一庵 (ひとつあん)

飛べないライター『いたっきい』の愚行をさらしています。

※普段ハtwitterニ居リマス。

山岳ガイド (富士登山1)

2006-08-20 | 旅行・見学

 

標高2,355m。

この高度で4時間半の仮眠をとった。
こうして低気圧に体を慣らすことが、これからの行動に大きく影響する。

気温13℃、ほぼ快晴。
ここは静岡県富士市、富士山「富士宮登山口」五合目。

これから登るのは、毎年30万人もの登山者が挑む山、霊峰富士。
いたっきいは過去に5回登頂しており、今回が6回目。
いたっきいが毎年富士山に登っていることを知っている同僚が、(富士登山のガイド役として?)一緒に行かないかと声をかけてきた。
もとよりいたっきいに異論はない。
いたっきいと煙は高いところに上りたくなるものなのだ。

 
 06:57 2,355m 五合目駐車場より愛鷹山(南南東)を望む

ノースフェイスの帽子、モンベルのサングラス、ミズノの長袖速乾シャツと速乾性の下着、腕にはコロンビアのグローブをはめ、レキのストックを持つ。足にはワコールCW-X、モンベルの半ズボンにミズノの靴下、シリオの登山靴。
これでもかと言わんばかりのスポーツブランド、アウトドアブランドで固めた身に、ミレーの35リットルザックを背負う。

ザックの中は、次のとおり。

・レインウェア上下
・ウィンドブレーカー
・長袖シャツ
・替え用下着
・エマージェンシーブランケット、テーピング、バンドエイド、
 包帯、消毒薬、頭痛薬や化膿止めを入れたファーストエイドキット
・ツェルト
・ガスバーナー+ガスカートリッジ(寒冷地用)
・コッヘル、箸などのブキ(=武器=登山用語で食器のこと)
・水2.5L
・スポーツドリンク500ml
・おにぎり3個
・カップ麺1個
・コーヒー、ココア、チョコレートなど嗜好品
・水溶性ティッシュ
・ゴミ袋
・デジカメ
・ハンディGPS

以上。総重量は10kg近くに及ぶ。

 
 06:57 2,380m 五合目 傘のかかった富士を見上げる

日帰りの山行にしては過剰ともいえる装備を携行し、同僚と3名のパーティで臨む今回の富士登山。
パーティの1名は女性。彼女にとって初めての本格登山。それもいきなり気圧の低い富士。さらに普段運動することがない。。。と、三拍子揃っている。
もう1名は男性。昨年も一緒に登頂している。若いし、実績もあるからこちらはそれほど心配はしていない。

不安材料はこれだけではない。
九州と北海道に低気圧が居座り、関東・東海地方もいつ天候が悪化するか分からない状況なのだ。今のところ天候は安定しているが、10分後にどうなっているか分からない。5年前の7月に登ったときには、それまで快晴だった空があっという間にミゾレまじりの雨風に変わったこともある。
お盆で登山者も多く、ペースが作れないかもしれない。
高山病の症状が出るかもしれない。
心配のタネは尽きない。

しかしそのときはそのとき。
緊急時の備えも用意している。
とにかく同行者の調子を気遣いながら登ろう。

 
 07:03 2,420m 六合目に向かう

ほぼ真横から突き刺さる朝日を浴びながら、六合目に向かう。
同行者のペースがやや早い。
いや違う。周りの登山者のペースも早いのだ。ヾ( ̄o ̄;)ハヤイッテバ
このペースでは山頂までもたない。
はやる気持ちはわかるが、ここは基本に忠実に。
小さい歩幅でペースを作っていこう。

 
 07:12 2,500m 六合目「雲海荘」「宝永山荘」のテラス

少し早すぎるほどのペースで六合目到着。
さっそく暑くなり、上着を脱ぐ。
富士登山はここからが本番。
傾斜もきつくなり、道幅も狭くなる。
気合を入れなおす。

この日の御殿場の天気予報は「曇り時々晴れ」。
眼下は見渡す限りの雲。
天気予報どおり。
しかしこちらはすでに雲の上に出ているため、予報はあまりあてにならない。

 
 07:50 2,750m 六合五勺付近より御殿場(南東)方面

六合目以降は、つづら折りの登山道を黙々と登るだけ。
足元は、砂礫、岩石、土とバラエティに富む。
森林限界を超えている登山道は、岩の性質もあってもろく、足が滑ることも多い。
ジリジリと照りつける陽光の中、できるだけペースを乱さないように注意して登る。このあたりまでは同行者のペースに合わせて登っていった。

