一庵 (ひとつあん)

飛べないライター『いたっきい』の愚行をさらしています。

※普段ハtwitterニ居リマス。

スチール・ジャングル (JAL整備工場Vol.2)

2007-02-10 | 旅行・見学

前編はこちら
ここから後編です。

主翼上、前縁を見学していると、JT9D-7R4Dエンジンの様子が良くわかりました。
整備中のエンジンは複合材のカバーを外され、燃料噴射のメカニズムが見えています。

 
 PW-JT9D-7R4Dエンジン。上が取付支持架、右が前方

左下に見える細いパイプから、燃料が燃焼室に送られ、点火されます。
右端に見えているのはファン。外側カバーと内側カバーの間のダクトが、燃焼されずエンジン後方に送られる空気の通り道(バイパス)です。旅客機のターボファン・エンジンのバイパス比は4以上と、大半の空気が燃焼されずにエンジン内のダクトを通過します。次世代機ボーイング787用に開発が進む新エンジンは、なんとバイパス比10以上。超低燃費、低騒音の次世代エンジンです。

主翼とエンジンの見学の後は、機体後方に回ります。
圧倒的な存在感があるのが、機体の中でもっとも背の高い垂直尾翼の補修設備。
全高15.8mの尾翼を整備するこの櫓は、補修設備というより、もはや巨大な建造物です。

 
 6階建てのビルに相当する巨大な設備
 左右にスライドして垂直尾翼を挟み込む

 
 尾翼が見えていないと、航空機の補修設備とは到底思えない

機尾に赤いカバーがかかっていますが、あれはAPU(補助動力装置)の排気口です。
APUは小型のジェットエンジンで、燃料は航空燃料をそのまま使います。補助動力装置といっても、飛行に必要な推力は生み出せません。駐機中と離着陸の前後などに機内に電力を供給する、いわば発電用ジェットエンジンです。巡航中はメインエンジンの発電機で電力を供給しますので、飛行中はカットしています。ただし離着陸時や緊急時など、メインエンジンのパワーが必要な場合はAPUを起動し電力を供給することで、メインエンジンの負担をできるだけ少なくします。

・・・というような説明を受けました。
説明してくださる整備道25年の整備部長、黒田さんもどこか楽しそうです。
一般の見学者と違って、技術的なことをツッコんで聞いてもらえるというのはやはりエンジニアとして嬉しいようです。

では、その尾翼付近に上がってみましょう。

 
 機体最後尾付近の内部

ここは機体の最も後ろです。左が前方で、左奥に見える黄色い壁のようなものが圧力隔壁です。
天井から突き出ているネジ状のものは、水平尾翼を動かすためのものだそうです。
下から斜めに延びている竹のようなパイプがAPUの排気パイプでしょうか?
熱で焼けた感じがでているので、おそらくそうでしょう。
ちなみにここは、水平尾翼の取り付け部分の隙間から覗き込んでいます。

続いて機内へ。

 
 キャビンの整備風景

座席の配置は、国際線準拠のC30/Y202
座席は全てのカバーが外されています。整備員もデリケートな機内に傷をつけないように、靴を柔らかい布でカバーしていました。

 
 スライドドアと、ドアに装着されている脱出シュート

飛行機に乗っていると、離陸前に「客室乗務員はドアモードを“アームド”に変更してください」というアナウンスが流れますが、この「アームド」の状態でドアを開けると脱出シュートが飛び出します。

以前、某航空会社のエアバス機長から聞いた話で、下地島空港(乗員訓練施設)へ機体をフェリー(空輸)した際に、アームドのままドアを開いてしまって大変なことになったと聞いたことがあります。
その後どういう処分があったのか気になるところではあります。。。

 
 機首付近。機内の装備はほとんど取り外されている

がらんどうの機内は、飛行機というより工事中のトンネルでした。コクピットも計器盤が外されてほとんどガラクタ状態。。。重整備は、文字通り徹底的な分解整備なのです。

 
 巨大な扉がゆっくり開く・・・

風が納まったか、暗くなってきたせいでしょうか? ハンガーの巨大な扉が警告音とともにゆっくり開きます。あまりにも巨大すぎて、遠近感が狂う光景です。この扉には、4t車が通れるほどのシャッターもついていました。

 
 RW16Lに着陸する772(Boeing777-200)

羽田空港のRW(ランウェイ)16Lに着陸するB777も近くに見えます。RW16は木更津方向からアクアライン沿いに進入するコースで、滑走路は2本。通常はL(レフト)が着陸、Rが離陸に使われています。
夕方の羽田はトラフィックも多く、数分に1機の割合で次々と降りてきます。

通路を通り、隣のハンガーに移動します。

 
 おお!これも某ドラマに出てきた場所!

