今年の松本清張賞を受賞した本ということで、読んでみました。幕末の江戸を舞台にした話です。あまり有能でない奉行所勤めの同心が主人公が、思いもよらず歴史的事件に巻き込まれていくという、ありがちな話なのですが、いやみの無い文章で、面白くよめました。
話のスジも悪くないのですが、なによりも興味深かったのは「朝顔」です。この主人公の同心が勤めよりも熱心にしているのが、「朝顔の栽培」なのですが、この朝顔が中心となって話しが進んでいくわけです。私は、江戸時代にこんなに朝顔栽培が盛んに行なわれていたことを知りませんでした。東京の下町では、今でも朝顔市が行なわれているのですが、私はあさはかにもなぜ誰でも作れる朝顔をわざわざ売ったり買ったりしているのだろうと思っていました。
実は、江戸時代には、さまざまな交配を行なって、変わり咲き朝顔と呼ばれる突然変異を利用した変種の朝顔の栽培がとても盛んに行なわれていたそうです。夏の早朝には、品評会や朝顔市が行なわれており、その名残で今でも朝顔市が行なわれているのでした。そうだったのね 江戸時代の後にも明治時代から戦前にかけて、何回か朝顔ブームがあったらしいです。
この本の中で、いろいろと変種の朝顔の説明があるのだけれど、よく分からないので、参考図書として出ていた『江戸の変わり咲き朝顔』渡辺喜孝著、『アサガオ 江戸の贈り物』米田芳秋著、『色分け花図鑑 朝顔』米田芳秋著を、 県立図書館で借りてきて、見てみました。いやー、すごいです、朝顔 本によると、メンデルの法則を知らずして、江戸の人々は交配と突然変異の妙を行なって、さまざまな葉や花や茎の形を作っていたそうです。
プロの植木屋だけでなく、この本に出てくるような、武士や商人などのアマチュアも、非常に熱心に栽培を行なっていたようです。この主人公などは、今で言えば立派な「アサガオおたく」です。
小学1年生の夏休みに観察日記を書くという、最も失敗のない、そしてとても身近な植物でもある朝顔に、こんな一面があったのは以外な驚きだったので、来年は久しぶりに種を蒔いてみようかななどと思いました。
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