ミケマル的 本の虫な日々

9月の読書(2) 『さようならビタミン』など


 9月の初めに読んだ三冊です。

『ロング・ウェイ』小手鞠るい著
『さよならビタミン』レイチェル・コン著 金子ゆき子訳
『ブラックウェルに憧れて』 南杏子著






『ロング・ウェイ』
 この本は二階の本棚再読シリーズ。
 10年くらい前に読んだ本です。

 家族の物語なのだけれど、なかなか皆さん個性的です。
個性的であるがゆえの葛藤や苦悩もあるけれど、それぞれが一所懸命生きている感じをそれぞれの視点から描いていて、最後の結び方も良いなと思いました。
 どんな紆余曲折があっても一所懸命に自分を見つめて生きるって素敵だなと思った一冊です。
 本の装丁の絵がなんとも言えず良いなと思ったら、文庫本のあとがきで伊藤正道さんの絵で『僕への小さな旅』からお借りしたとありました。伊藤さんは残念ながら亡くなられたそうですが、色々なことを思い出すような素敵な絵です。

後の二冊は9月初めに書店で買った本。

『ブラックウェルに憧れて』
 ブラックウェルとはエリザベス・ブラックウェル(1821〜1910)世界で初めて医師として認められた女性だそうです。
イギリスで生まれ、アメリカに渡って1849年にジェニーバ医学校で女性として初めて医学学位を取得し、その後医師として働いたのちに、ニューヨークやロンドンに女性医学校を設立して女性医師の未来を切り開いた人。

 この小説は、4人の同級生の女性医師の女性医師としての迷いや苦悩、そして差別を書いています。昨今の医学部入試での女子差別問題もあり、医学界での根深い女性医師への差別意識の問題を根底に、4人のそれぞれの生き方をみると本当に大変だなと思います。
 医師の世界だけではないけれど、もともと時間的にギリギリで回している診療の実態があるので、医療の世界はさらに家庭や自分の時間を持つことがもともと難しくて、その点で女性には無理と言われがちなんだろうと思います。
でも、これからの時代には、男性女性関係なくきちんと人間的な労働にしていかないと医療が回っていかなくなると思います。
(医療ミスも疲労から来ることが多いと思うし)

 私が獣医師になった時代は獣医の世界も女性が少なかったけれど、今では女性獣医師が増えています。獣医師の仕事も医師の仕事も実は女性が向いている分野だと思うので、全体的な労働の仕方の改善を行って、女性医師も長く一生働けるようにして日本の医療のレベルアップができたら良いなと思いながら読みました。


『さようなら、ビタミン』
 この小説も若干医療に関係するお話。
ちょっと前から本屋さんで見かけていて迷っていたのですが、とうとう買って読みました😏
 主人公は婚約者から婚約解消を告げられて失意の中、アルツハイマー病にかかった父親の介護を手伝う事にします。
実家に帰って父の病気と向き合いながら、自分自身の気持ちも整理せざるを得ない環境。

 お父さんは大学教授だったのですが、アルツハイマーにかかったために離職した方で、その教子の提案で擬似授業を行う事になります。お父さんに取ってはとても意義のある事でした。
しかし、お父さんの病気になる前の飲酒や女性問題などもあり、なかなか難しい😅

 しかし、この本はそんな色々な問題があるにもかかわらず、ユーモアに満ちていて、軽やかで読んでいて暗い感じがしないのが素晴らしいと思いました。
主人公もそんな日常の中から自分の道を探していきます。

 それにしても、年齢がアルツハイマーになったお父さんが多分60前後で主人公が30代だから、今の日本の老人介護とは1世代ずれてるなと。
なので、介護する側の娘である主人公もお母さんもまだ若くて、この本全体の元気が良い感じはそこから来てるのかもと思ったのでした。
日本では60代が介護する方なので、こんなに元気にお世話できないな〜〜なんて感じました。

 でも、両親の介護が現実味を帯びてきた今日この頃、こんな風になったり、こんな風に接したりするのねと勉強になりました。実際になったらこのような前向きで明るい姿勢を貫くのは難しいかもしれないけれど、心に置いておこうと思います。

 
 
 

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