一庵 (ひとつあん)

飛べないライター『いたっきい』の愚行をさらしています。

※普段ハtwitterニ居リマス。

舞台裏見学 (JAL整備工場Vol.1)

2007-02-09 | 旅行・見学


いたっきいが所属するグライダークラブには、いろんな職業の方が参加しています。
自営業、サラリーマン、公務員、弁護士、医師、研究員etc.
当然飛行機好きの集まりですので、航空会社の現役パイロットなど、航空関連にお勤めの方も何名かいらっしゃいます。今回はそんななかのお一人のイキな計らいにより、航空機の整備工場の見学に行くことができました。

設定された見学日はウィークデー。
おそらく休日は一般の見学者が多くて、いろいろと不都合があるのでしょう。
しかし、平日にもかかわらず20名近い人が集まるこのクラブはいったい・・・
みんな仕事しなくて大丈夫なのかなー?という心配は、自分にも当てはまるので考えないようにしましょう。

 

場所は羽田空港、JAL No.1格納庫
空港モノレール「新整備場」駅すぐそばです。
ロビー入り口には本日の見学予定団体の名前が貼り出されています。その中にわがクラブの名前もありました。
ひとつ違うのは、他の団体より見学予定時間が長いこと。
どうやら特別コースを設定していただいたようです。

建物に入り、エレベーターで3Fへ。
おお!ここは某ドラマに出てくる場所ではありませんか!

 
 研修中の場面でここが使われてた

 
 ロビーに展示されていたラジコンたち
 右:ボーイング747-400、通称ジャンボ・ジェット
 中:ボーイング777-200、通称トリプル・セブン
 左:ボーイング787、ドリームライナー(次世代中型旅客機)

まだこの世にない次世代機B787(-100?)にはちょっと驚いたけど、JALはB787のキックオフ・カスタマー(開発初期から購入を予定している航空会社)。このようなものがあっても不思議ではありません。
近い将来、実機が見られるようになるでしょう。

見学コースのはじめは、航空教室です。
航空機の飛ぶしくみ、構造、JALのこと、そして機体の整備のことをわかりやすく説明してもらいます。広報担当の方が「パイロットの皆さんには今さらですが・・・」としきりにおっしゃっていましたが、こうしてわかりやすい説明を聞くのも新鮮でいいものです。

 
 広報担当外山さん

写真のボーイング747-SRの模型は実機の1/100、全長71cmです。本物のジャンボをこのサイズに縮小すると、重量はわずか200gになるとのこと。ちなみに2000ccクラスの乗用車を全長71cmに縮小すると、その重量は約3500g・・・ 航空機の軽さがわかっていただけますか?

その軽さの秘密は・・・いろいろあるのですが、有名なところでハニカム構造があげられます。ハニカムを構成するアルミの板は、厚さ約0.1mm。カミソリのように細いのですが、強く叩いても変形しません。

 
 主翼のハニカム(蜂の巣)構造

次にエンジンの説明がありました。
ジェットエンジンは、空気を大量に吸い込んでファンブレード(エンジンの正面から見えている羽根)で圧縮、奥の燃焼室で燃料を噴射して点火、その爆発で膨張したガスの反動で前進します。また排気ガスの圧力でタービンブレードを回し、タービンと直結したファンブレードを回して次の空気を圧縮します。このしくみはガスでタービンを回すのでガスタービン・エンジンとも呼ばれます。クルマについているターボも基本的には同じしくみです。

 
 チタニウム製のファンブレード、1枚160万円。

上写真のファンブレードは空気の圧縮用ではなく、エンジン後方に空気を流す、いわばプロペラの役目をするものです。エンジンの正面から入った空気はこのファンを通過し、8割ほどの空気はそのままエンジン後方から排出されます。ほんの2割ほどがエンジンで圧縮され、燃焼されるのです。ジェットエンジンのなかでも、このようなプロペラがついているものをターボファン・エンジンといい、低燃費で低騒音なことから今の旅客機の主流のエンジンとなっています。ジェット機といっても、プロペラ機と同じ原理も使って飛んでいるわけです。

 
 ニッケル75%、クロム15%を含む合金製のタービンブレード
 タバコの箱くらいのサイズ

これは高温高圧にさらされる排気側の羽根、タービンブレードです。常に900℃以上の高温にさらされるため、内部は空洞になっています。ブレード表面の直径0.5mm程度の穴から冷却用の空気を放出し、温度の上昇を防いでいます。そのため構造が非常に複雑で、価格は1枚70万円以上。耐久性は1200℃で1万時間以上だそうです。
こんなものが1000枚以上ついているジェットエンジンは、実に1基あたり25億円以上もします。

