ミケマル的 本の虫な日々

『あの本は読まれているか』


『あの本は読まれているか』
 ラーラ・ブレスコット著
 吉澤康子訳




 ロシアがソ連だった頃のスターリン時代、冷戦時代の東側(ソ連)と西側(アメリカ)の女性達を描いている小説。
2020年海外ミステリ最高の話題作とあったので、読んでみました。

 有名な「ドクトル・ジバゴ」がソ連の厳しい弾圧下でボリス・パステルナークによってこんな風に書かれ、人々が読めるようになったのかという事も初めて知りました。
その「ドクトル・ジバゴ」という本をめぐってソ連の女性とアメリカの女性のそれぞれの苦難や葛藤、その中でも自分を切り開こうという姿がひしひしと伝わるお話です。

 私は「ドクトル・ジバゴ」は映画で見たことしかなくて、原作の本を読んだことがありません。映画は美しく、哀しく、素晴らしいものでした。
この本を読んで、原作も読まなくてはと思うようになりました。

 この本を書いた著者の名前もラーラさんなのですが、彼女のお母さんが「ドクトル・ジバゴ」の大ファンで娘に主人公であるラーラという名をつけたそうです。
それもあったのか、2014年にCIAの機密であった「ドクトル・ジバゴ」に関する資料が公開された事によって、この本を書く事になったそうです。
 資料は黒塗り部分もあり、固有名詞などは隠されていたので、この物語は様々な資料から導き出したフィクションだそうです。しかし、読んでいると、フィクションであるけれども、ノンフィクションでもあるように感じました。

 この本の原題は「The Secrets We Kept」です。
私たちが持っている秘密、という感じかな。
私たちというのは、この本に出てくる女性達を指していて、この本の内容はまさにこの題名って感じです。
なので、邦題の「あの本は読まれているか」のイメージはちょっと内容と違う感じがしました。
この前の村上さんの訳した「グレード・ギャツビーを追え」は内容にバッチリだったけれど、この本はちょっと違うかなと思ったので、題名の印象って大切だし、邦題の付け方は難しいなと思いました。


 

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