アクロ三昧！(MCAS岩国 Friendship Day) Vol.2

午後。

日焼け止めの塗りがあまかった部分がヒリヒリしはじめ、己の詰めの甘さ
に軽く舌打ちしながら、リブアイステーキサンドとは別に用意していた
弁当を食べていたそのとき。

ブルーインパルスのショーの、オープニングの音楽が聞こえてきました。
いよいよブルーのショーの始まりです。

ブルーの統率のとれた動きは、ウォークダウンから始まります。
全機一斉のエンジンスタート。
全機一斉のキャノピークローズ。
全機一斉のランディングライト・オン。

　

準備の整ったブルーは、一番機から順にタキシー・アウトしていき、ラン
ウェイエンドでこれも一斉にスモークチェック。
準備が完了し、まずは１～４番機のダイヤモンド・テイクオフ＆ダー
ティ・ターンです。

　

４機がダイヤモンド隊形を組み、ギアダウンのまま270度のレフトターン。
会場正面でスモークオン。観客の上空を低空低速で飛びぬけていきます。

続いて５番機のローアングルキューバン。
離陸直後、ギアアップ。地面効果を利用しながら高度２，３ｍの超低空を
維持し一気に加速、そのままインメルマン・ターンを行い戻ってきます。

　

５番機がＲ／Ｗ上空に戻ってきたとき、６番機が離陸滑走を開始。
離陸直後にロールをうつ、ロールオン・テイクオフを行います。
６番機が去ったその直後には、速度を上げた１～４番機が緊密な編隊で会
場に戻ってきます。

　

このファンブレイクは、飛行位置が観客に近く、編隊の密度も高いため
に地味ですが印象に残る課目です。

ファンブレイク終了後、それを追って５番機が会場に進入、４ポイント・
ロールを実施します。

　

５番機が去ったその直後、１，２，３，４，６番機によるチェンジ・オー
バーターンが行われます。
続いて５番機単独のインバーテッド＆コンティニュアスロール、さらに
１，２，３，４，６番機でのレインフォールと続きます。

　
（飛んでる飛行機を撮るのに脚立は不要です。やめましょう）

ここで６番機は編隊より離脱し、次の単独課目に備えます。
続いて５番機がバーティカル・クライムロールを実施、その後先ほど編
隊より分離した６番機がスロー・ロールを行います。

　

５番機、６番機の演技の間に、大きく開いた隊形をまとめなおした１～４
番機が会場後方より進入。チェンジ・オーバーループです。

　

このように、ブルーのショーは観客から見えない時間を極限にまで縮める
ように工夫されていて、まさに「息をつかせぬ」構成になっています。

各機は、ソロ、２機、３機、４機、５機、６機全機と、次々に編隊を組み
なおして演技を行います。観客から見えない位置での空中集合をピタリと
決めるこの一事からも、ブルーのパイロットの技量の高さが感じられます。

　
　４機での課目、４シップス・インバート

　
　５機での課目、ワイド・トゥ・デルタループ
（前列で脚立に乗ると他の人に迷惑です。やめましょう）

　
　ソロ２機での課目、タック・クロス（パターン１）

　
　ブルーの華麗な姿を写真に収めようと、演技にあわせて動く
　レンズ群・・・を写真に収めようとしたのはいたっきいだけ？
（脚立の上で大きなレンズを扱うと危険です。やめましょう）

　
　ラストミッション、ソロ２機でのコークスクリュー

約20分間、第一区分26課目のショーを終え、全機無事に着陸。
全機ランプインののち、ウォークバックを行い、ショーは終わりです。


いやぁ～よかったよかった・・・と、通常の航空祭ではそろそろ帰り支度
をはじめるところですが、岩国ではまだフライトが続きます。

次は、米海軍VFA-102“DIAMONDBACKS”の F/A-18F スーパー・ホー
ネットによるデモフライトです。

F/A-18E/Fは従来のF/A-18C/Dと外見こそ似ているものの、全長で約１ｍ、
全幅で約２ｍ大型化され、電子機器やレーダー、エンジンも従来型とは違
うものを搭載しています。そのためE/F型とC/D型の共通点は10％ほどしか
なく、その機動性に至ってはまったく別種の戦闘機と言えます。
ちなみにF/A-18E/Fの非公式の愛称は「ライノ」です。

