鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2022年11月11日号)
*北核実験延期の真相
「北朝鮮は中国共産党大会終了後、米国の中間選挙までに核実験を行う可能性がある」とする見解は9月28日に韓国の情報機関が示したものだが、北朝鮮がミサイル発射を繰り返す中で、マスコミ全般もこの見解を共有していた。
ところが11月8日の米中間選挙まで、遂に北朝鮮は核実験を行わなかった。衛星写真などから核実験の準備が完了していたのは明らかであるから、なぜ意図的に延期したのか?は、国際政治を分析する上で重要な問題である。
米国務省は5月6日に「月内に北朝鮮が核実験の準備を完了する」見通しを示し懸念を表明していた。バイデン政権がなぜ北朝鮮の核実験を懸念するかと言えば、それが中間選挙に影響するからだ。
昨年8月にアフガニスタンから米軍が無様(ぶざま)な撤退をして、2月にはロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったバイデン政権は安全保障に弱いとの批判を浴びていた。これで北朝鮮の核実験を許せば中間選挙でボロ負けするのは目に見えている。
だからといって北朝鮮に斬首作戦を仕掛けるほどの胆力はハト派のバイデン大統領にはない。となれば北朝鮮に最大の影響力を持つとされる中国に頼るしかない。もちろん米国世論は反中姿勢に傾いているから、おおっぴらに頼むわけには、いかない。
すべては裏交渉であるが、中国に核開発問題で依頼する以上、中国に対して核開発問題で譲歩しなければなるまい。トランプ政権は中距離核ミサイルを再開発して日本に配備することを計画していた。この再開発計画を放棄することを条件にすれば中国は応ずるだろう。
はたして10月27日に公表された米国の核戦略には、中距離核ミサイル再開発計画の放棄が明記されていた。北朝鮮は8月からミサイル発射を頻発しているが、その一部は日本海ではなく黄海に着弾している。
黄海の先には中国があり、核実験を延期するよう圧力をかけてくる中国に対して北朝鮮が不満を表明していたと見ていいだろう。
米国の中距離核ミサイル再開発は台湾防衛のためであった。つまりバイデン政権は中間選挙のために台湾を中国に売ったのだ。14日に米中首脳会談が開かれるが、まさに米中裏取引の手打ち式になるわけである。
(2022年11月11日号)
*北核実験延期の真相
「北朝鮮は中国共産党大会終了後、米国の中間選挙までに核実験を行う可能性がある」とする見解は9月28日に韓国の情報機関が示したものだが、北朝鮮がミサイル発射を繰り返す中で、マスコミ全般もこの見解を共有していた。
ところが11月8日の米中間選挙まで、遂に北朝鮮は核実験を行わなかった。衛星写真などから核実験の準備が完了していたのは明らかであるから、なぜ意図的に延期したのか?は、国際政治を分析する上で重要な問題である。
米国務省は5月6日に「月内に北朝鮮が核実験の準備を完了する」見通しを示し懸念を表明していた。バイデン政権がなぜ北朝鮮の核実験を懸念するかと言えば、それが中間選挙に影響するからだ。
昨年8月にアフガニスタンから米軍が無様(ぶざま)な撤退をして、2月にはロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったバイデン政権は安全保障に弱いとの批判を浴びていた。これで北朝鮮の核実験を許せば中間選挙でボロ負けするのは目に見えている。
だからといって北朝鮮に斬首作戦を仕掛けるほどの胆力はハト派のバイデン大統領にはない。となれば北朝鮮に最大の影響力を持つとされる中国に頼るしかない。もちろん米国世論は反中姿勢に傾いているから、おおっぴらに頼むわけには、いかない。
すべては裏交渉であるが、中国に核開発問題で依頼する以上、中国に対して核開発問題で譲歩しなければなるまい。トランプ政権は中距離核ミサイルを再開発して日本に配備することを計画していた。この再開発計画を放棄することを条件にすれば中国は応ずるだろう。
はたして10月27日に公表された米国の核戦略には、中距離核ミサイル再開発計画の放棄が明記されていた。北朝鮮は8月からミサイル発射を頻発しているが、その一部は日本海ではなく黄海に着弾している。
黄海の先には中国があり、核実験を延期するよう圧力をかけてくる中国に対して北朝鮮が不満を表明していたと見ていいだろう。
米国の中距離核ミサイル再開発は台湾防衛のためであった。つまりバイデン政権は中間選挙のために台湾を中国に売ったのだ。14日に米中首脳会談が開かれるが、まさに米中裏取引の手打ち式になるわけである。