ミケマル的 本の虫な日々

秋の気配 長塚節の歌


やっと少しだけ秋らしさが出てきて、夜になると庭で秋の虫が鳴くようになりました。

この季節になると思い出す歌があります。

一つは有名な古今集の歌

 秋来ぬと目にはさやかに見えねども
     風の音にぞおどろかれぬる 
          藤原敏行『古今集』  
 
 少しずつ変化する季節は目でははっきり見えないくらいの時に、風や気配が変わって気づくっていう歌と勝手に解釈してます🤔
今ちょうど、台風が去って気温はまだ高いけれど、空気や気配が変わったな〜〜と思う時期。この歌は秋の気配が感じられる頃に毎年思い出すから、古今集の昔から四季の感じ方って変わらないんだな〜〜と感心させられる歌です。


そしてもう一つ大好きな歌

 馬追虫(うまおひ)の髭のそよろに来る秋は
    まなこを閉ぢて想(おも)ひ見るべし
                    長塚節

 長塚節のこの歌がとても好きです。

 明治の歌人、正岡子規の歌を中学校の教科書で知って、それから彼の病気を持ちながら歌を作り続け、沢山の友や弟子と交流し影響を与えた生き方を尊敬の念を持っています。

その子規の弟子の一人が長塚節(ながつか たかし)です。

    


この歌も教科書に載っていたのか、当時の国語の先生が関連としてあげてくれたのか忘れましたが、印象深くてずっと残っています。

 長塚節も子規と同様に結核で若くして亡くなったのですが、その作品は今でいう透明感があって凛としたものを感じます。

 秋の訪れを鳴く虫の鳴き声でなくて、髭の揺れに感じるってなんて感覚はなかなか出てこないし、独特だと思う。「そよろに」っていう言葉がいいな〜〜。
そして、なんだか光景が浮かぶように思うのです。

馬追いはうちの庭でも鳴いていた時があったのですが、鈴虫のように静かでなくて、「スイーチョン」と表現される鳴き声で結構な音量でびっくりしました😉


そして、長塚節のこの歌もとても好きです(これは冬の歌ですが)

 白埴《しらはに》の 瓶《かめ》こそよけれ 霧ながら
     
朝はつめたき 水くみにけれ
            長塚節 『鍼の如く』

 寒い時期に霧の中、井戸に白埴の瓶を持って水を汲みにいく。
風景が目に浮かぶような素敵な歌。
この歌を作った時には、もう病気が進行していて、わざわざ九州の病院まで治療に行っている時だったようです。そのまま病院で亡くなってしまったのですが、その病院を紹介したのは夏目漱石で、漱石は長塚節の才能を愛していたようです。

 
 今年の秋はうちの庭で馬追虫が鳴くかしら?
馬追虫でなくても、秋の虫が鳴いている時にはたまに目を閉じて秋を感じてみよう😉



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