「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)2月7日(月曜日)
通巻7209号
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パキスタン首相の北京訪問は四日間。何を話し合ったのか?
中国からの借入金の40%が政府の帳簿に記載されていない謎
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習近平の目玉「一帯一路」最大のプロジェクトはCPEC(中国とパキスタンとの経済回廊)建設で、総計620億ドルが注ぎ込まれることになっていた。インドの報道などに基づくと、およそ280億ドルが既に百を超えるプロジェクトに投下されたという。
それらのなかには鉄道、ガス、原油パイプライン、高速道路、発電所などが含まれている。
ところがアメリカのエイドデータ(AidsDATA)の調べでは、中国の貸付金は「輸出信用枠」からのローンであり、実態は中国製機械設備、備品などの輸出分への貸し付けなのだ。
一方的に中国製品を買わせ、相手国にドルの債務を負わせるという「中国方式」でなされており(これが「借金の罠」)、パキスタンの工事現場も中国人労働者、とくに囚人ばかりで、現地雇用はほんの僅か、むしろ中国プロジェクトの現場警備のための出費が多い。
バロチスタンの独立を叫ぶBLA(バロチスタン独立軍)は、今年に入ってからも数回の自爆テロや、パキスタン軍、警察との銃撃戦を繰り返し、双方に百人以上の死傷者がでている。とくに2月3日にはカーン首相訪中を「祈念」して、クエッタの警備本部二箇所を襲撃し、兵士7名を死亡させた。ゲリラ側にも13名が殺害された。
中国人を標的としてのテロが頻発し、パキスタン政府は中国人犠牲者に対し、1100万ドルの慰労補償金を支払ったとも報じられている。
イムラン・カーン首相は2月3日に北京入りし、北京五輪開会式にも臨んだが、個別に李克強首相(5日)、習近平主席らと会談(6日)した。
議題はCPECを、今後どう立て直すか、にあった。
カーン首相には外相、財務相、商業相、内相らが同行するという力の入れよう。そしてパキスタンの狙いは、CPEC第二段階の計画刷新だ。
もともとカーン首相は野党時代、CPECに反対していた。理由は中国の借り入れの40%が、民間の債務か、政府債務かの区別がつかず、パキスタン政府の帳簿に記載されていない不透明さにあり、透明性を高めよと唱えていたのだ。
今回の訪中では経済特区建設の具体化、着手したプロジェクトの工事完成の詰めなどに置かれ、バロチスタン州西南部のグアダール港開発プロジェクトの中断については表向き、話し合いはなかったとされた。
しかしグアダールを諦め、カラチに移行するというのは根本的にゲームチェンジであり、もっと具体的に最終決着を煮詰める必要がある。
グアダール開発を中断し、カラチへ重点を移行するとした最大の理由は、サウジアラビアが200億ドルを注ぎ込んで精油所を建設すると発表したからだった。
ところがサウジとの具体的な詰めはまだ一歩もなされてはおらず、カーン政権には焦りがあるという。
サウジはもとよりパキスタン最大の保護者であり、イスラマバードに聳え立つ世界最大のモスクはまるまるサウジの寄付による。パキスタンの銀行もサウジ系が多く、あちこちに投資しているが、その規模は中国より大きい。
さらに言えばパキスタンの核開発は、サウジの資金でまかなわれた。
令和四年(2022)2月7日(月曜日)
通巻7209号
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パキスタン首相の北京訪問は四日間。何を話し合ったのか?
中国からの借入金の40%が政府の帳簿に記載されていない謎
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習近平の目玉「一帯一路」最大のプロジェクトはCPEC(中国とパキスタンとの経済回廊)建設で、総計620億ドルが注ぎ込まれることになっていた。インドの報道などに基づくと、およそ280億ドルが既に百を超えるプロジェクトに投下されたという。
それらのなかには鉄道、ガス、原油パイプライン、高速道路、発電所などが含まれている。
ところがアメリカのエイドデータ(AidsDATA)の調べでは、中国の貸付金は「輸出信用枠」からのローンであり、実態は中国製機械設備、備品などの輸出分への貸し付けなのだ。
一方的に中国製品を買わせ、相手国にドルの債務を負わせるという「中国方式」でなされており(これが「借金の罠」)、パキスタンの工事現場も中国人労働者、とくに囚人ばかりで、現地雇用はほんの僅か、むしろ中国プロジェクトの現場警備のための出費が多い。
バロチスタンの独立を叫ぶBLA(バロチスタン独立軍)は、今年に入ってからも数回の自爆テロや、パキスタン軍、警察との銃撃戦を繰り返し、双方に百人以上の死傷者がでている。とくに2月3日にはカーン首相訪中を「祈念」して、クエッタの警備本部二箇所を襲撃し、兵士7名を死亡させた。ゲリラ側にも13名が殺害された。
中国人を標的としてのテロが頻発し、パキスタン政府は中国人犠牲者に対し、1100万ドルの慰労補償金を支払ったとも報じられている。
イムラン・カーン首相は2月3日に北京入りし、北京五輪開会式にも臨んだが、個別に李克強首相(5日)、習近平主席らと会談(6日)した。
議題はCPECを、今後どう立て直すか、にあった。
カーン首相には外相、財務相、商業相、内相らが同行するという力の入れよう。そしてパキスタンの狙いは、CPEC第二段階の計画刷新だ。
もともとカーン首相は野党時代、CPECに反対していた。理由は中国の借り入れの40%が、民間の債務か、政府債務かの区別がつかず、パキスタン政府の帳簿に記載されていない不透明さにあり、透明性を高めよと唱えていたのだ。
今回の訪中では経済特区建設の具体化、着手したプロジェクトの工事完成の詰めなどに置かれ、バロチスタン州西南部のグアダール港開発プロジェクトの中断については表向き、話し合いはなかったとされた。
しかしグアダールを諦め、カラチに移行するというのは根本的にゲームチェンジであり、もっと具体的に最終決着を煮詰める必要がある。
グアダール開発を中断し、カラチへ重点を移行するとした最大の理由は、サウジアラビアが200億ドルを注ぎ込んで精油所を建設すると発表したからだった。
ところがサウジとの具体的な詰めはまだ一歩もなされてはおらず、カーン政権には焦りがあるという。
サウジはもとよりパキスタン最大の保護者であり、イスラマバードに聳え立つ世界最大のモスクはまるまるサウジの寄付による。パキスタンの銀行もサウジ系が多く、あちこちに投資しているが、その規模は中国より大きい。
さらに言えばパキスタンの核開発は、サウジの資金でまかなわれた。
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