遺作とは、未発表のまま死後に残された作品のこと。ということで今日は、シューマンのヴァイオリン協奏曲とブルックナーの交響曲第9番を聞いていこうと思います。
まずは、シューマン(1810-1856)のヴァイオリン協奏曲ニ短調WoO23。
1853年。ヨーゼフ・ヨアヒムとのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の共演をきっかけに、ヨアヒムが依頼し、わずか2週間で作曲されました。しかし、ヨアヒムはこの作品を取り上げることななく、クララ・シューマンもこの作品を封印してしまいます。というのも、シューマンがライン川に身を投じる直前に書き上げたピアノ「天使の主題による変奏曲」の主題と、この協奏曲の第2楽章が似ていたためと言われています。
その後1937年になってから、この作品がヨアヒムの蔵書から発見され、ゲオルク・クーレンカンプのソロ、カール・ベーム指揮ベルリン・フィルで初演されました。
- ジョシュア・ベル (vn)
- クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮/クリーヴランド管弦楽団
1994年の録音。最近になって徐々に演奏される機会が増えている作品ですが、録音当時はとても珍しい曲として認知されていました。ベルのソロはとても軽やかで、この作品の魅力を存分に発揮しているように思えます。オーケストラの音も明るい。アメリカ的な楽天主義かな。
続きまして、ブルックナー(1824-1896)の交響曲第9番ニ短調。
1887年の交響曲第8番完成後に着手されました。が、第8交響曲に対する酷評が原因で、過去の作品の改訂に手を染め、第9交響曲の作曲はおろそかになり、1894年にようやく第3楽章まで書き上げます。そして、死去する直前の1896年10月11日まで第4楽章に取りかかりますが、第3楽章までの未完成のまま残されることになりました。
初演は1903年2月11日。フェルディナント・レーヴェの指揮するウィーン交響楽団(の前身のオーケストラ)によって行われました。
- クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮/クリーヴランド管弦楽団
1988年の録音。演奏時間1時間を切る快活テンポの演奏。オーケストラの響きがここでも明るく、ブルックナー特有の重厚さを求める人には物足りないかもしれません。2014年のフィルハーモニア管弦楽団とのライヴの方が、聞き応えがあるかも。
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