隣のハンガーには、数機のMDシリーズが入っていました。
MDシリーズはいたっきいの好きな機体です。
ちなみにMDというのは、マクドネル・ダグラス社のこと。この会社はF-4やF-15、F/A-18などの戦闘機を造った会社ですが、今はボーイングに吸収されています。

 
 MD-81(JA8497) エンジンは推力9070kgのJT8D-217C

ハンガーに入ってすぐの場所にいたのが、このMD-81
PW-JT8D-217Cエンジンを胴体後部側面に装備する双発機です。この位置にエンジンをマウントすることのメリットは、エネルギー効率が高いことと、主翼下にエンジンがないために脚を短くできること。脚が短いことで脚の強度も高まりますし、乗客や荷物の積み下ろしも容易になります。
デメリットは、客室の直近にエンジンがあるために騒音が大きいこと。しかしJT8Dシリーズはもともと低騒音のエンジンですので、他機種に比べて特にうるさすぎるということはありません。

 
 MD-90(JA001D) エンジンは推力11340kgのV2525-D5

MD-81の隣では、MD-90が整備を受けていました。
MD-90はエンジンをより低騒音・低公害のIAE-V2525-D5に換装したもので、緊急時の出力も高く、戦闘機並みの推力が出せます。離陸時に「え?こんな急角度で上昇するの!?」と毎度驚くのがこのMD-90です。また近々乗りたいなあ・・・

 
 小さく見えるMDでも、やはり大きい!

この機体はエンジンの定期点検中でした。
垂直尾翼先端の高さは9.4m。B767の半分の高さですが、それでも下に人が立つと巨大です。

 

最後に、ハンガーの外に駐機していた773(ボーイング777-300)をバックに記念写真を撮り、見学終了です。結局3時間、飛行機に張り付いていました。。。
このような貴重な場をセッティングしていただいたJALの櫻井氏、説明してくださった黒田氏、外山氏に感謝します。ありがとうございました。。。次回もまたよろしくお願いしますw

 

見学を終えての感想は、とにかく規模が大きいということ。
250機の航空機を安全で快適に運用するために、JALでは5万人を超えるスタッフが働いています。整備は年末年始も夜間も関係なく、24時間365日体制で行われています。
航空会社の規模の大きさ、それと安全に対する取り組みの真剣さに圧倒されました。

あと、個人的にはかぶりもの(機長の制服)が印象に残りました。。。
もしかしてコスプレの素養があるのでしょうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の飲み会にて。

 

 

 

 
 ウサ耳と、酔っ払いおねえたま

 

 

 

 

 かぶりものに目覚めてしまったようです。

 

 

コメント (9)    この記事についてブログを書く
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9 コメント

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(笑) (カチョ~)
2007-02-16 09:44:19
前後編と2部構成で2日にわたり説明してくれたのですが最後のでずいぶん長い前フリだったのか?と思いました。でもこのパターン個人的には結構好きかも。。。
次回もよろしくお願いします。
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Good Job!! (shin_r1100)
2007-02-16 23:32:53
ハンガーかなりエエ感じやな~
返信する
機長様~ (仮眠ライダー55)
2007-02-17 01:53:49
貴重な画像が拝見できて感激です☆
すべてがビッグですね~
今すぐ空港に行って飛行機がみたくなりました。

それにしても、いたっきいさんも女性の方達も制服が似合っていて、本物のクルーみたいですね!

翼の見える席を陣取って、空の旅に出たいなぁ
返信する
Unknown (しえる)
2007-02-17 11:42:06
機械の難しいことはわからんけど、なんか楽しそうやね^^
最後のかぶりものGOOD!!
あと、機長姿も似合ってるで~^^
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おひさ。 (さとるん)
2007-02-19 16:16:58
いいねぇ、

さとるんの子供の頃の夢は、飛行機の整備士でした。
小さな頃、親父の仕事で羽田にしょっちゅう付いていって、羽田の整備工場に忍び込んでいたよ。懐かしいなぁ。
いろいろ教えてくれたおじさん元気かなぁ?つか、生きてるかなぁ・・・。