 
 07:57 2,790m 新七合目「ご来光山荘」に到着

新七合目は休まず通過。
眼下は雲。
なかなかいいペースを維持しつつ、つづら折りの坂をひたすら登る。
周りの登山者を追い抜くことが多くなった。
(山頂と五合目を1日1往復しているブルにはあっさり抜かれたが。。。)
まだ空気の薄さを感じる高度ではない。

自衛隊、東富士演習場から実弾射撃の音が伝わる。
富士総合火力演習に向けた事前演習である。
特科(榴弾砲)、機甲科(戦車・装甲車)の発砲音にはそれぞれ特徴がある。
「お!99式155mm自走榴弾砲!同時弾着射撃!」
「お?この発射間隔は87式偵察警戒車の25mm機関砲!」
富士宮口からの登山は別の意味でも満足度が高い。<お前だけな(^▽^;)

 
 08:06 2,840m 新七合目→元祖七合目

同行者のペースが落ちてきた。
上半身が前のめりになり、ストックにもたれかかっている。
けっこうツラそう。
ここからはいたっきいが先行してペースを作ってあげよう。
(ペースを作るのはけっこうつらいので、あまりやらない)

 
 08:24 2,920m 新七合目→元祖七合目

頭上は青空。
こんなに広く青い空は最近見ていなかったなあ。
遠くに元祖七合目、「山口山荘」が見えている。
はじめて登った人は、新七合目の小屋を過ぎたとき「次はあそこに見える八合目だ!」と頑張るが、たどり着いてみるとそこは「元祖七合目」。。。
愕然とし、苦笑し、詐欺だ責任者出てこい!と冗談交じりに呪う。
ちなみにここ(新七合目)は、登山マップによれば六合五勺と書いてある。

 
 08:36 2,970m 新七合目→元祖七合目

突然、雲の塊がやってきて周りを包み込む。
一服の清涼剤。
いたっきいはこれを勝手に「フリーザー」と呼んでいる。

 
 08:56 3,030m 元祖七合目「山口山荘」

標高3,000mを越えた。
ここからは酸素の薄さを感じる高度。
ここではじめて荷物を降ろし、長めの休憩をとる。
チョコレートで血糖値を上げ、水で口を湿らせる。
しかし、長時間座って休憩をとると、体が冷え疲労の元にもなるため、早々に行動再開。
GPSのログによると、休憩したのは10分ほどだった。
ここから八合目までは、ペースをほぼ一定に保ちノンストップで登る。

09:25、八合目到着。
ここで20分の休憩。
高度に体を慣らしておくと、ここから先がラクになるのだ。
ここは標高3,230m、すでに日本で二番目に高い山(北岳:3,192m)よりも高い場所に立っている。

八合目から九合目にかけてもノンストップ。
標高2,800m地点から一定のペースで歩き続けている。
今回のパーティもなかなか優秀?だ。

10:07、九合目に到着。

 
 10:30 3,405m 九合目「万年雪山荘」のテラス

九合目で再び休憩。
山頂「剣ヶ峰」との標高差は約370m。歩行時間にすると1時間ほどだ。
正午までに登頂できる目算が立ったことになる。
あとの疲労を考えれば、ここでゆっくりしても問題はない。

たっぷり20分ほど休んで出発、九合五勺までは再びノンストップ。
ペースがうまく作れているため、意外と疲労は少ない。

 
 11:05 3,550m 九合五勺「胸突山荘」より山頂を望む

九合五勺から見上げる空は、うろこ雲。
形を崩さずに流れていく。
酸欠によるめまいか?形を保ったままダイナミックに流れていく雲を見上げていると、足元がフラついた。

 
 11:12 3,600m

いよいよ山頂が近い。
このあたりからがまた試練。傾斜がキツくなる。
歩幅の合わない段差。
狭い道幅。
下山してくる人とすれ違うスペースがないところも多い。
しかし、山では登り優先。できるだけペースを崩さずに登る。
ここまで来たら最後まで立ち止まらない。一気に登り切る。

