果敢にトライした椋原と振り抜かなかった谷澤。
震災の影響による代替日程で、日曜の横浜FC戦から中2日で北九州戦が行なわれた。北九州はアウェイで敗戦を喫している相手。リヴェンジはもちろん、ホーム味スタでは決して負けられない一戦だ。
退勤後、足早に飛田給へと向かう。水曜日の夜、相手は遠方の北九州ということもあって、それほど客足も伸びないかと思われたが、試合開始から約20分後にスタジアムに着いてみると、思った以上の客入り(発表は1万人超)。これもやはり勝ち続けているからこその光景なんだろうか。
前半の半ばくらいからの観戦となったが、目に付いたのは、やはり北九州の、特に中盤のプレス。東京のルーカスへボールを預けてサイドに散らすという戦術も、北九州の早いプレッシャーと機敏なボールへのアプローチによって、なかなか思ったようにはいかない。それでも、東京になす術なしといった訳ではなく、簡単には収まらないものの、いずれは好機を作れるはずという力量の差は見えていた。というのは、北九州が90分間にわたってこのようなプレスをかけ続けられないだろうというのと、イージーなパスミスが散見されたからだ。このあたりがJ2のレヴェルというところか。
その北九州の積極果敢なプレッシャーだが、勢い余ってなのか徐々に東京に交わされ始めたのか、やや危ないチャージも出始めるようになる。東京はシュート・チャンスが生まれるもののシュートで終わることが少なかった。特に、谷澤にはこの試合でも「シュート打て」コールが出る始末。エリア内にドリブルで仕掛けての好機も、競い合っての転倒でシュート・チャンスを逸する。ファールを誘う“演出”も時には有効だろうが、最初の選択はゴールを意識したものであってもらいたい。自陣のCKからのカウンターでは、羽生の中央ドリブル突破から右の谷澤へ流し、それを谷澤が中央の梶山へ折り返すも相手に引っかかり打てず。5、6人が一気に相手陣へ攻め込む迫力ある攻めだったが、このような形の時にしっかりとシュートで終われないとリズムが狂ってきてしまうので、是非意識を高めてもらいたところだ。
前半はスコアレス。だが、後半の早い時間に思い切りのいいプレーが先制点を生み出すことになる。右サイド深いところで谷澤が中央へマイナスのパスを出す。ルーカスには合わなかったが、中央でルーズになったところを左後ろから駆け上がってきた椋原が低いグラウンダーのシュートを放つと、相手DFの足に当たる幸運なところもあって若干コースが変わり、そのままゴールマウスへ吸い込まれた。なかなか焦れた展開だっただけに、値千金のゴールとなった。やはり、好機があれば、ゴールへチャレンジしておくことが必要なのだ。
これで試合の流れもさらに東京へと傾くが、北九州は前半から続けていたプレスが次第に甘くなると、ファールで凌ごうとする場面が多くなってくる。それまでもやや不可解と思われるジャッジが多いように見られたのだが、後半中盤に差し掛かると、ピッチ内外で不服な判定に苛立ちを隠せない場面が増えてきた。ファールの基準が曖昧で、カードかという場面でスルーしたり、ファールされたと見えた側にファールをとったり。また、北九州FWがエリア内で東京DFと交錯し転倒したところで笛が吹かれたのだが、ここで笛ということはPKかと思いきや相手へのシミュレーションで事なきを得たという場面も。この日の主審は岡部拓人。試合を見る、判断する立ち位置もやや覚束ないところもあり、今後気をつけたいところだ。というよりも、彼だけでなく、J2のジャッジのレヴェルについては、そういった不可解なことも多分にあると把握した上でプレーしなければならないということだ。
となれば、大切なことは何か。それは試合を落ち着かせることと自分たちのペースへと引き戻すことだ。そして、その一番の特効薬となるのがゴールなのだ。ゴールを奪うためには、果敢にシュートを放つことが必要だ。1点差ではセットプレイなどによるピンチで、同点とされる可能性も決して少なくはない。だからこそ、追加点というものが、試合の流れを決定付ける最も有効な方法となり得るのだ。
