*** june typhoon tokyo ***

FC東京×清水

■ リーグ3連敗

 鹿島、仙台に続いてリーグ3連敗。清水は退場者を2人出して9人となっていたが、それでもカウンターで敗れた。シュート数は東京が12本に対して、清水が5本。人数が少なくなってきてからは、さらに守備を固めた清水の前にゴールを奪うことすら出来なかった。シュート数は上回ったといえども、枠に飛ばない危険度がないものばかり。シュートの意識を……というのは、これまでにも求めてきたが、闇雲に打って数だけ稼げばいいというものではない。意味がある、少しでも内容の濃い流れでのシュートをどれだけ打てるかなのだから。

 この試合では梶山と長谷川が復帰。羽生をベンチに置いた。だが、これが結果的には自らのスタイルをさらに遠ざけさせることになってしまったようだ。
 イエローカードが清水の選手に多く飛び交い(8枚、東京は高橋の1枚のみ)、外国人選手2人が退場するアクシデント。だが、途中出場の高木が値千金のゴールを決め、9人の清水が11人のFC東京を破った。
 失点シーンは、左サイドで高く上がる太田が攻め手をなくして後方へパスしたところを、高原ががカットしてドリブルで一気にカウンターをしかける。中央を走り込んできた高木に高原が絶妙のグラウンダーのパスを流し込むと、高木は斜め前へトラップしてコースを見つけるやいなや、右足を一閃。権田が反応出来ないシュートを右上隅へ決めて先制。東京はボールを支配するものの、効果的な攻撃を見出せず、タイムアップ。後味の悪い敗戦となってしまった。
 
 敗因はさまざまな角度から考えられるが、選手起用がハマらなかったとか、誰がやればよかったなどということは、言うに値しない。何故ならば、誰が出ても求めているサッカーをやり通すことがチームの約束であるのだから。
 3連敗、またホームで9人相手に完封負けと、屈辱的な試合となってしまったが、そういう結果がもたらされたことについての原因については、意外と明快なのだと思う。

 一つは、ミスからの自滅による失点だということ。パターンは決まっている。両サイドバックないしはボランチが高い位置まで攻め込むも判断の遅さなどから攻め手の選択肢を失い、後方から再度立て直そうとバックパスや横パスをする。それがミスパスや相手にカットされて、素早いカウンターを受ける。対応出来ずに失点。というものだ。 

 もう一つは、攻撃パターンのマンネリとその精度の低さ。パスを繋ぐスタイルを貫くことは間違いではないし、貫いていい。だが、それがゴールを奪う手段でなく目的となっている。無意識なのか、型にはめられて雁字搦めになっているのかは解からない。ただ、動きのない、足元ばかりの緩いパスを中盤からエリア前まで繋げたところで、相手が崩れる訳もない。カウンターを奪っても、結局バイタルエリアくらいまでは持ち込むものの、結局スロウ・ダウン。チャレンジすることもなく、安易に(これを選手は安全にという意識からするのかもしれないが)後方へと戻そうとしたところを相手に突かれて慌てる。以前、羽生が見せていたフリーランニングなどでスペースを生もうとする動きもない。相手にとって研究した通りの攻撃をして、打開出来るはずがないのだ。しかも、その攻撃はパスやタイミングなどにおいて、精度が低いというのであればなおさらだ。

 以前は、攻撃のヴァリエーションを増やすことが、結果としてパスで相手陣内へ切れ込みシュートを放つ(ゴールを奪える)ことに繋がると説いた。だが、あくまでもパスで打開するというならば、それでもいい。ただし、その場合には相手のプレッシャーに負けない(一番いいのは、プレッシャーを受ける前にボールを動かして、相手も動かすこと)、翻弄するくらいのパスのスピードと精度をしっかりと実践出来なければ話にならない。パス交換というのは、野球で言えば、いわばキャッチボール。その競技の生命線たるところだ。その基本が出来ないのならば、自滅するのも妥当といえる。

 そこで、今大切なことはなにか。それは、初心に戻ることではないか。J1の舞台へ復帰し、ACLと並行しながらも、鹿島戦あたりまでは予想以上に順調にいっているように見えていた。だが、その綻びは一気に噴出した訳ではない。勝利の陰に隠れ、一試合ごとに意識しなくなっていった修正点を怠っていたことが、敗戦を機に明確になったというだけのことだ。

 幸い、東京のJ1リーグもまだ序盤。ここで結果ばかりにとらわれて本質を失うのは愚の骨頂。もう一度、自分たちが今季築き上げていくべきものは何であるのかを再確認する時なのではないか。チャレンジにはリスクも当然伴う。それゆえに結果がついてこないこともあるが、何事もパーフェクトはないものとサポーターも理解しているはずだ。

 相手への早いプレッシャー、相手を翻弄する豊富な運動量、ゴールへ畳み掛けていくチャレンジ精神……、技術面ではなく意識で回復出来ることはいくらでもある。まずは、そこを全員が完遂していくことからはじめることだ。
 勢いに乗ることはいいが、調子に乗ってはいけない。そういう意味でも、次のACL・ブリズベン戦は結果ももちろんだが、それ以上に内容が問われる試合となろう。幸い、ACLはこれまで結果としては順調なまま来ている。リーグとは相手の攻め方なども異なるが、リーグへ繋がるきっかけをそこで得てきてもらいたい。

 リーグはこの先アウェイ2連戦となるが、相手は新潟と札幌となる。現在17位と18位というチームが相手だ。札幌はまだ1勝も挙げていない。油断は禁物だが、この2チームに対して内容や結果を残せないとなると、今シーズンはかなり厳しい。夏以降は、ACLなどの疲労も加わり、パフォーマンスの低下も充分に考えられる。現時点でも怪我人も少なくはない。正念場だからこそ、初心に、基本に立ち戻って、意思疎通を図ったサッカーを実践していってほしい。


◇◇◇
 

<J1 第8節>
2012/04/28 味の素スタジアム

FC東京 0(0-0、0-1)1 清水

【得点】
(清):高木(77分)
【退場】
(清):フランサ(56分)、アレックス(73分)

観衆:22,405人
天候:晴、無風
気温:24.6度
 

≪MEMBER≫

GK 20 権田修一
DF 02 徳永悠平
DF 03 森重真人
DF 30 チャン・ヒョンス → FW 11 渡邉千真(88分)
DF 06 太田宏介
MF 04 高橋秀人 → FW 13 平山相太(82分)
MF 10 梶山陽平
MF 18 石川直宏
MF 08 長谷川アーリアジャスール
MF 39 谷澤達也 → MF 17 河野広貴(77分)
FW 49 ルーカス

GK 01 塩田仁史
DF 33 椋原健太
MF 07 米本拓司
MF 22 羽生直剛


監督 ランコ・ポポヴィッチ(代行:長島裕明コーチ)


◇◇◇

 
 
 

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