でも今は、飛行機とまったく関係のない仕事。
しかも、旅行は飛行機よりも今話題性抜群の船の方がすきなんだよねぇ。
変われば変わるもんだ。
返信する
Unknown (ichirou)
2007-02-19 23:31:20
いやぁ、整備状況を見られるなんて貴重な経験ですね。
羨ましいです。
ドラマに映し出された場所、改めて写真で見ると不思議な感じがします。
鮎原...あ、それはアタック№1か。

ウサ耳付けて...あぁ..うぅ~あなたって人は...
妙に似合ってるし..._| ̄|○
返信する
私も好きです!MD-80・90シリーズ (イニシャルDD)
2007-02-25 00:48:52
鉄分の濃い私は2/18~22に石北本線の貨物列車を撮りに行っていましたが、その帰りの女満別便でMD-81に乗って来ました。

今の旅客機は主翼の下にエンジンをつけた形態が多く、遠くから見るとボーイング777なのか767なのか、エアバスA300なのか一発で区別がつきませんが、DC-9から始まるこのシリーズは形が個性的で好きな機材です。残念ながら昨年ボーイング717をもって生産を終了しました。

ただ機会があれば、積極的に乗ってみたい機材です。
返信する
似合うよマジで☆ (かっちー)
2007-03-02 00:11:43
コスプレいいね!(いいのか?)
私も機長服着たかったなーー。
エアラインの整備工場って一回も行ったことないんだよねーーなかなかタイミングがなくて。。
でも画像がいっぱいあったから、すごい楽しめた(*^_^*)/
返信する
やれやれ・・・ (いたっきい)
2007-03-16 23:28:52
みなさんのコメントに、1ヵ月経ってから返事を書くのもいかがなものかと思いますが・・・

■カチョ~さん
オチとしては、飛行機とは無関係ですけどね。
なかなか貴重な体験でした。
関西方面で面白いネタがあればお誘いしますよ。

■shin_r1100さん
ごっつええ感じです。
ヒコーキマニアは、ヒコーキに関連するどんな些細なものでも萌えるのです。面白い撮影ポイントもいろいろあるので、いつか撮りに行きましょう!

■仮眠ライダー55さん
羽田に向かうモノレールで「新整備場」で降りると、飛行機が間近をタキシングしていくポイントがあります。フェンスが高いので撮影には向きませんが。ちなみにそこから空港まで、滑走路の真下を歩いて15分くらいで着けます。

>本物のクルーみたいですね!
みなさんご自分で操縦桿を握っておられる方です。ある意味クルーです。
制服は着てませんけど。

■しえるさん
>最後のかぶりものGOOD!!
あ、やっぱり。これを被ると、ビールが一杯無料になったような・・・
でもいたっきいは、かぶりものそのものに興味津々やったんやけどね。

■さとるんさん
まいど。
なんと、そんな幼少期の体験がおありでしたか。ヨーロッパでは、そういう少年たちをハンガー・ラットと呼びます。ハンガーラットあがりのパイロットのなかには、アエロバティックスのトップパイロットたちもたくさんいます。子供の頃の夢を叶えられるって素敵ですね。
ちなみにいたっきいはフネも大好き。まだ決定ではありませんが、近々珍しいフネに乗る予定です。

■ichirouさん
次回機会があれば、ぜひご一緒に。
本当に貴重な体験でした。政府専用機がハンガー入りしていたらいたっきいの興奮も最高潮だったでしょう。。。てか、公開できるのかな、それ?
この施設、オフィス側は俳優女優たちのサイン入りポスターでミーハーな感じでしたが、さすがに整備棟は質実剛健、チリひとつ落ちていませんでした。この落差もいいですねえ。ま、JALの場合は株価の変動幅も大きいですが。。。

■イニシャルDDさん
おお、イニDDさんにもテツ以外に好き嫌いがあったとは!(失礼)
たしかにB7、B6、A6は遠めにはそっくりですね。
今度いたっきいが見分け方をお教えしましょう。何の役にもたちませんがw
そうそう、最後はボーイング717でしたね。いたっきいにはこのシリーズの違いのほうが分かりにくいです。717見たことないし。

■かっちーぽん
>コスプレいいね!(いいのか?)
いいのか?
じゃ、なにかイベントがあれば誘うデスよ。あと、コスプレ好きならw、浜松の航空自衛隊広報館でフライトスーツ着るのがオススメ・・・って、行ったんだっけ?
返信する

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