高橋由美子、歌手デビュー30周年ベストアルバム「最上級GOOD SONGS」発売記念。
2020/11/25追記:ついに全曲サブスク解禁!歌手活動後期のシングルのカップリングは入手が困難でしたがこれで解消。是非どうぞ。
1989年女優デビュー、1990年歌手デビューの高橋由美子。90年はアイドル冬の時代突入直後。80年代を彩ったアイドルたちは女優メインへシフトするか表舞台から去るかのどちらかが多くなり、新しくデビューするアイドルも歌がメインというかたちではなかったり、やっても数曲だけという人も増え、アイドル歌手として歌メインでデビューしたアイドルでも、良作を出しているのに芽が出ずに終わってしまった人もいたり・・・と、アイドル=歌という図式が少し変わっていっていた中、歌もしっかり頑張ってアイドル活動を行ったこの人。
80年代のアイドル歌謡ブームが終焉を迎えるとともに、90年代には幻想の恋の世界を歌うのではなく 共感を呼ぶJ-POP歌手(ガールポップ)が流行り、ビーイング系が流行り、90年中盤以降はバンドブームが起こり・・・・という、世間の流れをスタッフがうまく読み取って音楽活動を展開。
一番適正があったのは芯があって真っ直ぐな声が映えるガールポップ~ビーイング風ポップ路線で、この路線で「Good Love」「友達でいいから」「すき…でもすき」とヒットを飛ばし、アイドル冬の時代に大健闘。96年以降は売り上げ的には小室ブームの波にのまれた感じですが、その時期もいい作品多いです。というわけでシングルを全部さらっと感想書きしてみました。
1st「Step by Step」 1990.04.21 お気に入り度:★7
(作詞・作曲:立花瞳 編曲:萩田光雄)
デビューシングル。この時点ではまだ本格的に歌手活動を始めたわけでなく、他方面で人気が出てきたからCDも出してみるか、という形だったようで、製作はポップス部門ではなくアニメ部門によるもので、PVも無くオリジナルアルバムにも未収録、さらに表ジャケがアニメ仕様、裏ジャケは本人写真ですが、衣装はこの曲のために作ったのではなくてガスメーターのポスター撮影の時の衣装なのだとか。
で、デビュー曲となったのがアニメ『魔神英雄伝ワタル2』主題歌のこの曲。今聞くとサウンドは中途半端な古さがある気がしますが、前向きなメロディがいいし、歌もデビュー曲にしてはハッキリと声が出ていて好感触。無意識過剰っぷりというか 若さありあまってるなーという感じがちょっとくすぐったいけど、まぁそれはそれでデビュー曲らしいということで。アニメ主題歌らしい勇気あふれる元気ポップス。
30周年ベストアルバム「最上級GOOD SONGS」では再録バージョンも収録。変にアコースティックにしたりすることなく、原曲を進化させた感じになっていて、これがまたいいんだ。年齢を重ねたぶんの歌声が応援歌的な歌詞に合ってるし。
2nd「Fight!」 1990.09.21 お気に入り度:★8
(作詞:小澤幸代 作曲:伊藤薫 編曲:根岸貴幸)
前作が好調だったからということで、歌手活動続行決定。デビュー作から続けて同じアニメの主題歌ですが、表ジャケは本人写真になってるのでこの辺から本腰入れはじめた、というところでしょうか。曲自体は前作の延長線上で、キャッチーでテンポも速くなりサウンドも強化。個人的には、頭サビが終わった後のドラム連打がツボ。歌声も1stと比べるときちんとしてきてます。初期で1曲選ぶとしたらコレでしょう。元気いっぱいポップナンバー。ファン人気も高いみたいです。
3rd「笑顔の魔法」 1991.01.21 お気に入り度:★7
(作詞:大場清美 作曲:佐藤英敏 編曲:根岸貴幸)
前作まではアニメ部門での製作だったらしいですが、このシングルからポップス部門へ移動したとのこと。でもまだちょっとアニメを引きづってる雰囲気があるかな。作曲は林原めぐみを多く手がけた佐藤英敏さんなので、メロディのわかりやすさとかはアニソンちっくで好きです。80年代サウンドでも90年代サウンドでもない過渡期っぽいというか、いろいろな意味で91年リリースらしい曲。PVが作られたのはこの曲からですが、安っぽいCG合成もいかにも90年代初期。流行のCGをふんだんに取り入れましたという雰囲気が今見ると別の意味で面白いんですが、きっと当時は最先端だったんだろうなぁ。
4th「と♡き☆め♡き」 1991.06.05 お気に入り度:★7
(作詞:千家和也 作曲:筒美京平 編曲:ULTIMAX)
唐突に麻丘めぐみのカバーにチャレンジ。森高千里「17才」ヒットの2匹目のドジョウを狙った作品なのかな。ということで、聞き所はアレンジ。ULTIMAXというユニット?が手がけているんだけれど、なんだかぐつぐつしてるハウス調の打ち込みサウンドが展開されています。原曲知ってる人には冒涜だといわれるのかもですが、アレンジのおかげで古臭さが薄らいでいるし個人的にはスキです。面白いし。そもそもタイトルにハートマークと星印を足すというところからして変だし。高橋由美子にしては珍しくキワドイ歌詞を楽しむのも一興(他にこういう歌詞ないし)。でも男の子も女の子もはじめては1回だけだと思うんだけど、違うの?
