『北北西に曇と往け』は本当に大好きな漫画だ。ある年に書店の新刊コーナーに立ち寄ったとき、表紙が輝いて見える本があった。そのときは追っている漫画が多く、手を出すのを躊躇していた。けれども、いつ書店に来ても目に付いてしまう。もう運命的な本ではないかと思って、遂には購入を決めた。
この物語の舞台はアイスランドなのだが、ちょうどアイスランド語の講義を取り始めて一か月ほど経ったところだった。表紙しかみてなかったので、まさか関わりがあるとは思っていなかった。読み始めてアイスランドに興味をもったことで、単位のためだけに選んだアイスランド語の授業も俄然やる気が出た。必修科目と被ってアイスランド語の授業に出られなかったときも独学で勉強を続け、年度末の試験もほぼ満点を取ることができた。
話が脱線してしまったが、『北北西に曇と往け』は両親を亡くし、アイスランドでフランス人の祖父と暮らす17歳の少年・慧の物語だ。女の子が苦手で、実は”車と話せる”という秘密をもつ慧は、探偵稼業をして生活費を稼いでいる。厳しくも壮大なアイスランドの自然が描かれる中で、慧は様々な依頼を受けながら、殺人の疑いをかけられた弟・三知嵩の真相に迫っていく。
ここから5巻まで読んで思ったことなんでも書いていくので注意です↓↓↓
久しぶりに読み返して、三知嵩はロキっぽいなと思った。北欧神話に詳しいわけではないので、なんとも言えないが、三知嵩はロキと同様に悪戯好きにみえるし、性別を超えたような美しい顔の持ち主だし、気が変わりやすく、よく嘘をつく。うん、なかなかそれっぽい。
もし三知嵩がロキなら、他の登場人物はどうだろうか?Wikipediaを参考に考えてみる。
慧はトールだと思う。トールは雷の神だが、慧は電気を使った機械と会話できる。それに慧が機械と会話するときは静電気が奔ったようなエフェクトがかかる。トールと同様に大男(というより背が高い)で、よく食べる。性格は少し乱暴で、脅しを使うことも多いけれど、弱者に優しいところも似ている。さらにロキと最も仲がいい神はトールらしいので、三知嵩と慧に深い絆がみられるところとも合っていると思う。
ジャックはオーディンかな。大学の先生をしているジャックは自宅にもかなり多くの本を所持しているし、オーディンのように知識に貪欲と言えそうだ。オーディンは元々風の神としての神格を持っていたようで、ジャックは自分自身を南風と表現している。両者とも鳥から情報を得ている点も共通している。ちなみにオーディンはトールの親であり、現在ジャックが慧の親に近い役割を果たしていることも一致していると言えそうだ。
リリヤは慧のパートナーではないけれど、トールの妻のシヴというのはどうだろうか?リリヤもシヴも美しい金髪の持ち主だ。でもリリヤはもっと妖精っぽくみえる。男の神様だけれど、神々の中で最も美しい眉目秀麗といわれ、妖精の支配者であるフレイの方が合っているかもしれない。スウェーデンにかつて存在したウプサラの神殿にはトール、オーディン、フレイの三神の像があったそうなので、この方が慧とジャックとの釣り合いが取れそうだ。
ジャックの現在のパートナー・カトラにはオーディンの妻であるフリッグを当てはめてみる。フリッグは愛と結婚と豊穣の神だ。カトラは結婚していないけれど、彼女は愛に満ち溢れた人物に見える。またフリッグと同一視されることもあるフレイヤはフレイの双子の妹で、リリヤをフレイとした場合、家族関係があるというのはうなづける。
1対1でキャラクターが作られるわけではなく、様々な要素が盛り込まれているものだと思うから、上記の考察が完全に合致しているとは全く思ってないけど、北欧神話を意識してそうだなとは思った。
三知嵩の殺人はほぼ確定的に見えるので、そう遠くないうちに報いを受けると予想している。犯してきた罪の重さから言うと、三知嵩は死ぬんじゃないかと思ってしまう。三知嵩が死んでも、正直どうってことないけど、そうなったら慧が可哀想すぎる。両親を失って、おじ・おばも亡くなって、弟も死んじゃったら、身内はジャックだけじゃないか…
ところで慧と三知嵩の母親は回想で少し分かるけど、父親って今までちょっとも影を見せていないのは気になる。どんな人物だったんだろう?母方のおじ・おばが日本で暮らしていたことや、ジャックの反応を見るに(母親がジャックの娘だったら、おじかおばもジャックの子供のはずだから)、父親がジャックの息子なのかな。ピンとこないな。
気になる謎はまだまだたくさんあるので、次巻を楽しみにしている。