたは、あなたにある敬虔な者に滅びをお見せになりません。』」   (使徒13章35節)
 
この中の二重カギ括弧の部分は、
詩篇16篇10節からの引用です。

前述しましたように、
パウロはイエス様の復活が信じられないユダヤ人のために、 
イエス様の復活は(旧約)聖書に預言されていたことなんだよと言って分かるようにしているのです。



信仰の決断

そして38節からは勧告に移ります。
「ですから、兄弟たち、あなたがたに知っていただきたい。このイエスを通して罪の赦しが宣べ伝えられているのです。また、モーセの律法を通しては義と認められることができなかったすべてのことについて、この方によって、信じる者はみな義と認められるのです。」(38節)


ここでパウロは、はっきりと、イエス・キリストによる福音を宣言し、キリスト教の根本教理を述べます。

それは、イエスによる罪の赦しと、モーセの律法によっては得られなかった義認(神様の御前で正しい者と認められ、受け入れられること)が得られるようになったということです。

39節では、さらに
この方によって、信じる者はみな義と認められるのです。」
と、パウロが広めた信仰義認の教理をはっきりと明言しています。

のちにガラテヤ書やローマ書に記されて、さらにマルティン・ルターによって再確認される信仰義認の教理が、もうすでにここではっきり示されています。

この時のパウロの説教――律法が守れなくても、イエスによって罪ゆるされ、神様の前に義と認められる――は、ユダヤ人のみならず、会堂にいた異邦人のユダヤ教徒の心に響いたようです。

そして聖霊によって信仰の決断を迫られたことでしょう。

よく準備された整った説教は、聖霊と共に働いて、多くの人の心に留まるのです。

ピシディアのアンティオキアのユダヤ教徒たちは、次の安息日にも説教してほしいと言って、その日の集会を終えました。

もしかしたら、次の安息日には、その日に来られなかった人たちを誘って来たいと思ったのかもしれません。

私たちの教会もこうでありたいと思います。


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