カップリング「アルプスの少女」も麻丘めぐみカバー。個人的にはこっちの方が好きかも。高橋由美子のまっすぐハキハキボイスに合ってる。
カバーとしてはそこそこ面白くていい出来ではあるんですが、森高千里の17才が売れたのは あのユーロ全開アレンジにへんちくりんな衣装と独特の佇まいがあったからこそのウルトラCな化学反応だったわけで、王道アイドルで攻めていこうとしている高橋由美子では特に何もイベントは起きず。
5th「元気! 元気! 元気!」 1991.10.16 お気に入り度:★8
(作詞:秋元康 作曲:筒美京平 編曲:清水信之)
ここで筒美御大作曲・秋元康作詞の楽曲に。シングル曲はここら辺からぐっと狙いがシャープになった感じ。PVもきちんと作られているし、製作スタッフ側のやる気がアップしてるというか。タイトルそのまんまの、元気なアイドル歌謡POPナンバー。ジャケといいパフォーマンスといい表情といい、とっても正しくアイドルしてる、の、だけど、どこか演じてるというか、芸達者だねぇという感じがしてしまうのがこの人のいいところでもあり悪いところでもある。達者だからいいんだけどね。
この曲くらいからでしょうか、初期の何も考えてないような元気いっぱいボーカルから脱却して、ちゃんとした発声を身に着けたイイ声のボーカルになっていきます。
6th「いつか逢おうね」 1992.02.05 お気に入り度:★6
(作詞:秋元康 作曲:筒美京平 編曲:若草恵)
シングルでは初のバラード。作詞作曲は元気!~と同じ布陣。「卒業」をテーマにしたワルツバラードで、筒美さんらしい、歌い手の声の魅力を最大限に引き出すメロディがナイスな曲。でも、なーんかパッと聞きの印象が薄いんだよなぁ。ジャケットもかわいいんだけどなんか印象薄。シングルボックスでの本人コメントも簡単に済ませられており、印象薄。いい曲なんだけど、ちょっと古臭かったかな?と。92年リリースにしては80年代っぽいというか。表題曲と同じ布陣で作られたカップリングの「あの日から僕は」の方がポップで印象に残る。
7th「コートダジュールで逢いましょう」 1992.06.03 お気に入り度:★8
(作詞:秋元康 作曲:亀井登志夫 編曲:大谷和夫)
異国情緒あふれる、ちょっと大人びた雰囲気のサマーソング。本人コートダジュール行ったこと無いって言ってるし、秋元さんの歌詞はとりあえずそれらしいフレーズを散りばめてあるだけなので、本当に雰囲気だけだけど。でもこの曲はそれでいいような気がする。
卒業ソングの次にリリースするには急に大人びすぎ、なのだけれど、それでもきちんとモノにしてるのはこの人の歌唱力のなせる技なのかな。発声もこの辺でもう完成してきてて、違和感なくばっちりこなしてます。
80年代でこの歌唱力だったら、この辺りの異国情緒路線ってのをメインにしていったりするのかなぁ…と思ったりもするけど、時代は90年代。この路線はこれっきり。
8th「アチチッチ -fire version-」 1992.10.21 お気に入り度:★7.5
(作詞:秋元康 作曲:本島一弥 編曲:岩本正樹)
アルバム「Paradise」からのシングルカット。高橋由美子シングル史上最大カオス。メロディはアイドルポップスの基本っぽい素直でポップなメロディなのだけれど、秋元さんの歌詞が・・・w シングルカットするにあたって歌詞も一部変わっていて、「私をさらう大きなウェーブになあれ」が「私をさらうすばやいルパンになあれ」になっていたりしてさらにカオス度が増しております。極めつけはジャケット。消防士のコスプレて。それに合わせてイントロではサイレンの音が鳴り響いているという。
それにしてもなんでアルバムリリースの3ヵ月も後になってシングルカットしたのかなぁ。アルバム内ではいちばん耳に残る曲ではあるのは確かだけど。
最大カオスでもこれくらいのさじ加減なところが高橋由美子(のスタッフ)の真面目っぷりを表してる気がする。
カップリング「こんなにそばに居る」は後のJ-POP/ガールポップ路線の礎となる、どんなときもいつでもそばにいるよと歌う応援歌。こっちのほうが名曲。
9th「だいすき」 1992.12.16 お気に入り度:★7.5
