自らのスタイルと自信を喪失し、札幌に5失点の大敗。
たしかに、大型連休中の福岡から札幌へ中2日で移動という日程は（今節ACL決勝がある浦和などを除き、J1で8試合あるうち6試合が日曜開催ということもあり）、なかなかに厳しい。しかしながら、勝敗は別として、自身のサッカーを少しでも取り戻すことが出来たかといえば、首を横に振らざるをえない。
札幌はGKク・ソンユン、中村桐耶、青木亮太に代えて、GK菅野、宮澤、荒野が先発に名を連ねる。FC東京は疲労を考慮してか、長友、木本、木村、徳元、東慶悟、仲川、ディエゴ・オリヴェイラを先発から外し、特定指定選手の安斎を含む、森重、エンリケ・トレヴィザン、バングーナガンデ、小泉、アダイウトン、ペロッチと7人を入れ替え。
疲労も手伝ってか、相変わらず動き出しや球離れが遅く、推進力がないFC東京。それに対して積極的にボールを追いかける札幌という、落ち着かない序盤のなかで、8分にFC東京は渡邊凌磨が持ち上がろうとするもボールを持ち過ぎて奪われると、札幌がカウンター発動。ドリブルで運んだ小柏の右前方へのパスを受けた浅野が、ペナルティエリア中央から左脚でシュートを決めて、あっさりホームの札幌が先制。
これに端を発し、10分毎に札幌に歓喜の瞬間が訪れることになる。28分にペナルティエリア右からのマイナスのファーサイドへのクロスを菅がダイレクトでネットに突き刺すと、38分にはVAR介入からオンフィールドレヴューの結果、ペナルティエリア内でバングーナガンデが福森を倒したという判定でPKに。これを金子がきっちりと決めて、札幌が前半で3点を挙げる。FC東京は、前半終盤に松木のペナルティアーク付近からのシュートがクロスバーに当たった跳ね返りをアダイウトンが詰めるも枠の外と、得点機を逸して前半を終える。
なんとか悪い流れを変えようと、後半開始早々からどうもボールが足につかない渡邊ほか、そもそもボールを呼び込めなかったペロッチ、安部を下げて、仲川、ディエゴ・オリヴェイラ、青木拓矢を投入。だが、札幌の攻勢は続き、FC東京は最終ラインがジリジリと下げられるなかでボールを繋ごうとするが、動き出しのタイミングやパスの精度など全体的に連係が悪く、アダイウトンがアバウトなボールに競り合いながら突破するくらいしか活路を見出せない。
すると、50分に右サイドを経由して駒井のペナルティアーク付近からのパスに反応した菅が右脚で冷静にゴールへ流し込んで4点目を挙げ、試合を決めた。FC東京は、松木とともに奮闘していた数少ない一人、安斎を下げて徳元を投入。札幌が4得点を挙げながら、なおも攻撃を姿勢を止めないことで、さらなる守勢が予測される一方、その分FC東京にも攻撃のチャンスが生まれてきたところで、73分に相手をかわしてペナルティエリア右へ進出したアダイウトンのクロスをフリーの仲川が冷静に決めて、ようやく反撃ののろしを上げる。
アダイウトンを俵積田に代えて、サイドからのカットインでゴール前へ顔を出す回数も増えるが、カウンターを受ける回数も増加。GKヤクブ・スウォビィクが何度も危ない場面をビッグセーヴで凌ぐ場面が続く。松木のヘディングやエンリケ・トレヴィザンのシュートがクロスバーやポストに弾かれる不運もあるなかで、札幌も徐々に疲労の色を見せて、オープンな展開に。FC東京がもう1点を挙げると反撃の加勢も強まると思われたが、アディショナルタイムに突入し、徳元のロングスローに抜け出した仲川のシュートがGK菅野に防がれ、そのこぼれ球も枠外となるなど、なかなか得点に至らないでいると、馬場からのパスを受けてドリブルでペナルティエリアへ侵入した金子が、バングーナガンデを切り返してかわすと、左脚でゴール右へシュートを決めて、ダメ押しのダメ押し。互いに連敗を避けたい両者の一戦は、ホームの札幌が5得点の大勝で幕を閉じた。
