ミケマル的 本の虫な日々

『日本奥地紀行』


 『日本奥地紀行』  イザベラ・バード著 高梨健吉訳

 1878年(明治11年)にイギリスの女性、イザベラ・バードが日本人の通訳一人を連れて、東京から日光を経て東北地方を縦断し、さらにエゾ(北海道)も旅をした。その手記(妹への手紙として書かれている)がこの『日本奥地紀行』です。

 なにしろ、明治になったばかりの日本には、鉄道などの移動手段が無く、人力車と馬と徒歩による旅なのですが、この年はやたらと雨が降ったらしく、整備されていない道や氾濫した川が旅をさらに困難にしたようです。

 当時の日本の様子を、著者が見たまま、感じたままを書いているのですが、特に東北の農村や山の中の小さな村の人々の様子は、今の日本に住む私には、衝撃的というべき姿です。江戸や明治の様子は、スポットの当たっているところは都会や政府や文化を担っている人々の生活で、底辺の(多くの)人々の生活はなかなか記録されないものなのだなと改めて感じました。

 日光東照宮や日本の風景について、非常に細かく描写されていると共に、彼女はとても気に入ったようです。その他の日本の農村や日本の人々、アイヌの人々の様子もいろいろと書かれており、ほめている事もいやだといっている事もあります。日本人としては、そこは違うだろと思う部分もあるけれど、彼女の公正に評価しようとしている姿勢がわかり、とても正直に書いているので、素直に読めます。

 それはともかく、彼女の不屈の精神と肉体には感服しました。もともと、病弱だったので医師から勧められたのがきっかけで旅行を始めたらしいのですが、とてもじゃないけど健康に良いとはいえない旅行を決行して成功させているのですよ。背骨が悪いらしいのに調教の良くない馬に乗ったり、雨で常にぬれながら旅をしたり、蚤や蚊に刺され(とにかく当時の日本の農村は蚤だらけだったらしい)、食べる物は慣れないものばかりという状態でも、決してあきらめずに旅を続けるのです。本当にすごい

 北海道では、アイヌの人々の生活も詳しく描写しており、明治の初期には多くのアイヌの人々が自治を守っており、文化も人口も保っていたことがわかります。

 とにかく、長い紀行文ですが、まったく飽きずに最後まで読めました。日本人の通訳を一人つれただけで、ヨーロッパの人が行ったことのない土地へ女性が一人で行くという事は、とても勇気がいることだと思うし、その状態でも、全く身の危険を感じる事無く過ごしていられる治安の良さもすごいと思いました。

 いろいろと驚き、興味深い本でした。イザベラさんはすごい

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