ある意味で電撃的な、そしてある意味で予定通りのクーデターが宣言されてから、24時間以上が経過しました。
(画面の右上に「国家平和委員会」のロゴが見えるテレビ画面)
軍の「国家の平和と治安維持委員会」の告知放送以外は無味乾燥な静止画と古いタイ音楽だけだったテレビでした。夜になってニュース番組が放送されるようになりました。もちろん、ニュースと言っても自由な取材に基づく真正ニュースではなく、軍の検閲、というより指示を受けて放送されていると思われるニュースです。衛星を含むあらゆるチャンネルで同じニュースが流れてきます。古いドラマも放送するようです。CMも全チャンネルで同じものが流されています。
※その後、夜半になって、地上波のうち3,5,7,9の各チャンネルは独自の番組の放送を始めました。
さて今回のクーデターについて、外国のメディアはどう分析しているでしょうか。ニューヨークタイムスの今日の記事を下敷きにして書いてみたいと思います。
今回のクーデターは今世紀2度目です。1932年に絶対君主制が終止符を打ってから数えると、12回目のクーデターということになります。前回の2006年のクープでは、2001年から政権に就いていた強力なタクシン政権を転覆させたわけですが、昨日のクーデターは、タクシン派によるポピュリスト・ムーブメント(人気取り政策)を終わらせる目的があったと言えます。
実行されたのは、憲法の大部分を停止させること、5人以上の集会を禁止すること、夜間外出禁止令と学校の休校などです。そしてタクシン派の25人の政治家を拘束しました。この中には前首相のインラックさんも含まれています。インラックさんの場合も自主的に出頭しました。出頭しないと逮捕すると脅かされたのです。タクシン氏のように海外に高飛びする才覚と力はなかったようです。
今回のクーデターは、ニューヨークタイムスのトーマス・フラー記者によれば、ニュースメディアを完全に掌握して自由な言論を封鎖している点など、2006年のクーデターよりもシビアだと言います。これまでのクーデターとの違いはそれだけでなく、まず軍部の将軍たちの中に、お決まりの「内部抗争」が見られないことがあげられます。一致結束しているように見えるのです。そして明らかになりつつあるのは、医療費無料の健康保険(黄金保険)や無利子の貸付(マイクロローン)の恩恵を受けてタクシンを支持してきた地方のタイ人を目覚めさせるという、はっきりとした目的があることだと言います。
バンコクのエスタブリッシュメント(支配階級)、つまり高学歴で金持ちのタイの上流階級は、反政府運動がこう着状態となったあたりから軍の介入を待ち望んでいたと言います。そして予定通り、タイミングをはかったようにクーデターは起こりました。初めから軍は反政府側に肩入れすることがわかっていたのです。タクシンに批判的な人たちは、首相在職時の汚職だけではなく、最近はインラック政権を海外から操縦することによって、また新たな腐敗をタイにもたらしていると指摘していたのです。
今回のクーデターは、海外では当然のように非難の対象になっています。海外の投資家と観光客にとって、タイは「微笑の国」としてとても魅力的な国でした。ところが最近の反政府運動は民主主義を停止させるような動き、すなわち国民による選挙を経ない政権の樹立を目指す方針を示したことによって批判の的になりました。そして今回のクーデターです。
アメリカのケリー国務長官は、軍のクーデターには正当性がなく、すぐに文民統制に戻るべきだとして今回のタイ軍の動きを厳しく糾弾しています。国防省は、月曜日から予定されている米軍とタイ軍の合同演習の見直しに言及しています。国連の潘事務総長も、直ちに憲法に基づいた民主主義体制に復帰するよう求めています。もちろん日本政府も同様の見解ですね。
バンコクの支配層と軍の思惑が一致して実行された今回のクーデター。しかし次の一手はきわめて難しいと言わざるを得ません。タクシン派を大量に拘束し、行政権を掌握したパワーをしばらく維持すべきなのか。それとも、できるだけ速やかに民主主義に戻るのか・・・時間をおかずにどちらかを選択しなければならないのです。そして民主主義に戻る道筋に果たして名案はあるのでしょうか。これまでのように選挙すれば、タクシン派の圧勝と言う構図に変わりがないとすれば、タクシン派を徹底的に叩きのめすしかないのでしょうか?
