パウロの生涯(12)
パウロの牧会的配慮
(新改訳2017の巻末地図より)
赤い破線が第1回伝道旅行の道のりです。
"二人はこの町(デルベ)で福音を宣べ伝え、多くの人々を弟子としてから、リステラ、イコニオン、アンティオキアへと引き返して、
弟子たちの心を強め、信仰にしっかりとどまるように勧めて、「私たちは、神の国に入るために、多くの苦しみを経なければならない」と語った。
また、彼らのために教会ごとに長老たちを選び、断食して祈った後、彼らをその信じている主にゆだねた。"
(使徒の働き 14章 21〜23節)
デルベに向かう
リステラで激しい迫害に遭い、半殺しにされたパウロは、満身創痍でしたが、
それでも神様の憐れみに支えられて、リステラの南東約50kmのところにあるデルベに向かい、ここで伝道します。
詳細は全く記されていないので、分かりませんが、それなりの収穫はあったようです。
パウロは、第2回伝道旅行でも、ここに立ち寄っています。
新聖書辞典によれば、ガイオやテモテは、この町の出身であったようです。
再び試練の地に
ここから東南の方向に進むと、パウロの生まれ故郷タルソにたどり着きます。
パウロは満身創痍でしたから、そこでしばらく休養しても良かったのですが、
そこには行かず、その後、パウロはリストラ、イコニウム、ピシディアのアンティオキアと今まで来た道を折り返します。かつて激しい迫害を受け、半殺しにされかかった町に再度、立ち寄っています。
パウロは伝道したらそれで終わり、後はほったらかしではなく、
再度(場合によっては何度も)訪問しています。
これは、誕生したばかりの教会(信徒たち)を励まし、弟子たちの心を強め、信仰にしっかりとどまるように勧めるためでした。
そしてここでパウロは「私たちは、神の国に入るために、多くの苦しみを経なければならない」と語っています。
私たち現代日本に住むクリスチャンも、信仰を最後まで貫き徹すのは容易ではありません。
悪魔(サタン)は信仰者を駄目にしてやろうと、手を変え品を変え、攻撃を仕掛けてくるからです。
そのために、教会から離れ、信仰から離れてしまう人も多いです。
私たちが神様の御国に入るまでは、色々と試練に出会います。
だからこそ、そのためにも、教会が必要なのです。牧師による牧会も、聖徒の交わりも必要なのです。
そしてそのために、パウロは、教会ごとに長老たちを選びました。
牧会書簡(テモテやテトスに送った手紙)に見られるように、
パウロは牧会をものすごく大切にしました。
そして後には、信徒の執事を設けたり、パウロの弟子であるテモテや、さらにマルコをパウロの代理として派遣して牧会しています。
パウロはただの巡回伝道者ではなく、優れた牧会者でもあったのです。
しかし、最も大切なことは、
「断食して祈った後、彼らをその信じている主にゆだねた。(23節)」
ということです。
主イエス様(そしてご聖霊様)に御支配していただき、導いていただく。それがメインであって、
牧師・長老(役員)・執事などの制度は、そのための道具であり、手段(恵みの手段)なのです。
ですから牧師も役員も教師や執事も、
自分が教会を支配するのではなく、
主イエス様(そしてご聖霊様)に御支配していただくように、
謙遜になってよく祈って、仕えていくのです。
宣教報告会
パウロは今まで伝道してきたところに立ち寄って、信徒たちを励ましながら、デルベまで戻ります。
そして船便の都合であったのかどうか分かりませんが、アタリア港からキプロスには寄らないで、アンティオキア教会に戻ります。
アンティオキア教会に戻ったパウロは、宣教報告会をします。
「そこに着くと、彼らは教会の人々を集め、神が自分たちとともに行われたすべてのことと、異邦人に信仰の門を開いてくださったことを報告した。」
(使徒の働き 14章 27節)
ここで大切なことは「神が自分たちとともに行われたすべてのことと、異邦人に信仰の門を開いてくださったこと」というように、
神が主語になっていることです。
宣教の業は、人間の業ではなく、あくまでも神様の御業です。
異邦人に信仰の門を開いてくださったのも神様です。
もちろん燃えるような信仰や情熱、熱心さも必要ですが、それも聖霊から来るものです。
かつてイザヤは
「今よりとこしえまで。万軍の主の熱心がこれを成し遂げる。」"
(イザヤ書 9章 7節)
と言いましたが、
消えやすい人間の情熱や熱心さではなく、万軍の主の熱心なのです。
異邦人を愛して導かれるのも、主の熱心です。
そしてそのために――異邦人を救うために――聖霊なる神様は、バルナバとパウロの2人を選び、送り出し、異邦人を信仰へと導いて、救われたのです。
神様が自分たちを通して、どのようなことをしてくださったのか、そのことを証しすること、そしてその主を賛美することが大切なのです。
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