疲労はあった。ただそれ以前に、FC東京は味方との距離やタイミングも含めて、全体的に意思疎通がなされず、連係が窺えないまま。ビルドアップに苦心するなかで、縦パスを狙うチャレンジ自体は評価するが、あまりにも距離が遠い位置からギャンブル性の高い縦パスを送ろうとするゆえ、精度に欠け、かえって札幌への高い位置からのショートカウンターの温床となっていた。松木や安斎は運動量豊富がゆえ奮闘していたが、そのサポートも少なかった。バングーナガンデはじめ、テクニック以前にどこか自信のなさも垣間見え、失敗を恐れるがゆえアグレッシヴなプレーが影を潜め、試合を通して終始後手に回る悪循環を拭い去ることが出来ず。シュート2本で終わった福岡戦よりは攻める姿勢は見せたものの、攻守で機能しないまま連敗となった。
繋ぐにしろ、前へ蹴って競るにしろ、全体での意思統一がなされないと、それぞれが各エリアで個による単独プレーをしているだけになるから対策はされやすい。このところは相手に詰められて窮屈になったところでパスミスやボールを奪われて守勢に回ることが多く、自分たちのリズムを作れないゆえ、どうしてもプレーも委縮しがちだ。
劇的な向上への特効薬はないし、仮にあったとしてもその効用が長く続くことはない。まずは原点に立ち返り、失敗を恐れずにチャレンジし続ける、ボールを動かし、自ら動き続けるということをチームとして徹底することだ。そのなかで、アグレッシヴな気持ちを出していくことで、何かのプレーをきっかけに状況が好転していくことは、往々にしてあることだ。
FC東京にとっては、大型連休中にアウェイで連敗するという最も望まなかった展開で、次節は国立で川崎を迎えることになる。近年の対戦成績や川崎の復調ぶりを見るに、ネガティヴな感情が巡りそうではあるが、かえって調子づいたなかで川崎に臨むより、これ以下はないと気持ち的にも開き直り、純粋に自分たちの戦いをぶつけていくという気概を持てる良い機会ととらえるべきだ。これだけの不調ながら、復調すれば上位へ巻き返せる位置にいる。とにかく脳も身体も停滞せずに素早く動き回ること。その結果、活路は開けてくるはずだ。
◇◇◇
明治安田生命J1リーグ 第12節
2023年5月6日（土）14:03KO 札幌ドーム
入場者数：19,080人
天候：屋内 ／ 気温：23.5℃ ／ 湿度 47％
主審：山下良美 ／ 副審：三原 純、日比野真
第4の審判員：篠藤 巧
VAR：清水勇人 ／ AVAR：武部陽介
札 幌 5（3-0 / 2-1）1 FC東京
【得点】
札 幌：浅野雄也（8分）、菅 大輝（28分）、金子拓郎（30分）、菅 大輝（50分）、金子拓郎（90+3分）
FC東京：仲川輝人（73分）
〈試合経過〉
08分 得点 札幌 浅野雄也
28分 得点 札幌 菅 大輝
38分 得点 札幌 金子拓郎
46分* 交代 東京 渡邊凌磨 → 仲川輝人 ／ ペロッチ → ディエゴ・オリヴェイラ ／ 安部柊斗 → 青木拓矢
50分 得点 札幌 菅 大輝
55分 交代 東京 安斎颯馬 → 徳元悠平
59分 警告 札幌 金子拓郎
64分 交代 札幌 小柏 剛 → ルーカス・フェルナンデス
70分 警告 東京 森重真人
73分 得点 東京 仲川輝人
73分 交代 札幌 宮澤裕樹 → 馬場晴也 ／ 駒井善成 → 小林祐希
77分 交代 東京 アダイウトン → 俵積田晃太
83分 交代 札幌 浅野雄也 → ミラン・トゥチッチ ／ 福森晃斗 → 中村桐耶
90+3分 得点 札幌 金子拓郎
90+6分 警告 東京 ディエゴ・オリヴェイラ
【FC東京】
〈スターティングメンバー〉
ＧＫ 27 ヤクブ・スウォビィク
ＤＦ 38 安斎颯馬
ＤＦ 03 森重真人
ＤＦ 44 エンリケ・トレヴィザン
ＤＦ 49 バングーナガンデ佳史扶
ＭＦ 37 小泉 慶
ＭＦ 08 安部柊斗
ＭＦ 07 松木玖生
ＦＷ 11 渡邊凌磨
ＦＷ 22 ペロッチ
ＦＷ 15 アダイウトン
〈控えメンバー〉
ＧＫ 41 野澤大志ブランドン
ＤＦ 17 徳元悠平
