「はたかぜ」を退艦したいたっきいは、日の出埠頭を北に歩く。
「はたかぜ」の後方には、白くスマートな外観の巡視船が停泊している。
第三管区海上保安本部所属ヘリコプター搭載型大型巡視船「やしま」
「みずほ型」ヘリコプター搭載大型巡視船の2番船。
全長130m。
排水量5,317t。
2基のディーゼルで、18,200馬力を発揮する。速力は約23kt。
日本近海だけではなく、200海里を超え遠洋にでていくことも考慮して設計されている(事実、「やしま」はイギリスまで行ったことがある)ため、航続距離は8,500海里(約15,700km)に達する。
搭載ヘリコプターは、ベル212が2機。後部ヘリ甲板から発着する。
武器として、35mm単装機関砲1門、20mm多銃身機関砲1門を装備する。
乗員は130名。(護衛艦「はたかぜ」のちょうど半分)
所属する第三管区海上(横浜)保安本部には、世界最大の巡視船「しきしま」と並び、このヘリコプター搭載型大型巡視船(=Patrol Vessel Large with Helicopter=PLH)が2隻配備されている。
さすがに工作船対抗用に建造された「あそ型PL」「ひだ型PL」ほど新しさを感じさせるデザインではないが、5,000tを超える巨大な船体は凌波性も高そうで、実戦を想定しないならこっちのほうが海上勤務は快適そうである。
関係ないが、“逮捕しちゃうぞ the Movie”では、「やしま」がこの巨大な船体で、あろうことか隅田川を溯上して封鎖するというとんでもないことをしていた・・・ような気がする。
ちょうど一般公開されていたので、乗り込んでみることにした。
舷側のラッタルより乗船、針路にそって船内を歩く。
この一般公開は、船内を自由に歩けるものではなく、進路が決まっていてそのルート上を歩けるようにしただけのものだった。
しかし、さきほどまで「はたかぜ」にいたため、両者の違いがよくわかる。
巡視船が軍用規格ではないというのは、なにも装甲の有無だけではないようだ。
(写真撮らずに黙々と通路を歩いてしまったので、写真ありません)
まず通路。
幅が広い。
天井が高い。
床が緑色の人工芝(毛の短いヤツ)。
ラッタル(階段)。
はしごではなく、ちゃんとした階段。
角度がゆるい。
手すりが木製。(自衛艦では可燃物を減らすため、手すりも鋼製)
部屋。
1~2名の個室。(自衛艦ではほとんどの乗員が12~30名で一部屋)
ドアも木製。
さすがに客船ほどではないが、自衛艦から比べると明らかに豪華。
居住性はダントツでこっちのほうが上。
勤務するなら海自より海保だな。
被弾したらあっさり燃え上がりそうだけど。。。
4階層ほど登って、船橋(ブリッジ)に出る。
そこは、先ほどの「はたかぜ」と同時代に建造されたとは思えないほど洗練された空間だった。
これは、トップ、艦橋、CICの命令を受けて操縦室で操艦する自衛艦と違い、基本的にはここで操船に関するほとんどのことを行うためで、「はたかぜ」でいう操縦室も、「やしま」ではブリッジに併設されていた。
「やしま」ブリッジ
白いハンドルは舵輪。
回すと、パネルのPORT(Port=取舵=左舷回頭)やSTBD(Starboard=面舵=右舷回頭)のLEDが点灯する。調子に乗ってグルグル回すと、LEDのレベルゲージがオーディオのイコライザーのように伸びていく。声を出すのもこっ恥ずかしいので、心の中で「Hard a Port!」(取り舵いっぱい!)、「Full Starboard!」(面舵いっぱい!)などと念じながらグルグル回していた。
小さな男の子が舵輪に熱い視線を向けていることに気付いたのは、1分くらい経ってからだった。。。
・・・・・・(見つめあう目と目)
何食わぬ顔で舵輪の前から離れ、ブリッジから前甲板を見下ろす。
艦首よりに35mm機関砲が1門、その後ろ一段高い場所に20mm機関砲が1門。
手前:20mm機関砲 奥:35mm機関砲
35mm砲、20mm砲ともに無人砲塔。
操作は、RFS(Remote Firing System)を通じて、ブリッジ後部のOIC(Operate Information Center)で行う。
いずれにしろ護衛艦でハープーンや127mm砲を見てきた直後なので、35mmや20mmといえども豆鉄砲にしか見えない。。。
ちなみにOICは軍用艦艇のCIC(Combat Information Center)と区別をつける名称だが、プルトニウム輸送護衛用に建造された海保最大の巡視船「しきしま」や、前述の「あそ型」「ひだ型」にはちゃっかりCICがあるところが抜け目ない。
いたっきいの予想だと、あと20年後にはCICの有無どころか、自衛艦と巡視船は船体が共通化され、同じデータリンクシステムで運用されると思う。工作船騒ぎのときの連携のまずさは期待を裏切らなかったし、事実、海自と海保は最近になってようやく艦載ヘリを共同運用する訓練をやり始めている。
後部のヘリ甲板に移動する。
「はたかぜ」のような“一応ヘリも運用できまっせ”レベルではなく、広大な発着甲板と、2機のヘリが余裕をもって収容できる大型の格納庫があった。
甲板上にベル212が1機タイダウンされていた。「やしま」固有のヘリはベル212が2機のはずなので、1機は(おそらく邪魔だから)基地に置いてきたのだろう。
そのうちベル412か、S-76に取って代わられる機体だが、あまり古さを感じない。機首下部についているのは、捜索救難用のFLIRだろうか?
