水生大海の『オレと俺』(祥伝社)を読み終えた。
17歳の男子高校生が、ある事件をきっかけに63歳の祖父と精神が入れ替わってしまう。2人は入れ替わって日常生活を送り、その中で起こる小事件を解決していく。それと共に最初の事件の犯人を追っていくが…。
現代の若者と老人のちょっと分かり合えないようなところを綺麗にまとめていると思う。入れ替わった2人はお互いの立場を体験して、それでもすべてを分かり合うことはできないけれど、変わるところもあって再スタートを切っていく。若者と老人という対立もあるが、主人公は静かで祖父は陽気という性格的な対立も2人の溝になっている。これで若者の気持ちが分かるというような小説ではないが、主人公と友人たちの距離感には共感できるところもある。
気になったのは主人公がちょっと片言な点。主人公は片言になるような理由もなさそうなのに、助詞をあまり使わず単語の羅列のような話し方をする。キャラ作りだと思うが、引っ込み思案や面倒くさがりらしい性格を表現するにしても変で、読んでいてずっとモヤモヤした。