ＤＦ 04 木本恭生
ＭＦ 16 青木拓矢
ＦＷ 33 俵積田晃太
ＦＷ 39 仲川輝人
ＦＷ 09 ディエゴ・オリヴェイラ
〈監督〉
アルベル
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ 2023シーズン FC東京試合日程・結果】
第01節 02月18日(土)14:00〇FC東京 2-0 浦 和（Ｈ・味スタ）
第02節 02月26日(日)15:00△FC東京 1-1 柏 （Ａ・三協Ｆ柏）
第03節 03月04日(土)14:00✕FC東京 0-2 京 都（Ａ・サンガＳ）
第04節 03月12日(日)15:00〇FC東京 3-1 横浜FC（Ｈ・味スタ）
第05節 03月18日(土)14:00△FC東京 0-0 名古屋（Ａ・豊田ス）
第06節 04月01日(土)15:00✕FC東京 0-1 鳥 栖（Ａ・駅スタ）
第07節 04月09日(日)15:00△FC東京 2-2 湘 南（Ｈ・味スタ）
第08節 04月15日(土)16:00✕FC東京 1-2 Ｃ大阪（Ｈ・味スタ）
第09節 04月22日(土)14:00〇FC東京 2-1 広 島（Ａ・Ｅスタ）
第10節 04月29日(土)15:00〇FC東京 2-1 新 潟（Ｈ・味スタ）
第11節 05月03日(水)15:00✕FC東京 0-1 福 岡（Ａ・ベススタ）
第12節 05月06日(土)14:00✕FC東京 1-5 札 幌（Ａ・札幌ド）
第13節 05月12日(金)19:30 FC東京 ✕ 川 崎（Ｈ・国 立）
第14節 05月20日(土)15:00 FC東京 ✕ 鹿 島（Ａ・カシマ）
第15節 05月27日(土)14:00 FC東京 ✕ 神 戸（Ａ・ノエスタ）
第16節 06月03日(土)15:00 FC東京 ✕ 横浜FM（Ｈ・味スタ）
第17節 06月11日(日)18:00 FC東京 ✕ Ｇ大阪（Ａ・パナスタ）
第18節 06月24日(土)19:00 FC東京 ✕ 名古屋（Ｈ・味スタ）
第19節 07月01日(土)19:00 FC東京 ✕ 柏 （Ｈ・味スタ）
第20節 07月08日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和（Ａ・埼 玉）
第21節 07月16日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島（Ｈ・味スタ）
第22節 08月06日(日)19:00 FC東京 ✕ Ｃ大阪（Ａ・ヨドコウ）
第23節 08月12日(土)19:00 FC東京 ✕ 京 都（Ｈ・味スタ）
第24節 08月19日(土)19:30 FC東京 ✕ 横浜FM（Ａ・日産ス）
第25節 08月26日(土)19:00 FC東京 ✕ 神 戸（Ｈ・国 立）
第26節 09月02日(土)00:00 FC東京 ✕ 福 岡（Ｈ・味スタ）
第27節 09月16日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎（Ａ・等々力）
第28節 09月23日(土)00:00 FC東京 ✕ 鳥 栖（Ｈ・味スタ）
第29節 09月30日(土)00:00 FC東京 ✕ Ｇ大阪（Ｈ・味スタ）
第30節 10月21日(土)00:00 FC東京 ✕ 横浜FC（Ａ・ニッパツ）
第31節 10月28日(土)00:00 FC東京 ✕ 広 島（Ｈ・味スタ）
第32節 11月11日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟（Ａ・デンカＳ）
第33節 11月25日(土)00:00 FC東京 ✕ 札 幌（Ｈ・味スタ）
第34節 12月03日(日)00:00 FC東京 ✕ 湘 南（Ａ・レモンＳ）
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