(作詞:さくらももこ 作曲:筒美京平 編曲:千住明)
ちびまるこちゃん主題歌で作詞がさくらももこですが、おどるポンポコリンみたいなみょうちくりんな仕掛けはなく、テンション高い恋心を描いているのでこれまでの流れであまり違和感なく聞ける曲。そもそも1つ前がアチチッチだし。筒美さん作曲なのでメロディも軽快でナイスで、本人曰く「普通はこういう曲でデビューするんじゃないかな」というくらいの明るくてアイドルらしい曲、なんですが、よくよくアレンジを聞くと結構すごいことになってないかこれ。アイドルポップスらしいベタで明るい打ち込みサウンドに、むりくりかぶせたオーケストラアレンジが合わさっていて、妙なゴージャス感を演出しております。面白くて良いですね。
これを最後に筒美さんから卒業し、さらに80年代式アイドル歌謡曲からも卒業。次の曲から、90年代J-POPへと本格的に移行開始。
10th「Good Love」 1993.02.24 お気に入り度:★9
(作詞:柚木美祐 作曲:本島一弥 編曲:岩本正樹)
10枚目にしてやっとヒットと言える楽曲誕生。オリコンTOP10には届きませんでしたが、ロングヒットで累計売り上げ約19万枚。本人主演ドラマ「お願いダーリン!」主題歌でのヒットというのは90年代っぽい売れ方ですね。
曲の方も90年代ガールポップをベースにしてアイドルらしさも含めたキラキラ明るいポップチューンで傑作。もともとは踊れる曲として作られたものをアレンジでポップスに仕立てているらしく、そのおかげでメロディがひとひねり入れてある感じがするのがナイス。ウキウキ感が今聞くと気恥ずかしくもあるけど そこが90年代ガールポップらしくていいのです。売り上げ的にもクオリティ的にも、ここから高橋由美子黄金期スタートといっていいのではないかと。
作詞・作曲・編曲のお三方は高橋由美子作品には欠かせない3人。
作詞の柚木美佑さんは、高橋由美子メイン作詞家のひとり。ガールポップとアイドルポップを融合させた世界観はこの人の歌詞のおかげ。同時期にガールポップを歌っていたアイドルである森口博子と比べると、立ち位置の違いがよくわかるなぁ。
作曲の本島一弥さんは高橋由美子でキーポイントとなる曲を手掛けることが多いお方。いい曲多いのですが、なんで高橋由美子作品以外で見かけないんだろう…。30周年ベストの新曲も作曲してます。
編曲の岩本正樹さん(代表作は中山美穂「ただ泣きたくなるの」、90年代ポップス立役者作家のひとり)は、ここから「すき…でもすき」まで8作連続で担当する、高橋由美子黄金期サウンドを作り上げたお方。
11th「はじまりはいま」 1993.06.23 お気に入り度:★9
(作詞:柚木美祐 作曲:本島一弥 編曲:岩本正樹)
「Good Love」と製作陣は同じ。作風も近くて、続編といった感じの仕上がり。心躍るメロディがナイスな王道前向きポップスですごくいいと思うんですが、売り上げは「コートダジュール~」レベルに戻ってしまうという謎。「アチチッチ」「だいすき」よりは売れたものの「いつか逢おうね」は下回っており・・・この辺の浮き沈みも、一発屋が多かった90年代らしいといえばらしい。個人的には「Good Love」より好きなんだけどなぁ。ライブでも盛り上がりそうだし。うぉーうぉーぅうぉーいぇー。
12th「yell」 1993.11.03 お気に入り度:★10
(作詞:柚木美祐 作曲:本島一弥 編曲:岩本正樹)
名曲!製作陣は「Good Love」「はじまりはいま」と同じで、同じく王道前向きポップスでありつつ、今回はさらにほんの少しのせつなさを加えて、前向きさ、ポップさ、メロディアスさ、全てをバランスよく兼ね備えている楽曲に。そしてなにより高橋由美子にぴったりなんだよね。アイドルらしく元気で前向きだけど元気すぎでもない、このさじ加減がこの人のイメージにぴったり。あんまり知らないけど、イメージねイメージ。
本人主演ドラマ「もうひとつのJリーグ」挿入歌だったそうですが、低視聴率で5話で打ち切りという悲惨なことにならなければ「友達でいいから」とともに代表曲になっていたんじゃないかなぁ。それくらい、名曲。
