ビクニータス

2006-10-06 | ペルー
ビクーニャは標高4000mを超えるぺルーとボリビア国境近辺の中央アンデス高地に群れをなして生息する。体長1m程の小振りな体で薄茶色の毛を持っている。その毛糸を使った織物はとても繊維が細く滑らかでインカの時代は王への献上品にされていたため「神の糸」とも呼ばれていたそうである。現在では高級品といわれるアルパカ・ウールの価格と比べても桁外れに高い値段の超高級品。ハンターの密猟による乱獲で、現在では個体数もかなり減少してしまったらしい。アルパカやリャマは放牧される家畜なのに対して、ビクーニャは野生。敏感で逃げ足が速く捕獲するのは容易な事ではない。「チャク」という年に1日だけ毛刈りをする伝統行事があるという。そのドキュメント番組がNHKBSハイビジョンで放映された。村の大人達が岩山の影に隠れてじっと待ち、現れたビクーニャの群れを逃がさない様に走り回って追い込み、谷間に張った網にかかったところを手で捕まえるという実に素朴な手法だ。毛を刈り取り終わったら逃がしてあげるとはいっても、丸裸になったビクーニャたちが高地の寒さにさらされるのは過酷な試練な気がする。村人たちにとっては天の恵みの貴重な現金収入源となるが、その分配方法についても不公平がないようになされるそうだ。自然からの恵みを村の共同体で共有するという古くからのルールが守られている姿を垣間見ることができた。物質文明に暮らしている自分にはいろいろ考えされるところが多かった。ところで、この貴重な映像をハイビジョンの超高画質で撮影してくれたカメラマンの仕事に拍手である。標高4000mの高地でカメラを担いで走りまわりながら撮影するのはさぞキツかっただろう。
(写真:2005年8月ボリビア チャラサニへ向かう道中見かけたビクーニャの群れ)