 
 11:12 3,600m 御殿場方面(南東)を望む

さっきまですぐ下に見えていた雲が、今では遥か下にある。
この圧倒的な高度感は、富士以外の山では味わえない。

雲間に見える黄緑色の土地は、自衛隊東富士演習場。総合火力演習もクライマックスをむかえているようで、この高度からでもドンパチの音が聞こえている。

 
 11:33 3,710m 山頂鳥居

山頂到着。
山頂鳥居は、登山道の中央にあるわけではないが、ほとんどの登山者が巡礼のようにここをくぐっていく。
いたっきいが富士山頂の鳥居をくぐって登るのは、6度目になる。
今回も無事に登りきることができたようだ。

 
 11:36 3719m 浅間大社奥宮

日本最高所の神社、浅間大社奥宮。
無事の登頂を感謝し、下りきるまでの無事故を祈願し、健康を祈願し、知り合いが翌日受ける資格試験の無事合格を祈願し、最後に今年下したある決断が実りのあるものになることを祈る。

・・・え?ずうずうしい?
大枚千円はたいたし、4つくらいの願いはいいでしょ? @250-

 

続く 

 


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4 コメント

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ほうほう… (どんちゃん)
2006-08-23 09:34:36
こんなのも趣味なんやね(^^)

実はおいらも少し富士登山の話が出てる…

まだ全然現実的な話じゃないから聞き流してるけど…(笑)

写真を見てると、一度くらい行ってみてもイイかなって思うよ!

(一度行ったら癖になるのかな?)



 しっかし、一つ気になるのが…





やぱ、願い事多くね?(笑)
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Unknown (仮眠ライダー55)
2006-08-24 00:25:55
富士の事前演習聞きながらの登山、いいですね♪

食器のことをブキというのですか、それにしても10キロの荷物とは!お疲れ様でした!

山頂に立った時はさぞかし気持ちいいのでしょうね

本当に素晴らしい景色で、目が喜んでいます~☆
返信する
Unknown (ichirou)
2006-08-24 21:30:34
富士登頂とは素晴らしいですね~!

しかも日帰りとは凄い!



自分も50歳までには登ってみたいです。

30歳までには…断念

40歳までには…断念

という経緯がありますが…意志の弱さ暴露(汗



今の体力では登れたとしても下りれましぇんな(涙
返信する
最高の眺望でした (いたっきい)
2006-08-29 02:50:50
今回同行した同僚2名は、翌月曜日におかしな歩き方をしていました。普段使わない筋肉を酷使した代償ですね。

いたっきいも少し足が張りましたが、月曜日には普段どおりでした。「昔とった杵柄」ってやつでしょうか? まだイケるようです。



■どんちゃんさん



お!富士登山、来年いきますか!?

(晴れれば)すばらしい眺望が見られますよ。

やっぱり日本人なら一度は行っとくべきかと。。。



>やぱ、願い事多くね?(笑)

あ、やっぱりそう思いますか?(;^_^A

でも大丈夫。いつもそんな感じだから、神様もテキトーに聞き流してるに違いないです。



■仮眠ライダー55さん



食器をなぜブキと呼ぶのか不明ですが、製品名にもそういうのがあります。

たとえばスノーピークの「和武器」。

http://www.snowpeak.co.jp/catalog/spo/index_cutskit.html

たなぜステンレスにしてるのか意味の分からない箸なんですが・・・



今回準備した荷は、テントとシュラフが入れば山に篭ることのできるチョイスです。

日帰り富士登山にしては余分な荷物が多いのですが、体力にはまだ余裕があるのでとりあえず持って行っちゃいました。

最近はあまり山に登らないので、たまに山に行くとなると張り切っていろいろ詰め込んじゃうんですよね。



山頂からの景色は本当に素晴らしいものです。

下から見上げてドキドキする山は、頂上から景色を見下ろしてもドキドキします。

いたっきいが何度も富士登山をするのも、このダイナミックな景観があればこそかもしれません。



■ichirouさん



いたっきいは泊まりの富士登山をしたことがありません。富士山の山小屋は混むから・・・というのがその理由です。

5合目でしっかりと高度に体を慣らし、天候の安定している間にサッと行くと案外疲れません。

挑戦されるなら、ご同行しますよ!

・・・って、こうして毎年富士山に登ることになるのですがw
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