このシングル出したあと 初のベストアルバム「Single Collection Steps」を出していますが、次のシングルが最大ヒットになるので完全にタイミングを間違えちゃった感。そのせいで、ゴールデンベストが出るまで主要シングルを統括したベストアルバムが無かったという・・・。
13th「友達でいいから」 1994.01.21 お気に入り度:★9.5
(作詞・作曲:TAM TAM 編曲:岩本正樹)
名曲!(←2回目) 約37万枚を売り上げた高橋由美子最大のヒットシングル。ミリオンヒットが多く生まれたこの時代にしては37万枚という数字はそんなでもない気がしてしまいますが、当時のアイドル歌手としてはかなりの売り上げ。90年代アイドル歌手最大ヒットシングルで比べると、40万枚を超えている内田有紀(幸せになりたい)・森高千里(二人は恋人)よりは少し下、観月ありさ(TOO SHY SHY BOY!)とは同じくらい、30万枚弱の森口博子(ETERNAL WIND)より上、西田ひかる(きっと愛がある)の倍近く売れてるというと、かなりの大健闘といえるのではないかと。本人主演ドラマ「南くんの恋人」と揃ってのヒット、というのはやっぱり90年代らしい売れ方ですね。
曲としては、やっぱり男子目線の歌詞がポイントかな、と。高橋由美子の声は上手いが故にかわいらしさという面では少し弱いのですが、それがすごくうまくピッタリはまっているのがこの曲。強烈なインパクトがあるわけじゃないのにいつの間にか口ずさんじゃうようなメロディもいいです。90年代ドラマ主題歌名曲のひとつ。
アルバム「Tenderly」にはDry-Mixとして収録。2番後の落ちサビ部分の歌詞が増えております(TAMTAMのセルフカバー版と同じ)。が、ドラムパートがうるさくなっていてその辺は改悪かも。バラードじゃなくて音数が少ないわけでもないのに癒し系なところがこの曲のキモなのにー。
30周年ベスト「最上級 GOOD SONGS」ではオリジナルのアレンジのままで、2番後の落ちサビ部分の歌詞が増えたバージョン(Dry-Mixともちょっと違う)で収録。
カップリングの「今度逢える時には」は近くに居るのに恋人になれない表題曲とは対照的に、遠くに離れていても愛しているよ、という遠距離恋愛ソング。オリアル未収録ですがPVも作られているだけあってカップリングにしておくにはもったいないバラード。
14th「Good-bye Tears」 1994.04.21 お気に入り度:★9.5
(作詞:柚木美祐 作曲:工藤崇 編曲:岩本正樹)
名曲!(←3回目) 2ndシングル以来、久しぶりのアニメ主題歌(覇王大系リューナイト)。せつなさ持ちつつも前向きなところのさじ加減とか、青空が似合う雰囲気とかはアニメ主題歌っぽいかもしれませんが、そう言われればそうかも、というくらいで基本的にはこの時期の高橋由美子王道アップテンポ。Bメロでいったんオチてサビでもう1回ジャンプアップするメロディが良いっ。オリジナルアルバム未収録なのはアニメの方に権利持っていかれたのかね?安室奈美恵「Toi et moi」みたいに。C/Wの「ポイント1」も同じ路線のいい曲。でもジャケットのデザインはなんとかならなかったのか。写真の比率おかしいし。「高橋由美子」の隣に「THYMK」(TakaHashiYuMiKo)って。前作に続いてのオリコンTOP10入り。
15th「そんなのムリ!」 1994.06.22 お気に入り度:★7.5
(作詞:柚木美祐 作曲:本島一弥 編曲:岩本正樹)
楽曲の狙いとしては「Good Love」再び、っぽいですがこれは微妙に外したかも? 音符数の多いメロディでそこがフックになっているんだけれども、なんかこう、走り出そうとしているけど走り出しきれていない、みたいな。突き抜けが足りないというか。いや決して悪い曲じゃないしスキなんですが「Good Love」から5作連続ホームラン級だった流れからすると若干落ちるかなぁと。個人的にはC/W「想い出あげない」をシングルにしたほうが良かったような気がする。こちらも音符数の多いメロディですがセンチメンタルな感情を美しく紡ぎだした曲。シングルらしいわかりやすさもあるし、代表曲「友達でいいから」や、この後に出した「すき...でもすき」など、切ない系によるヒットもあるんだし、この系統もっと前面に出してもよかったよなぁって。しかしこの時期カップリングも名曲多いな。TOP10入りは逃したものの、セールスは前作より上昇。ジャケット写真が好きです。
