鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2022年11月4日号)
*北ICBM発射の裏側
昨日、北朝鮮がICBMを発射した。他5発の弾道弾が日本海に撃ち込まれた。Jアラート警報が出されたりして、大きなニュースになっている。それは、それでいいのだが、問題はその報道ぶりだ。
テレビなどでは、「米韓合同空軍演習に北朝鮮が反発して」と北朝鮮の主張をおうむ返しに繰り返している。これでは、米韓が挑発していることになり、北朝鮮がそれに反発していることになり、米韓が悪く、北朝鮮が正しいという図式が透けて見える。
北朝鮮は年初来、ミサイル発射を繰り返しており、米韓の実動演習が5年ぶりに復活したのは、北朝鮮の軍事活動の激化に対応したものである。実際には米韓が挑発しているのではなく、北朝鮮が挑発しているのだ。
産経新聞などは「北、米韓あおり責任転嫁」と正しく報道しているが、マスコミの多くは、北朝鮮の世論戦に敗けている。「ICBMは、途中で消失し、失敗だった」などという報道も北朝鮮の脅威を打ち消すのに一役買っている。
もちろん、ICBMが日本海上空で消失したのは事実だが、一段目ロケットの飛行は成功しており、2段目を故意に爆発させたと見るのが軍事常識だ。失敗と断定し、「北朝鮮は米韓の強大な軍事力に反発しているだけで、脅威ではない」という世論誘導であろう。
北朝鮮の大量の砲弾がロシアに供与されていることからも分かるように、今や北朝鮮とロシアは軍事的に緊密に結束している。年初来のミサイル発射はロシアがミサイル技術を供与している結果と見て間違いない。
つまり北朝鮮はかつての初歩的な核ミサイルの技術段階を脱しつつあり、核兵器大国になろうとしている。プーチンはウクライナでの核兵器使用を示唆して米国を恫喝しているが、実は東アジアでも北朝鮮に使用させると米国を恫喝していることになろう。
対する米国は前号「またも腰砕け!米核戦略」で指摘した通り、中朝露の核戦略に対応する気配はまったくない。日本も防衛費の増額幅をいかに抑えるかで議論しており、核シェアリングの議論は皆無である。
(2022年11月4日号)
*北ICBM発射の裏側
昨日、北朝鮮がICBMを発射した。他5発の弾道弾が日本海に撃ち込まれた。Jアラート警報が出されたりして、大きなニュースになっている。それは、それでいいのだが、問題はその報道ぶりだ。
テレビなどでは、「米韓合同空軍演習に北朝鮮が反発して」と北朝鮮の主張をおうむ返しに繰り返している。これでは、米韓が挑発していることになり、北朝鮮がそれに反発していることになり、米韓が悪く、北朝鮮が正しいという図式が透けて見える。
北朝鮮は年初来、ミサイル発射を繰り返しており、米韓の実動演習が5年ぶりに復活したのは、北朝鮮の軍事活動の激化に対応したものである。実際には米韓が挑発しているのではなく、北朝鮮が挑発しているのだ。
産経新聞などは「北、米韓あおり責任転嫁」と正しく報道しているが、マスコミの多くは、北朝鮮の世論戦に敗けている。「ICBMは、途中で消失し、失敗だった」などという報道も北朝鮮の脅威を打ち消すのに一役買っている。
もちろん、ICBMが日本海上空で消失したのは事実だが、一段目ロケットの飛行は成功しており、2段目を故意に爆発させたと見るのが軍事常識だ。失敗と断定し、「北朝鮮は米韓の強大な軍事力に反発しているだけで、脅威ではない」という世論誘導であろう。
北朝鮮の大量の砲弾がロシアに供与されていることからも分かるように、今や北朝鮮とロシアは軍事的に緊密に結束している。年初来のミサイル発射はロシアがミサイル技術を供与している結果と見て間違いない。
つまり北朝鮮はかつての初歩的な核ミサイルの技術段階を脱しつつあり、核兵器大国になろうとしている。プーチンはウクライナでの核兵器使用を示唆して米国を恫喝しているが、実は東アジアでも北朝鮮に使用させると米国を恫喝していることになろう。
対する米国は前号「またも腰砕け!米核戦略」で指摘した通り、中朝露の核戦略に対応する気配はまったくない。日本も防衛費の増額幅をいかに抑えるかで議論しており、核シェアリングの議論は皆無である。