東京は後半20分に、右サイドの石川から羽生へパス。ワンツーの形となって再び石川がボールを受けるとエリア直前の中央へ切れ込み、谷澤にパス。谷澤がこれをルーカスへダイレクトにヒールパスを出すと、GKと1対1となったルーカスが右へ冷静に流し込んだ。これまで北九州の次第に疲れが見え始めていたプレスや運動量も、これでガクッと落ちたようだった。得点への流れも、完全に崩した形での“セクシー”と形容出来るようなものだっただけに、北九州の精神的ダメージも大きかったようだ。
試合は2-0のままで終了。だが、2-0となってからも、東京サポーターからの“戦え~”のチャントに感化されたのか、この後も途中出場の石川、坂田らが何度か相手陣へチャレンジを試みていた。結果は伴わなかったものの、そういう戦う意識やゴールを目指す意識が、この試合だけではなく、次の試合にもいい形で引き継がれていくということを示せたのはよかった。後は、ここのところの試合でいえば、谷澤(や梶山あたり)にもその意識を(もっていないとは思わないが)高く持ち、パフォーマンスしてもらいたいところだ。
次節はアウェイで徳島戦。現在、徳島は勝点49の3位につけている。東京との勝点差は5だ。昇格争いという点で非常に重要な一戦となることは間違いない。東京は今日の試合のカード累積により田邉が出場停止となる。ここまでの選手起用を考慮すると、良く言えば勝利の方程式、悪く言えばワンパターンの交代カード戦術となっている。田邉以外にもカード累積を抱えている選手が少なくなく、近いうちにメンバーの入れ替えも不可欠となろう。こういったさまざまな状況を想定しながら今後を戦い抜けるかという意味でも、次の徳島戦は重要なのだ。そのなかで、しっかりと勝点を積み重ねて、磐石を配する流れへと繋げたい。そして、これまで出場機会の少なかった選手たちの奮起にも期待したい。
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Jリーグディビジョン2 第5節
2011/09/28 味の素スタジアム
FC東京 2(0-0、2-0)0 北九州
【得点】
(東):椋原(47分)、ルーカス(75分)
観衆: 10,229人
天気: 晴、無風
<メンバー>
≪FC東京≫
20 GK 権田修一
02 DF 徳永悠平
03 DF 森重真人
06 DF 今野泰幸
33 DF 椋原健太
04 MF 高橋秀人
10 MF 梶山陽平
27 MF 田邉草民 → 18 MF 石川直宏(69分)
39 MF 谷澤達也 → 17 MF 永里源気(89分)
22 FW 羽生直剛 → 38 FW 坂田大輔(84分)
49 FW ルーカス
31 GK 常澤聡
14 DF 中村北斗
32 MF 上里一将
11 FW 鈴木達也
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北九州サポーターのみなさん、味スタへようこそ。
平日夜の長距離遠征にも関わらずの熱意は素晴らしい。
東京ゴール裏。
ハーフタイム中。おどけるドロンパ。
10/1(=都民の日)が誕生日ということで、ハローキティが祝いに駆けつけてくれたこともあって上機嫌。(笑)
後半開始直前の円陣。
北九州はミーティングが長めだったのか、ピッチへ出てくるのが遅かった。
ルーカスのゴール直後の東京ゴール裏。
スコアは2-0の完封。
試合終了。
北九州ゴール裏に挨拶する選手と東京の勝利を知らせるスクリーンの“WINNER”の文字。
バックスタンドに挨拶する東京の選手たち。
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やっぱり、シュートを打たなきゃはじまらない、という過去のシーンを。
11th Nov 2006 F.C.TOKYO v Kawasaki
2006年のホーム味スタでの対川崎戦。
前半1-3でビハインド。後半早々にも先に失点し1-4と劣勢になるなかで、川崎の2人の退場というアクシデントやアディショナルタイムが6分ということがあったにせよ、1-4から4得点しての5-4で逆転勝ちというシーンはなかなかお目にかかれないもの。
諦めない気持ちとゴールへの果敢なチャレンジが勝利を呼び込んだという一例となるだろう。
4分55秒あたりから、今野の決勝ゴール。
この時、スタンドからは“打てよ! 打て!”と叫ぶ声が至るところから聞こえていたのを思い出します。
前田治の解説よろしく「ですからぁ、もうどんどんシュートを打っていくべきなんですよね」、ということですよ。