16th「3年過ぎた頃には」 1994.10.21 お気に入り度:★7
(作詞:白峰美津子 作曲:若松歓 編曲:西脇辰弥)
6thの「いつか逢おうね」以来のバラードシングル。どうしてこの人のバラードって地味になっちゃうんだろうねぇ。まっすぐな歌声がそうさせてしまうのかな。とはいえ、「その彼女と付き合ってなさい 今はいいから 3年過ぎた頃からきっと友達なんかでほおっておけなくなるから」と歌いつつ、最後は妄想でお付き合いしてるという、片思い女子の重い思いをユニークに描いている佳曲。
サビの裏声になりそうなギリギリラインの高音がいいアクセントになっているし、なによりこのキーをきちんと無理なく聞かせるボーカル力はさすが。クリスマス企画ミニアルバム「Working on Xmas Day」では(Bell Tune)としてベルの音が追加されて収録されていますが、この歌詞でクリスマスアルバムに収録されても…w
17th「すき…でもすき」 1995.05.24 お気に入り度:★8.5
(作詞・作曲:秋元薫 編曲:岩本正樹)
7ヶ月ぶりのシングル。稲垣五郎と共演した本人出演ドラマ「最高の恋人」の主題歌。せつなく胸キュン片思いな気持ちを歌ったミディアムナンバー。そんなに派手さはないけど、この頃のドラマ主題歌らしい心地よいセンチメンタル感がいいですね。同じく主演ドラマ主題歌だった「Good Love」と同じくらいのヒットに。このシングルリリース後にセレクションベストアルバム「for BOYS」「for GIRLS」をリリースし、ビーイングライクなキラキラ仕様のガールポップ的な作風から脱却を図るようになっていきます。これ以降ヒットと呼べる曲も出なくなってしまうし、いろいろと区切りのシングルかも。
18th「最上級 I LIKE YOU」 1995.11.22 お気に入り度:★8.5
(作詞・作曲:平松愛理 編曲:清水信之)
平松愛理さん提供曲。基本的にアイドルに徹して楽曲製作にはあまり口を挟まないという高橋由美子が作家を指名した唯一の楽曲なのだとか。歌詞がすっごい平松さん節炸裂だなぁ。「友達でいいから」を平松さん流に超訳したような。平松さん曲といっても部屋Yの平松さんではなく、ガールポップな平松さんの曲です。アレンジは平松さんの旦那様であった清水さんですが、もともと「元気!元気!元気!」とかのアレンジをやってくれていた人なので、すごい異色作とかではなく、わりと自然に高橋由美子に溶け込んでますね。ちなみに平松さん自身も「Rebirth」というアルバムでセルフカバー。より平松節が強調されたアレンジに。
19th「負けてもいいよ」 1996.03.03 お気に入り度:★8
(作詞:康珍化 作曲:松本俊明 編曲:清水信之)
新機軸。スローテンポ楽曲だとなんだか地味になるというのを逆手にとって?そっと寄り添ってくれる系のスローでほっと一息つける応援ソング。高橋由美子の芯のある歌声がやさしくマッチしていて、スッと心に入ってくる感覚。シングルには正直地味ですがこの路線は結構いいかも。でも結局これ1曲限りの路線なんだよなぁ。前作の平松愛理曲も良い作品なのにイレギュラー作だし、売れなくなってくると迷走しちゃうのは仕方ないとはいえちょっと惜しい。
20th「WILL YOU MARRY ME?」 1996.07.24 お気に入り度:★7.5
(作詞:康珍化 作曲:茂村泰彦 編曲:清水信之)
アルバム「万事快調」先行シングル。タイトル通り結婚ソングですが、よくあるウェディングバラードではなくって、ひとひねりふたひねりしてありますなぁ。歌詞は「きみの苗字になってあげるから」「毎朝最初に会えるし きつい部屋代はんぶん助かる」とかの、広瀬香美ちっくなぶっちゃけまくりの強気女子なのだけど、嫌味にはならないところがさすが康珍化さん。
