沖縄・台湾友の会

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ウクライナ危機は他人事ではないぞ:櫻井よしこ

2022-03-14 22:20:08 | 日記
わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
               頂門の一針 6074号

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ウクライナ危機は他人事ではないぞ
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           櫻井よしこ

日本ルネッサンス 第988回

ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官が2月11日、ウクラ イナ在住の米国人全員に48時間以内の退避を勧告した。20日閉幕の北京冬 季五輪の間にもロシア軍のウクライナ侵攻があり得るとして、侵攻は空爆 とミサイル攻撃で始まり、国籍を問わず民間人が犠牲になる可能性がある と語った。「退避できたのにしなかった人々を救出するために、米兵士を 戦争地帯に送りこんで危険にさらすことを大統領はしない」とも氏は述べた。

「ニューヨーク・タイムズ」紙は12、13日の週末にウクライナ軍の訓練の 為に駐留していた米軍人約150人が撤退し、キエフ空港から米国人を乗せ て飛び立ったチャーター機やプライベート・ジェット機がこの6年間で最 多を記録したと報じた。

ウクライナがどんな状況に陥っても軍事介入しないというバイデン政権の 固い意志は明らかだ。そうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領がバ イデン氏に、この2~3日間にウクライナの首都キエフを訪問してほしい、 緊張緩和に必ず役立つと懇願したことが、非現実的な夢想に縋(すが)るも のとして冷ややかに論評されている。欧米諸国のある種突き放した視線 が、私には他人事と思えない。岸田文雄首相の夢見る核なき世界と、国防 を他国に頼るという姿勢が、いまや米国を鼻白ませていることに岸田氏こ そ気づくべきだろう。

米国の軍事不介入の決断が西側諸国のウクライナ政策の基調となってい る。英仏、わが国を含む多くが米国に追随中だ。プーチン露大統領の軍事 侵攻を経済制裁中心の戦術で乗り切れるとは思えないが、それでも今は G7諸国をがっちりまとめることが第一だ。だがそれさえもバイデン政権 はできていない。

「冷戦以来最も親密」

その典型例がドイツである。14~15日にウクライナとロシアを訪れたショ ルツ独首相の目的は、プーチン氏のゴールがどこにあるのかを見極めるこ と
だった。ロシアはキエフを陥した後、ウクライナをどう治めるのか。資 源豊富な東側を奪うとして、資源も少なくチェルノブイリを含む西側もと るのか。ロシアとの国境にある東側のドネツクとルガンスクの両人民共和 国は親露派住民に支配されているが、二つの共和国を独立させるのか、そ れともカザフスタンでロシアが企んで成功したように、キエフに親露政権 を打ち立てて、ロシアの支配下に置くのかなど、シナリオはいくらでも考 えられる。

ショルツ氏はそうした中で、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン、ノ ルドストリーム2の操業に漕ぎつけようとするのではないか。エネルギー の60%をロシアに依存するドイツは結局、G7の中の異端児となって、ロ シアを利する行動に走る可能性も心しておくべきだ。

混沌の中で、16日にもロシアが軍事侵攻か、との情報が永田町に走った。 岸田氏は14日午前、国家安全保障会議(NSC)を開いたが、ウクライナ 問題についての方針を明確に示したわけではない。岸田氏はバイデン氏と 共に迷走し始めていないか。

米国の大戦略はいま、最大の脅威である中国に力を集中させるという当初 目的から大きく外れて、最も好ましくない方向に展開しているのではない か。カーター政権の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたズビグ ニュー・ブレジンスキー氏はかつて、中露を大連合させてはならない、中 露大連合は米国にとっての最大の脅威となると警告した。

バイデン大統領は昨年8月末にアフガニスタンから這々(ほうほう)の体で 撤退した。それでも中東から手を引き中国に集中するという戦略意図は正 しいものとして受け入れられた。

しかし今米国は、中国に集中するのではなく、中露を接近させてしまっ た。北京五輪を機に行われた中露首脳会談後の共同声明を見れば、彼らの 大連合路線は明白だ。中露は自分たちこそが真の民主主義国だと主張し、 国連中心主義を謳い上げた。弱小国を巻き込んで数で勝負すれば勝目はあ ると見ているのだ。

ロシアは「一つの中国政策」を支持し、「台湾は中国の一部」「台湾の独 立は認めない」と宣言した。日米主導のインド太平洋戦略は「閉鎖的ブ ロック圏の構築」だとして反対し、「AUKUS」にも強い異議を表明、 ロシアは習近平主席の「人類運命共同体」の実現が重要だとへつらい、日 本のトリチウム水の海洋放出も非難した。そのうえで、両国は「冷戦以来 最も親密な同盟関係にある」とした。情報筋は、「軍事同盟でないこと が、辛うじての救いだ」と語る。

政界一の酒豪

国家基本問題研究所副理事長でニクソン研究の第一人者である田久保忠衛 氏が指摘した。

「いま、逆ニクソン戦略をとるべきときなのです。ニクソンはソ連が強 かったとき、その弟分の中国をソ連から引き離して、ソ連を崩壊に導い た。中国が巨大になったいま、ロシアを中国から引き離すことに知恵を絞 らなければならないのです。それを目指したのが、安倍元首相であり、ト ランプ前大統領でした」

両氏の試みは道半ばだが、両氏の想い描いた大戦略は正しかったと言え る。にも拘わらず、ウクライナ危機に岸田首相は何をしているのか。

岸田氏は安倍晋三首相の下で4年7か月も外相を務めた。政界一の酒豪であ る岸田氏はロシア外相のラブロフ氏と幾度も酒を酌み交わす機会があった はずではないか。その人脈をなぜ、活かせないのか。岸田氏は著書で、 「自分ほどの外交、防衛の専門家はいない」と書いているではないか。秀 才といわれる林芳正外相も同様だ。明晰な頭脳をなぜ、ロシア外交に活用 しないのか。

外務省首脳は、日本にはそのツテがないと嘆く。だが、日本が危機打開に 向けて何の努力もしなければ、同じような危機が台湾、尖閣、沖縄を襲う とき、米欧諸国に力を貸してくれと頼めるわけがない。欧州の生命線を脅 かすウクライナ危機の局面で日本は動かなかったと認識されてしまえば、 台湾有事は日本の有事だ、助けてくれと要請しても、国際社会が応じてく れるとは思えない。

ウクライナは、国連常任理事国全てがウクライナを侵略することはないと 誓ったその言葉を信頼して、かつて持っていた核を全て放棄してロシアに 渡した。しかし今、どの国も、軍事介入してまでウクライナを助けようと はしない。だからウクライナ人は自分たちの力で戦うと文字どおり必死の 思いである。

他方日本は憲法改正もしていない。自衛隊は「国軍」でさえない。国民に 戦う気はあるか。岸田氏は非核三原則を唱え、核戦力縮減を唱えるばかり だ。余りの非現実性ゆえに米国が岸田氏に疑念を抱いている兆しが見てと れる。岸田氏も林氏も現実を見て出直さなければ、日本も、いわんや台湾 も守れはしないだろう。         

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