このように、マニアでもそうでなくても十分に面白い内容の説明でした。
そのほか、翼のしくみ、ケブラー繊維製のノーズコーン、映像による飛行機製造のしくみ(シアトルのボーイングフィールド、エバレット工場でのB777生産設備)やエンジンの耐久実験の映像を見て、講習?は終了しました。

次は、お待ちかねの整備ハンガー(格納庫)見学です。。。

と、その前に!
その部屋に記念撮影用のコスプレセットが置いてあったので、カブリモノ大好きないたっきいとしてはそれを着ずにはいられません。
で、グライダークラブのお姉たま方と。。。

 
 すっげえうれしそうないたっきい・・・

制服は、この「機長」と「CA」のほか、「整備員」のものもありました。
見学される方は、ぜひこれもお試しくださいw
ここにはDC-9のコクピットも置いてあるので、「操縦室で記念写真」ってのもアリですヨ。

さて。
見学者用のIDカードとヘルメットが配られ、いよいよハンガーに入ります!

今回は見学者全員がパイロットということで、特別の計らいにより、通常の見学者とは違うコースで見学をさせていただくことになっています。しかも写真撮影もフリー。
ハンガーではボーイング767が重整備中とのことです。ワクワクします。

 
 おぉ~!・・・どよめきがおこる

出たところは、格納庫の3Fでした。
なんというか・・・広大な空間です。東京ドームが入ってしまう大きさだそうです。
このハンガーはボーイング767が2機同時に重整備を受けられるようです。

え!?降りていいんですか?
許可が下りたので、キャットウォークから地上に降ります。

 
 整備ハンガーというより、なにかのプラントに見える

ハンガーには部品ひとつ落ちていません。工具類もきちんと揃えられています。万が一ネジなどが落ちていた場合、ハンガーに入っている機体をもう一度徹底的にチェックするそうです。それでもわからないときは再度バラバラにするとか。。。
小さなネジの一つや二つ無くなっても飛行には支障ありませんが、その万が一、いや「億が一」に備えるのが航空会社です。

 
 B767用の整備ライン

中央の黄色い線が中心線。ここをノーズギアが通ります。白い線は、胴体の太さを表すのでしょうか?
奥に見えるのが、垂直尾翼と水平尾翼の整備に使う設備です。向こう側の扉まで、約100mあります。
整備中の機体も見てみたいものですが、機体が入っていないところも設備が良くわかってマニア心をくすぐられます。

 
 いた!ボーイング767!

同じハンガー内に、整備中のB767-300がいました。
補修設備に完全に覆われたこの763(B767-300のこと)は現在重整備中。
18ヶ月に一度行われるC整備(日数7日間)か、6年に一度行われるM整備(日数21日間)のどちらかの模様です。

整備中の機体のレジは、JA8264
形式は、Boeing767-346。
導入は1987年9月。
エンジンは推力21800kgのJT9D-7R4Dが2基。
国内線用のCF6-80エンジン搭載機に比べてエンジン出力こそ低いものの、5230ノーチカル・マイル(約9700km)という長大な航続力を有しています。
またJALではこのエンジンにETOPS180(緊急時にはエンジン1基のみで60分以上180分未満が飛行可能)の認定を受けています。この「資格」は航空会社によって異なり、トラブルの多い航空会社ではこの認定が引き下げられたり、ETOPSを喪失したりします。

こうやって説明を聞きながら周りから見るだけでも特別扱い(通常の見学コースでは既定の通路から見学するのみ)なのですが、自由に機体に近寄ってよいとのこと!
理由は、今回の参加者は全員パイロットなので、機体に対する姿勢ができている(この部品は触っちゃダメとか、このあたりはウロついちゃダメとかがわかっている)からとのこと。
だから、こんな場所まで近づけるのです。

 
 ノーズギア。
 ブレーキはついていないが、舵輪を兼ねるためちょっと複雑

 
 胴体下より、機首方向を見る

オレンジのホースには酸性の液体が流れていて、トイレなどの配管にこびりついた汚れを溶かして流します。細いのが供給側、太いのが排出側です。

 
 胴体下より、機尾方向を見る
 カバーが外されているのは、メインギア(主脚)付近

次に翼の見学。
設備の耐荷重の関係で、数名ずつ主翼に上がります。

 
 右主翼後ろから上がる

 
 右翼端 

 
 フラップ(下に下がっているもの)とスポイラー(上に立ち上がっているもの)
 胴体側面のフェアリングは外されている

 
 エルロンのアクチュエーター付近
 主翼下面のパネルは取り外されていて、油圧の配管などが良く見えた

 

このときまでに120枚ほど写真を撮ってしまいました。。。
もうこれだけでお腹いっぱいなのですが、まだ見学は半ばです。

つづく。。。

 



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