でもなんでこの内容で6月リリースじゃないのだろう・・・。
カップリングの「ちょっとまってちょうだい、けだものさん」ではラテンにチャレンジ。アルバムにも入ってます。タイトルはふざけてるみたいですが別にそういう曲ではなく、妖しい雰囲気の夏ラテン。タイトルとのギャップが気持ちいい。
「万事快調」はアルバムのなかでは一番いいかも。ジャケットのセンスは別として。
21st「今までどんな恋をしてきたんだろう」 1997.01.22 お気に入り度:★8
(作詞:村田恵里 作曲:山田直毅 編曲:亀田誠治)
バラード。やっぱり地味なんだよなぁ・・・でもこれは大好き。晩期ならではの黄昏た雰囲気がよくでてるというか。派手さは無いけど、さりげなさがちゃんと強みになってるのがこれまでの由美子バラードとの違い。
ギターが効果的なアコースティックテイストのバンドサウンドで、なんとなくブリグリあたりの影響を受けてるようにも聞こえるかなーとか勝手に思ってたら、よく見たらまだブリグリデビュー前だった。バンドブームは既に起こっていた時期なので 先見性があるってほどではないですが、そういう空気をうまく読み取って高橋由美子に合うかたちで反映させているかな、と。ちなみに、作詞の村田恵里さんは元アイドル歌手だったりします。
カップリング「どーにかして!!」は元ピチカート・ファイヴ高浪敬太郎さん作曲のキュートな作品。
22nd「笑ってるだけじゃない」 1997.10.22 お気に入り度:★7
(作詞:森浩美 作曲:山田菜都 編曲:亀田誠治)
亀田誠治さんサウンドプロデュースのアルバム「気分上々」先行シングル。タイトルが秀逸、というかすごく高橋由美子らしい、気がする(勝手な思いこみかな)。軽快なギターとドラムパートが印象的なバンドサウンドが特徴の作品。悪い曲ではないんですが、アルバム先行シングルとしては上田知華さん作曲の「それなりに」の方がシングルっぽかったかも、とか思ったりはする。
ショートカットにしたジャケ写はちょっと鈴木あみチック。
23rd「ふたりの距離」 1998.07.23 お気に入り度:★9
(作詞:中山加奈子 作曲:林有三 編曲:CHiBUN)
リリース間隔が空いてのこのシングル、セールス的にはかなり厳しかったと思われますが、そんなことを感じさせない名曲。アコースティックな質感をもたせたミディアムバラードなのですが、なんといってもこの曲はメロディがナイス。2段構成サビメロがすごくグッとくる。"会えないせつなさがふたりの距離をつなぐ"という歌詞と、高橋由美子の歌もちょうどいいせつなさにあふれていて、いいですホント。何かきっかけがあればヒットしてもおかしくなかったんじゃないかなーと思うのですが、そんなきっかけなんてそうそうあるわけもなく…。
24th「螺旋の月」 1999.02.24 お気に入り度:★8
(作詞:山本成美 作曲:小西貴雄,小池雄治 編曲:小西貴雄)
現在のところラストシングル。ジャケ写からしてこれまでとちょっと雰囲気が違いますが、曲の方もちょっとイメチェンで重厚なバラードにチャレンジ。もともと声に重みがあってしっかりしているうえに、この頃から舞台女優としての活躍が増えることもあってか、これまで以上に堂に入った歌唱を披露しているので、こういう曲もばっちりです。
カップリング「Restart」は高橋由美子作詞。ラストシングルのカップリングのタイトルがこれってことは、本人共々このシングルがラストのつもりで いつかリスタートするぜ、という気持ちをこめているのか、それともなんともないのか、果たしてどっち。歌手活動末期のカップリングなのに妙に良い曲。
この後にアルバム出してほしかったなー。「ふたりの距離」以降のシングル・カップリングどっちもいいセンいってるので、もし作っていたら歌手活動末期らしい良さのあるアルバムになったような気がする。
この後は、基本的に歌はミュージカル専門という知念里奈コース(?)へ。
とはいえ、シングル24枚(+アルバム10枚)というのは、90年代アイドルにしては非常に頑張っていたなと。そんな輝かしい歴史が聞けるベストアルバム「最上級 GOOD SONGS」は超おすすめです。新曲・新録もいいよ。