2010年10月11日北陸中日新聞14面 遺伝子組み換え作物が拡大 全文
COP10論戦いよいよ開幕
私たちの暮らしをさまざまな形で支える生物の多様性、その損失が深刻さを増す中、保全や持続可能な利用を話し合う生物多様性条約の第十回締約国会議(COP10)が十八~二十九日、名古屋市で開かれる。2020~50年に向けた新たな保全目標を決める節目の会議。COP10に合わせ、遺伝子組み換え生物の取り扱いに関するカルタヘナ議定書の第五回締約国会議(MOP5)も十一~十五日に同市である。名古屋での議論の行方に世界が注目する中、関係者に会議にかける思いを聞いた。
「遺伝子組み換え食品いらない!」キャンペーン
天笠啓祐代表に聞く
環境への影響大きい
遺伝子組み換え(GM)は、生物多様性の基本である生物の種の壁を壊して他の生物の遺伝子を入れ、地球上になかった生物を作り出す。動物の遺伝子組み換えは論理的な壁もあり、自然界に出さないのが原則となっているが、既に実用化されたGM作物は、環境への影響が大きな議題になっている。
カルタヘナ議定書では、GM作物を作るとき、環境への影響を調べる事を義務付けるよう規定しているが、規制力が弱い。五年前から市民の手で行っているGMナタネの自生調査では、運搬中にGM作物がこぼれるなどして自生が広がっている実態が判明。三重県四日市市では、野生植物との交雑が確認された。
殺虫性を持たせたGM作物も問題だ。こうしたGM作物に耐性を害虫が増え、殺虫剤の使用量がかえって増加。除草剤耐性作物の栽培地では、除草剤で枯れない雑草も増え続けている。除草剤の使用量増でアルゼンチンの町では、白血病や遺伝への影響が見られ、緊急事態宣言が出された。
GM作物をネズミやハムスターに与えた動物実験では、肝臓や腎臓の機能低下、不妊や免疫不全などが世界各国から報告されている。米国の食糧戦略で広まったGM作物は、長期間食べ続けた場合の影響も確かめられていない。数々の動物実験で問題点が指摘されている以上、今すぐ流通を停止し、長期的な安全性を確認するべきだ。
米国で近く承認される見通しのGMサケは、生殖能力がないので万が一自然界に出ても大丈夫というが、繁殖能力を失わせた生物を大量放出するのは害虫駆除で使われる手法。自然界に出れば、種の絶滅の危険や環境へのリスクはおおきい。
GM作物の登場以来、特許で新品種の種子開発技術を独占することで、一部企業による種子の支配が進んでいる。このままだと、巨大企業が提供する種子以外は使えなくなる恐れもある。
MOP5では、GM作物が生態系を乱した場合の責任の所在と、どう修復するのか、経済的な損失をどう補償するのかという「責任と修復」が重要課題となる。責任については、GM作物を生み出した企業まで、いわゆる製造物責任法と同様に明確化することが求められる。
(聞き手ー名古屋社会部 片山夏子)
続く
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