この機体の右舷側には、救難用のホイスト一式が付いていた。
後部キャビンを素通りできたので、通りすがりに一枚。
機内は非常にシンプルで軽量化されているが、シートがここまでペラペラだとは思わなかった。ライフジャケットその他を着けると気にならなくなるのだろうか?
後部ヘリ甲板には「-LIMIT OF LOVE- 海猿」の横断幕と、ウェットスーツを着てアクアラングを背負った海保隊員が数名いて、記念撮影に応じていらっしゃった。・・・が、これは撮ってない。
つかね、なにが悲しくて半裸のヤローどもに熱い視線を向けなければならんのか。
つーことで、写真はナシ。(ベル212のコクピット写真にチラッと写っているが)
なお、某シーモンキーにでてきた「かいこう」や「ながれ」という船は存在しない。
ちなみにいたっきいは「かいこう」と聞いたとき、コレを思い浮かべてしまった。
海洋研究開發機構の無人探査機「かいこう」
他人から「海猿」のあらすじを聞いたとき、なんでコレ↑に転属されるの?って思ったものだ。これ無人だし。
このとき日の出埠頭で、これも毎年恒例の行事になりつつあるアレが始まった。
航空自衛隊静浜基地のT-3 jr.である。
「やしま」のヘリ甲板はまさに特等席。
海猿兄ちゃんたちに背を向け、原付を撮るには明らかにオーバースペックなカメラで激写する。
ん!? 3機はすでにT-7に機種更新されている!
芸が細かいなぁ。(;^_^A
写真では分かりにくいが、このT-3とT-7、ブルーJr.よりも機体の工作精度が高い。機首のプロペラはスムーズに回転するし、ちゃんとターボプロップのエンジン音も出る。
このT-3Jr.とブルーjr.、実はファンが多いのかプラモデルも発売されている。
ブルーJr.といい、T-3Jr.といい、いったいどの層をターゲットにしたんだろう?
これが売れたらT-7Jr.も作るんだろうな。。。
ここからひとしきりT-3Jr.&T-7Jr.混成編隊の妙技を見物し、下船した。
ウェットスーツの兄ちゃんたちは写真撮ってほしそうにしてたが、無視した。
だからといって「海猿」がキライというわけでもありません。原作は以前から好きでしたから。。。
でも、この映画は外国ではコメディ扱いされているくらい、現実感に乏しいらしい(たとえば、一刻を争う事態なのに長々と携帯でプロポーズしている・・・)のです。うーむ。観るべきか、観ざるべきか。(´ゝ`)
「某イージス」や「某ローレライ」のように、原作からして現実感がなく、もう○井の小説は二度と読まねえ!ってくらい失望するんだったら、かえってエンターテインメントなんですが。<しかしこの二つは観た。
お陰様で...
ブルーJr.とT-3Jr.のプラモを買う気持ちに整理が付きました!
買うど~!
T-3Jr.&T-7Jr.?!も飛行されたんですね!
甲板からの光景、いいですね♪
私も思わずプラモが欲しくなってしまいました!
■ichirouさん
・・・って買うんかいな!ヾ(^^ヘ)
T-3Jr.のプラモは、パイロットを乗せていないとき、キャノピーを載せておくこともできるようですね。実物のJr.もやってもいいのに・・・って思いました。
■仮眠ライダー55さん
スマートな船型、船首に武装、後部にヘリ格納庫とヘリ甲板。グレーに塗ったらそのまま自衛艦になりそうな「やしま」の船影ですが、白い船体と、舷側に青で書かれている「JAPAN COAST GUARD」の文字が、かえって凛々しさと優美さを醸し出していましたよ。
今回は絶妙の位置に停泊していた「やしま」のヘリ甲板からT-3&T-7Jr.を見下ろせましたが、実はブルーJr.を見下ろせるイベントもあるんですよ( ̄ー ̄)ニヤリ
いたっきいがブルーjr.を運転したのも、そのイベントのときでした。
近々ブログで紹介しますね。