反政府運動の指導者たちは、リーダーのステープ氏が拘束されたにも関わらず、今回のクーデターを「国民の勝利」として賞賛していると言います。はたして本当に国民の勝利という結末を迎えることがあるのでしょうか・・・
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強引ですが 法人税は全て無料教育費の財源とか
年収100万B超の個人にはかなり高率な所得税を
課税するとか・・・・・・・・
心を外から変えることは不可能ですので子供達の
レベルアップを30~40年計画で実施することが
一番の近道のように感じますけどね~
レベルの低い権力者は自分達に都合が良いように
国民の無知を望むようですからね~
貧しい国でなぜクーデターが成功するのか?
貧しい家庭の優秀な子が学費無料の士官学校へ
進学する場合が多く見られるからでしょう・・・・・・
政府批判の愚痴をこぼすことはあっても、どんな政府を望むのか、はっきりとした意見を持った人は多くないように思います。
僅かな金に誘導されて投票するのが地方の庶民。これは確かに教育も大いに関係あるでしょう。子供の時から視野を広げる必要はあると思います。世界を認識できなければ、目の前の利益しか見えません。(ただし最近のタイの教育水準は相当に高いと思います)
でも、妻は言います。タクシンは悪いところもあったけど、いいところも多かった。地方の暮らしがものすごくよくなった。これまで見捨てられてきた貧乏人も医療の恩恵を受けられるようになった・・・(一番貧乏なミャンマーからの出稼ぎ労働者にも健康保険は適用されます)
タクシンのやってきたことは、権力を維持するためだけの人気取りだったのか、そうではないのか。もう少し時間が経たないと、公平な評価はできないのかもしれません。
いずれにせよ、目の前の利益誘導ではない、まともな選挙による政権ができることを望むタイ人も増えていることは確かです。と、言いたいところです。
単にクーデターを起こすだけなら、首相府が占拠中は軍の施設でインラックさんが公務を行っていましたので、その場で拘束は可能です。
戒厳令下での協議も茶番だという意見もありますが。
プラユット陸軍司令官も動く気持ちは無かったのかもしれません。
むしろ気になるのは、デモ隊に対する攻撃で以前はロケットランチャーで擲弾を発射する程度のいやがらせでしたが、5月15日の自動小銃の狙撃は2006年の黒服集団の手口に似ています。
軍はそうしたテロ傭兵の動きをキャッチしたから、急遽クーデターで行動規制に情報統制にしたかもしれません。(想像ですが)
北ランナー共和国樹立というのもガセネタを装ってますが、本当のところはどうなんでしょう。(想像ですが)
早速にあちこちで武器を発見しているようです。以前ならバンコクだけでしたが今回は全国で検問のようです。
仰る通りです。実はよくわかりません。
ただ、はっきり言えることがあります。軍のクーデターは、まったく国際社会には受けいれられません。今時そんなことを繰り返しているのはタイだけです。
軍がクーデターをやって、経済が回復したなんてことは、歴史上皆無です。ましてや今は21世紀。ミャンマーですら軍事政権に終止符を打っています。もっと言えば、北朝鮮ですら、軍部の暴走を止めるために、権力は膨大なエネルギーを注いでいると思われます。
軍というものは文民統制すべきと言うのは世界史が教えてくれている間違いのない教訓なのです。軍の銃口は絶対に自国民に向けられてはなりません。絶対です。日本は軍の暴走の痛い経験をしています。武器を自由に使える者は何をするかわからないのです。
こうなったら、今のタイ軍部が良識的な人たちで占められていることを祈るのみです。
http://www.youtube.com/watch?v=ifSvtJC3WhA
この行進曲が流れると、バンコクのステーブデモ隊に共感する沿道の数万人のバンコク都民が熱狂します。
この行進曲が聞けなくなると思うと残念です。
タイの農業関連GDPが10%しかないのに、農業従事人口が40%以上もいるのが大問題なのです。
タイ国政府は本来なら、農業従事人口をGDPと同じ10%まで減らさないといけないのです。
しかし、タクシンは票田確保のため、農民に飴を与え続けてきました。
農民を工業人口へ移動させると、タクシン独裁政権が崩壊するのです。
それにしても、タイの政治システムは世界一スグレモノかもしれません。
悪性を働く政権があれば、正義の味方が出てきて一掃する。
先進国は揃って、クーデターを避難していますが、内実は羨ましいのかもしれません。
それにしても、インラック・タクシン傀儡政権の「コメ高値買取り政策」は酷すぎました。
タイ国は少子高齢化で労働人口は増えません。
今こそ、農民を工業人口へ移行する政策が最重要課題です。