戦場に下萌えありて穿く靴か
日本刀握るをのこに春の花
昭和13年 喜多方日記
「戦線の友人より送られし写真をみて」の付記あり
若草や輪になれば人のやわき膝
若草は鳴らず唇こそばゆく
白壁に跳ねかへる陽や種を播く
エプロンにモンペ長靴畑打女
喜多方日記
かげろへる草に下ろしぬ卵篭
妻かなし室咲きの花値切り買ふ
しあわせもなくてクローバー花終わる
喜多方日記
水苔に鯉のどかなる尾を打てり
たたずめば鯉うるはしき春の池
川床の藻に春の陽の緑なる
水あらき大川べりの猫柳
喜多方日記 昭和11年
切りすぎて爪に見る血や日向ぼこ
春愁や首振ればきしむ首の骨
喜多方日記