　
　VFA-102のF/A-18F
　艦載機だけあって、脚の太さは陸上戦闘機とは比較にならない。

　
　軽量戦闘機のイメージはもはや微塵も感じない

　
　機首から主翼に続くストレーキがやけに太く感じるライノ

　
　背面でも精悍な印象のライノ。角度によっては、フランカー
　シリーズに近い形にも見える

　
　ギアダウン、フックダウンでバンクするライノ
　ステルス性向上のため四角く整形されたエアインテークに
　微妙な角度がついているのが分かる

　
　高いAOAで超低速飛行をしたあと、そのままバーナーオン！
　F414エンジンの圧倒的な推力で強引に上昇していく

このF/A-18E/Fは、航空自衛隊のF-4EJ改ファントムの後継機種候補と
して挙げられています。候補機種の中で、本命はこのF/A-18E/FとF-22な
のですが、日本の国防上最も望ましいのはF/A-18だと思います。

だって、対領空侵犯措置にステルス機が要りますか？
国土を海に囲まれた国で、対地・対艦攻撃能力のない機体と、マルチロー
ル・ファイターのどちらが有利ですか？
機体が高度にブラックボックス化され、日本で整備できない部品が組み込
まれた戦闘機に頼り切ってもいいですか？

F-22は単機での戦闘能力こそ無敵なのですが、システムの一部として運用
するには無理が大きすぎる機体です。今の戦場は一対一の戦闘ではなく、
システムとシステムのぶつかり合いですから、柔軟に運用できる機材を投
入するのが望ましいのは素人のいたっきいでも分かります。

この後継機種選定、いったいどういう結論が出るのでしょうか？
今後も推移を見守っていきましょう。



さて、岩国航空ショーの最後を飾ったのは、チームディープブルース
のSu-26MXでした。本日２度目のフライトです。

戦闘機ファンの目には、小型のプロペラ機の飛行など大したことのないよ
うに映るかもしれません。
しかし、大掛かりな地上の支援設備を必要とせず、軽やかに舞い上がり、
常に観客から見える位置を飛び、重力を感じさせないフライトは戦闘機に
は絶対にできないものです。戦闘を行う機体が、実戦では役に立たないア
クロを無理に行うのと違い、こちらはアクロ専用機なのです。

またパイロットがあくまでも民間人であるという点、我々には手の出せな
いジェットエンジンではなく、自動車などと同じピストンエンジンで飛ん
でいるという点、コンピュータが飛行に介入していない点なども、アクロ
機を身近に感じる理由の一つでしょう。

　
　離陸前、厳しい表情で入念に機体をチェックする室屋氏

パイロット室屋氏の腕は、ここ数年メキメキと上昇しています。
今年のフライトを見ると、特にユルギス・カイリス氏の影響を強く受け
ているのが分かります。演技と演技の合間をひたすらロールしてつなぎ、
観客に息つく隙を与えないあたりが、ユルギス氏に似てきました。

　
　エンジンカウル？を閉じ、暖機運転中のSu-26MX

また、不完全ながらもコブラやスモールループを積極的に取り入れる
など、新しいことに果敢に挑戦するその姿も好感が持てます。
見るたびに完成度が上がってく・・・そんな印象を受けます。

　
　ナイフエッジ・ローパスを行うSu-26MX
　できる限りＧの影響を少なくするため、機体の中央にコクピットがある

　
　演技を終え、コクピットから降りる瞬間に見せた笑顔
　この自然な笑みが、フライトの充実感・満足感を物語っている

スホイの着陸とともに岩国フレンドシップデーのすべてのフライトが終
了しました。

しかし、岩国での楽しみはまだ終わりません。
観客が我先にと帰り始めるため、日持ちしない食材を扱う屋台では在庫
処分のたたき売りが始まります。うまくすればお土産も安く手に入れら
れるのです。

また、いつまでも観客を追い出さない岩国では、地上展示機の周りも
いつの間にかこのとおり。

　
　在韓米軍のA-10A

　
　XUS-2、2号機をスケッチする年配の方
　こんな航空祭の楽しみ方もあるのか・・・

大半の観客が先を争ってクルマに向かい基地を出るので、17時過ぎに
はご覧のとおりガラガラになります。
このあとゆっくり駐車場に向かい、基地から出るときには完全に渋滞解
消していました。大渋滞のメッカ岩国も、うまくすれば渋滞と無縁で
いられるのです。

これまで通算で10回近く通った岩国基地フレンドシップデー。
ここでの過ごし方もパターンが決まり、余分な労力を全く使わなくなり
ました。
岩国は、今後厚木の海軍航空施設の移転も控えており、これからもっと
派手な航空ショーになってくるかもしれません。

個人的な目標でいえば、来年はリブアイステーキサンド２枚食い
に挑戦したいと思っています。







・・・てか、なにが主目的か分からなくなってきた。。。